めざせ賞品ゲット！｜リアクション

めざせ賞品ゲット！

☆寝子島絵画コンクール

　寝子中１年の佐藤瀬莉は、絵を描くのが得意だった。
　瀬莉は将来、時計職人になるつもりで、時計の内部構造を把握するために分解した時計をスケッチしていた。
　それがきっかけで絵を描くようになったが、あくまでも趣味の一つだ。
　最初は時計の絵を描いたり、自分で考えた時計のデザインを描くだけだったけど、そこから想像力を巡らせて、時計の怪獣とか時計でできた水晶のお城とか、そういう絵を描くようになった。というか時計関連のものばかりだが。
　そうして、字は悪筆なくせに、なぜか絵だけは上手になっていった。
　そこのところだけは解せないな、と瀬莉は思う。
　画材は、色鉛筆やボールペン、サインペンと言った身の回りのもので描いたり、絵の具で描いたりと色々と好き勝手に描いていた。
　誰かに見せるつもりもないので、描いた絵は適当にしまい込んだりしていたのだが。
　
　その日学校で暇つぶしに時計の絵を描いていたら。
「すごい、瀬莉ちゃん上手！　中学生離れしてない？」
　クラスメイトのあげた声に、美術の美白鳥麗子先生までやってきて、たいそう褒められた。
「まあ、素晴らしいわ瀬莉さん！　寝子島絵画コンクールに出展しましょうよ！」
「……はあ」
　金髪巻き毛のお嬢様な麗子先生がオーバーアクション気味に感動を表す。
　ちょっと大げさだなと思いながら見ていたが、反対する理由もなかった。

　それで今回、コピックで出展用の絵を描きあげた。
「タイトルは、『時計の遺跡の魔女』です
　時の魔法をつかさどる時計の遺跡で、魔女がその魔法の復活を夢見るという幻想的な絵だ。
　もちろん瀬莉の大好きな時計を背景として思い切り描き込んでいるが、審査員の心証も考えて魔女の表情に力を入れている。
「トレビアン！　これはきっと入賞できるわよ」
　麗子先生は嬉しそうに微笑んだ。
　そう言われると、賞を取れたらいいなあと思えてくる。
　

　けれどその後の連絡はなかなか来ず、催促するわけにもいかなくて忘れたころ。
　突然麗子先生が踊るように教室にやってきた。
「瀬莉さん！　入賞よ！」
「えっ？」
「寝子島絵画コンクールで入賞したのよ、おめでとう！」　
　教室にクラスメイトの歓声と拍手が沸き起こるのを不思議な思いで聞きながら、じわじわと嬉しさがこみあげてきた。
　それは瀬莉が、一部の時計好きの同士以外に初めて才能を認められた瞬間であったかもしれない。
　

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