【演劇祭】舞い廻れ、ロミジュリたちよ！｜リアクション

【演劇祭】舞い廻れ、ロミジュリたちよ！

●終幕　特異点マクベス

　割れんばかりの拍手が会場内を包み込んでいる。
　ロミジュリたちが一礼して下がっても、会場は明るくなっていないし、まだ幕も下りていない。
　薄暗くなる舞台。
　宇宙空間が映し出される。
　死んだマクベスを取り囲み、魔女／巫部紫苑、ティターニア／胡乱路秘子、人工知能Ｒ２／八神修が立っている。不思議な雰囲気を醸し出す三人は、本家マクベスの三人の魔女を彷彿とさせた。
「運命を覆すため、俺のオリジナルであったロミオは、俺に世界中の人工知能と繋がり解決をと指令を出した」
　語りだしたのはＲ２／修だ。
「あれから千年以上の時が過ぎた。俺は因果律を理解し、多元宇宙を理解した。そしてマクベス、俺の計算によると、この因果の特異点はあなたなんだ」
　Ｒ２／修が手を差し伸べると、マクベスはゆっくりと瞬きし、彼の腕を借りて立ち上がる。
「マクベス、あなたは本来、優れた執政者であったはずだ」
「……そうね、どこかで歯車が狂いさえしなければ、私は優れた執政者となったでしょう」
「俺はあなたの不当な評判を排そう。友愛で助けよう。凝り固まったあなたの心を、愛で解そう」
「どうやって」
「宇宙になるんだ。マクベスという名の一つの宇宙に。あなたという宇宙の中で、人々は愛し合い、時にいさかい、子を育むだろう」
　舞台奥から強いハレーションが起こる。
　光で、四人の姿がくらむ。
「彼が悲劇でなくなった時、因果は解け、全てのロミオ達は未来で結ばれる。そう信じて……」
　Ｒ２／修のセリフを最後に、人物たちは舞台から去り、フジコ／マクベスの声だけが残った。
「人生は歩く影法師。哀れな役者よ」
　本家マクベスの最後、有名なTomorrow Speechと呼ばれる重要なセリフだ。
　フジコ先生はそれをすこしオリジナルに変えているようだ。

明日、また明日、そしてまた明日と、
私たちの人生は最後の瞬間を目指して、
とぼとぼと毎日の歩みを刻んでゆくの。

消えろ、消えろ、束の間の灯火！
人生は歩く影法師。哀れな役者よ。それでも――

それでも、私はこの舞台をこう閉じたい。

『宇宙は愛に満ちている』

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