【演劇祭】舞い廻れ、ロミジュリたちよ！｜リアクション

【演劇祭】舞い廻れ、ロミジュリたちよ！

●第三幕　宇宙怪獣現る！

　休憩時間。裏方の手伝いのつもりで舞台裏に顔を出した佐藤英二は、その場にいた野々ののこに掴まった。
「野々さん、即興劇に出たいの？」
　うんうん、と目を輝かせてののこが頷く。
「ロミオとジュリエットなんだよ！　でもフジコ先生みたいに一人二役ってわけにいかないし」
「相方が必要なんだね。ええと、野々さんがジュリエット？」
「うん！」
「で、僕が、ロミオ？」
「うんっ！！」
「な、なるほど……」
　それは、ののこと恋人役ということか。
　ののこはあまり意識していないようだけれど、英二としてはちょっとためらう。
　だってやっぱり、気になる女の子と恋人役っていうのは恥ずかしいし。
　そもそも自分は裏方のほうが好みで、人前に立つキャラじゃない。
　けれど……。

（野々さん、劇に出たいみたいだし付合おうかな。３年生でこんな機会は最後かも……だし頑張ってみよう）

　どんな話がいいか、ののこに聞いてみたが、これといってアイデアはないようだ。
　そこで英二の好きな怪獣映画をモチーフにした世界観で行くことになった。
（後は勢いで乗り切ろう！）

◇

「ほんの少し未来の日本。東京は、宇宙怪獣の飛来によって危機に瀕しているようです、んふふ……」

　幕が上がる。カキワリには崩れたビル群とようやっと立っている都庁。
　メラメラと燃える炎の照明演出の中に、巨大な怪獣のシルエットが浮かび上がる。
　巨大な花のような頭部と、幾本も伸びる触手を持った、植物型宇宙怪獣だ。
　ピギャーーーッ！
　怪獣の鳴き声が響く中、手を取り合って逃げ惑うロミオ／英二とジュリエット／ののこが登場する。
　ステージ中央まで走ってくると、がく、と膝をつくジュリエット／ののこ。
「ロ、ロミオくん、もう走れないよぉ」
「ジュリエットさん、頑張って！」
「う、うん」
　ロミオ／英二に支えられ、ジュリエット／ののこは再び立ち上がるが、そこにマクベスが登場する。

「オーーーーッホホホホホホホ！！　崩れるビル、逃げ惑う人間たち！　爽快、爽快、爽快だわぁ！　宇宙怪獣バラバーラよ！　恋とか愛とかが蔓延る地球なんか、滅ぼしておしまいなさい！！」

　マクベスがフラッシュを焚く。
　すると宇宙怪獣はフラッシュに惹かれて動き出し――。
「うわあ、都庁が！」
「崩れるよ、ロミオくん！！」
　ガラガラガラガラ！！！
　轟音を立てて舞台が暗転する。
　ややあってスポットライトが点くと、真っ暗闇の中にしゃがみ込んで、ジュリエット／ののこを庇うように覆いかぶさったロミオ／英二が照らし出された。
「ジュリエットさん、大丈夫……？」
「うん。ロミオくんが庇ってくれたから……ロミオくんは？」
「大丈夫……くっ」
　痛そうに顔をしかめ、肩を抑えるロミオ／英二。
　ジュリエット／ののこが心配そうにロミオ／英二を見るが、ロミオの体の下で身動きできない。
「ロミオくん、怪我をしてるの？」
「大丈夫、大したことないよ。それより……僕たち崩れた瓦礫に閉じ込められちゃったみたいだね」
　パントマイムで上部や周りを押すような仕草をするが、見えない瓦礫はびくともしない。
「私たち、ここで死んじゃうのかな……」
「ゴアラがこの街に近づいているらしい。きっと、あの宇宙怪獣と遭遇したらやっつけてくれるよ。だから、頑張って２人で生き残ろう」
「うん……！」
　気丈に頷くジュリエット／ののこだったが、徐々に息が荒くなる。
「はあっ、はあっ……なんだか、呼吸が苦しく……」
「いけない！　酸素が薄くなってきたんだ……うう、」
　せっかくののこと恋人役なのだ、ハッピーエンドにしたいのは山々だが、フジコ先生からは最後は悲恋ときつく言われている。
　ギャオーーーーーーッ！　と遠くで、宇宙怪獣とは違う怪獣の声。
「ああ、ゴアラだ。ゴアラが来たよ……頑張って、ジュリエットさん」

「うん、頑張る……大好きだよ、ロミオくん」

「だ、だめだ。目を開けて！　僕も好きだよ、ジュリエットさん！」
　ロミオ／英二がジュリエット／ののこを抱きしめる。
　ピギャーーーッ！
　ギャオーーーーーーッ！
　怪獣たちの鳴き声がして、その直後、ガラガラガラと崩壊音――。
「ジュリエットさーーーん！」
　舞台は暗転した。

　妖精女王ティターニア／秘子が登場する。
「ああ、なんて憐れ、ロミオとジュリエット。怪獣たちの戦いの犠牲になってしまうとは。今度こそは幸せになれるよう、その魂、幾たびでも送り出しましょう……」
　スポットライトが消えて、舞台は闇に包まれる。

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【演劇祭】舞い廻れ、ロミジュリたちよ！

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