ピョンっ！と跳ねて、新春☆初夢フェア２０２３！　～富士編～｜リアクション

ピョンっ！と跳ねて、新春☆初夢フェア２０２３！　～富士編～

【オカシな天使さま】

　チョコレート。アイスクリーム。たい焼きおまんじゅう、アップルパイ、ケーキにパフェ。ドーナッツ！
　地上にはそんな美味しいお菓子がたーくさんあふれていて、地上人ときたらいつもぱくぱく、味わうことができるのだとか。
「うらやましい～なの～！」
　地上に憧れる天使、橘明里。お空の上の天界は争いごともなくて、怒られることもなくて、それはもうの～んびりと暮らしておりますけれど、いささか不満がありました。
　天界には、お菓子がないのです。いくら天使はお腹が減らないといったって、生真面目な天使の料理番が作るのは味気なくお腹にもたまらない霞料理ばかりで、甘いチョコレートも、冷たくってさわやかなアイスクリームも、あんこがいっぱいのおまんじゅうだって、ドーナツだってここにはないのです。おお、ドーナッツ！
「食べたい、食べたい、食べたいの～」
　じたばたじたばた。憧れは日に日に増して、明里は地上の美味甘味を夢見てもんもんと悶える日々を送るのでした。
　しかし、とある日に。
「も～、しんぼうたまらないの！　あかりは地上におりて、おいしいお菓子をおなかい～っぱい食べるのなのー！」
　羽をふりふりぱたぱた、明里はタイクツな天界を飛び出します。
　ふわり、ばびゅんと一直線。目指すは美味しい地上のお菓子！
「……あれれ？」
　ところが。
　すぐにも人間の街が見えてきて、美味しくって香ばしいかおりのひとつやふたつは漂ってくるかと思いきや、なんだか様子がヘンです。
　街なんてどこにも見えないし、というか、大地がありません。見渡す限りの海に、ぽつりぽつり、ちっちゃな島が浮いているだけです。
　おやおやおや？　美味しいお菓子はいずこ？
「あっ、人間がいるのなの！　お菓子のあるとこ、聞いてみるのなのー！」
　翼ぱたぱた、近づいてみますと、ぼろきれを着たヒゲモジャの人間が明里を見て、びっくりぎょうてん。飛び跳ねました。
「なんとこりゃ、天使さまだべ！　天使さまがご降臨されただよ！」
「ねえねえ、お菓子はどこなの？　あかり、おいしくってあまーい、お菓子が食べたいのよー！」
「へっ？　Ｏ・ＫＡ・ＳＨＩ……そりゃあ伝説の食い物と言われとる、ＯＫＡＳＨＩのことだべか？　何千年も間に、滅びたっちゅう……」
「ええーーーっ！？」
　ヒゲモジャさんに話を聞いてみましたら……なんということでしょう！
　天使と地上の人間では、過ごす時の流れが違っておりまして。明里が踏ん切りつかず少しばかりモンモンしているうち、地上世界では途方もない時間が流れて、人の文明は儚く滅び去っていたのでした。
　天変地異によって地形も変わり、もはや陸地すら失った地上へ降りた天使は、がっくりと肩を落とします。
「そ、そんな～。お菓子、もう食べられないのなの？　なのなの？」
「んだ」
「そんなの……そんなの……いやなのよーーー！！」
　ぺかーーーっ！　その時、明里の秘めた天使のパワーが、びかびかぎゅぎゅんっと解放されました。

　まず呼び寄せたのは、シモベたち。やってきた白いハトは媒介となり、明里のパワーを地上の隅々まで届けます。
「お菓子がないなら、作ればいいのなの！」
　翼をふるふる、パワー充填。両手を掲げて一気に解放、ファーーーッ☆
「おおっ！？　だ、大地が……千年前に砕けて失われた大地が、元に戻ってゆくだァーッ！？」

「キセキを起こすなの☆」
　ずごごごごごごごっ、海の底からしぶきを上げて起ち上がる巨岩たち。ハトが飛べば奇跡が起こります……巨岩はずががっと集まって、あっという間に大陸となってゆくではありませんか！
「地面はできたなの。次は、お店をつくるのよ！」
「ええっ。まずは街をつくるとか、人を増やすとかだとオラ思うだで……」
　ヒゲモジャさんの的確な助言も取り入れつつ、天使パワーがフォーッ。ハトさんぱたたたた。できたてホヤホヤの大地の上には街が築かれて、ぽこん！　ぽこん、と現れた人間たちが往来を埋めてゆきます。
「な、なんかこええ光景だども……こりゃあもしや、天地創造っちゅうやつだべか！？」
「え？　あ、うん、そーなのよー。そーぞーそーぞー」
　無味乾燥とした大地には緑が生い茂り、動物たちが生まれ、生態系が生まれます。人間たちは瞬く間に進化し、文明が生まれ、発展し、すごいスピードで近代化してゆきました。家々には活気があふれ、街には民家のみならず、お店などもまた建ち並びます。
　そう……ＯＫＡＳＨＩ屋さんも！
「お菓子ができたなの♪」
「ゴリ押しのスケールがでかすぎるだ……」
　さっそく、ドーナツ屋さんへ入店！
「ああっ、天使さま！　あなたのおかげで、世界は再び復活することができました。あなたの力で生まれたドーナツです、ぜひ味わってください！」
　理解の早すぎる店員さんに勧められ、作りたてのアツアツほかほかドーナッツを、明里は嬉しそうにひと口、ぱくりっ。
「……んんんんん～～～！！　最高なのよ～～～！！」
「んだ！」
　天にも昇る、このお味！

　こうして地上は復興し、明里は天使から天地創造の女神へとジョブチェンジ。人間たちに崇められ、ちやほやされ、祭り上げられて、お供えされたた～くさんのＯＫＡＳＨＩを食べすぎて、ちょっぴり太ったということです。
「だいまんぞくなの☆」

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あとがき

担当マスター：墨谷幽
ファンレターはマスターページから！

　墨谷幽です。今年も『初夢フェア』を担当させていただきました。
　お楽しみいただけたでしょうか。

　イラストのみからリアクションを組み立てるという試みも、もう何度目になるでしょう。
　なかなかインスピレーションが下りてこない時もあれば、すんなりと書けてしまうこともありますけれど、今回はどのエピソードもするりと出てきてくれました。
　ビジュアルの力というのは偉大ですね！　どのイラストもとっても素敵で、眼福でございます。そりゃあ創作意欲も湧いてくるというものです。
　マスターとしてもイラストに負けない文章を書けるよう、精進したいところです。

　あ、ちなみに、今回は一部現実的なエピソードもありましたので、そちらは正夢ということにしていただくのもよいかと思います。
　非日常的な夢を見られた方は、よければお友だちや家族などに、面白おかしく語ってあげてくださいね。

　それでは、今回もご参加いただきまして、まことにありがとうございました。
　次の機会にもお目にかかれますことを、心よりお待ちしております。
　お疲れさまでした！
　今年もよろしくお願いいたします～！

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