６月の★ハッピーバースデイ｜リアクション

６月の★ハッピーバースデイ

●エピローグ●

【エルデスト２Ｆ：鹿黒暖簾の部屋】

　鹿黒暖簾は１人、２階の自室に戻っていた。
「なァ、聴いてくれよマリア。
　あいつらがくれたんだ、コレ」
　棚の上の写真立ての前に、階下から失敬して来たケーキをことりと供え、その長い黒髪の女性に向かって語りかける男。けれどその背に、寂しさは無い。
「お前の分まであいつらの事、大事にするさァ……ふふ」
　そっと左手の指輪に口付け、
「あァ、今日も良い日だ。本当に」
　

【桜花寮：霧谷朧と蜂須賀ルドの部屋】

「お、電話だ……もしもし、父さん？」
　携帯を手に取り、電話に出る霧谷朧。ここは今しがた帰宅した、彼の自室だ。ルームメイトの蜂須賀ルドは、はしゃいで遊び疲れたのだろう、すやすやとすでに寝入っている。
　だから今の霧谷の口調も、普通の親に接するような口ぶりに戻っている。
　電話は、彼の誕生日を祝う父と母からのものだった。
　今の両親はこうして離れていても誕生日には、必ず息子にメールや電話をくれるのである。
「……ん、ありがと、元気にやってるよ。えっ、声が楽しそう？」
　前髪を掻き上げた霧谷の視線がふと、窓の外で揺れる、てるてる坊主に留まる。
　月明かりを動力にするかのように、さっきからくるくると回っている、２つのてるてる坊主。

「うん、父さん母さんに聞いてほしいことがいっぱいあるんだ。
　学校のこと、友達のこと、それに今日のこと、……
　それで毎日楽しくてたまらないんだ……」

『６月の★ハッピーバースデイ』　おしまい

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