【演劇祭】舞い廻れ、ロミジュリたちよ！｜リアクション

【演劇祭】舞い廻れ、ロミジュリたちよ！

●第十幕（後半）　

　いい雰囲気になる二人。
　しかし観客たちは油断しなかった。
　この即興劇、ロミオとジュリエットが、そう簡単に幸せになるはずがないのである！

「フジコッ！　ハッリ・ケーーーーン！！！！！」

　マクベス／フジコ先生の声がいいムードをぶち壊して割って入り、薔薇の香りの演出とともに、光の演出による赤い花びらの嵐が舞台上に吹き荒れる！

「ロミオとジュリエットの恋は、引き裂いてッ、引き裂いてッ、引き裂き続けるのよッ！」

　マクベスが高々と自らの目的を告げる。
　そこまではいつものマクベスだった。
　しかし此度は、――。

「あぁなぁたぁ～～～？？」

　地の底から響くような声。
　ボロボロのドレスに身を包み、ほつれた金髪を振り乱して現れたのは――
「わ、我が妻、マクベス夫人！？」
　マクベス夫人役はまたまた桜井ラッセルである。
　『助け船がいりそうならモブの代役に出る覚悟はしてる』――そう言ったものの、まさかマクベス夫人役をやる羽目になるとは思わなかった。
「マクベスには奥さんがいたはず」
　と言ったのは彰尋だった。
　それを聞いたフジコ先生は「それよッ！」と早速、マクベス夫人役をラッセルに指名した。実際ラッセルは、三つ編みを解くと緩やかなウェーブを描く金髪で、見た目だけで言えばマクベス夫人役にぴったりと言えばぴったりであった。
　ええーっそんなあ、と思ったが、やってみたら案外楽しい。

「あなたぁ～～～？　私を放っておいて、他人の恋路に口出ししているなんて、ご立派ですこと！」

　マクベス夫人／ラッセルが裏声でフジコ先生相手に凄む。
　こんなことを出来る機会はそうそうないだろう！
「お、落ち着いて、夫人……」
「ご覧あそばせ、あなたに引き裂かれたロミオとジュリエットたちですよ」
　先ほどまでワルツを踊っていたロミジュリたちが、いっせいにマクベスとマクベス夫人を取り囲む。

　紅の国のロミオ王子／万条幸次と蒼の国のジュリエット姫／愛猫萌々子。
　私立マクベス学園のロミオ先生／水谷真優理と女学生ジュリエット／青山絢。
　ゴアラの世界のロミオ／佐藤英二とジュリエット／野々ののこ。
　ちょっぴり未来？のロミオ／ウォルター・B先生と宇宙人ジュリエット／倉前七瀬。
　アラビアン世界の将軍ロミオ／サキリ・デイジーカッターと、ジュリエット姫／ダマスカスブレードちゃん。
　海賊黄金時代の女海賊ロミオ／さゆると女海賊ジュリエット／じゅん。
　禁酒法時代のマフィアのロミオ／ヒュー・ヒューバートと敵対マフィアのジュリエット／城山水樹。
　アイドルデュオのロミオ／花咲夢乃とジュリエット／喜矢武あいお。
　そして、中世の舞踏会で出会ったロミオ／鴻上彰尋とジュリエット／七夜あおい。
　唯一、未来世界で人工知能Ｒ２に人格を託したロミオ博士／八神修の姿はないが、彼には別の出番があり、彼が用意したストーリーの後半がこのあと控えているので心配しないでほしい。

　全員集合は「各時代のロミジュリ達の想いが集まりマクベスの狂気を浄化するみたいな展開が定番ではないか」というサキリの案からだった。
　ロミジュリたちに囲まれたじろぐマクベス。
　そこに、剣を携えマクダフ／月原想花が登場する。
「年貢の納め時だよ、マクベス」
「マクダフ！　貴様！」
　いきり立つマクベスに、マクベス夫人がきつく抱きつく。
「今です、マクダフ！」
「な、なにを……、」
　マクダフの剣が、マクベス夫人ごとマクベスを貫く。
「ぐふぅっ」
「ああ、あなた。本家では狂ってあなたの手を取ることもなく死んでしまった私ですけれど、本当はこうしてあなたの腕の中で一緒に死にたかったのです……」
「夫人……」
「今、私は幸せです……」
　マクベスとマクベス夫人は抱き合ったまま倒れて息絶える。
　剣を抜き、マクダフはロミジュリたちに告げる！

「悲劇を繰り返してきた恋人たちよ！　心置きなく愛し合うがいい！　マクベスここに死す！」

　抱き合うロミオとジュリエットたち。
　最後の幕の主役を務め、もっとも本家ロミジュリに近い世界観だったロミオ／彰尋とジュリエット／あおいが、舞台の中央に歩み出てくる。
「……ロミオ！」
「……ジュリエット！」
　見つめ合い、互いの名を呼んで、固く抱き合う。
　これが、この即興劇を演じた者たちが作り出した、大団円のかたちであった――。

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【演劇祭】舞い廻れ、ロミジュリたちよ！

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