ピョンっ！と跳ねて、新春☆初夢フェア２０２３！　～鷹編～｜リアクション

ピョンっ！と跳ねて、新春☆初夢フェア２０２３！　～鷹編～

　プロポーションを保つためならば、少々の努力は当たり前。それは女性としての美意識もあるが、真境名アリサの場合は仕事柄手を抜けないという理由もある。
　水着ガールズバー「ジュエル」で副店長を務める彼女は、貪欲なまでに最高の自分であることを求めるが、ただ辛く苦しいことは好まない。どこかで無駄だと思ってしまえば身の入り方も疎かになるし、心をすり減らしてもプラスになることがないと思っているからだ。
　楽天家に思えてその実は現実的。美を追究するのに余計な時間は使っていられないと、今日の目的地の扉を開く。
「今日は、よろしくお願いします」
　にこりとよそ行き用の顔で微笑んで、部屋の中を観察する。適度に手入れが行き届いてはいるが、特別華やかな様子もない。若い女性をターゲットにして、雰囲気を楽しんで貰うことを主目的にしたタイプのジムではなさそうだ。
「体験の真境名さんですね。今日はポールに慣れて、さらに興味を持って頂けたら嬉しいです」
　そういって部屋の設備を説明するコーチは、アリサが申し込み時に記入していたシートを確認する。ダンスの経験もあるし、体型維持のために興味があるということだから、想定していたよりも出来るかもしれないと思ったのだろう。
「失礼しました。普段から鍛えておいででしたら、すぐに慣れて頂けそうですね」
「だと嬉しいですね」
　コーチも変に上から目線でもなければ、妙に馴れ馴れしくも無い。今回は当たりの予感がする。
　移動時間が無駄にならない範囲ではあるが、美容に良さそうなものがあれば情報をいち早くキャッチし試してきた。エステもジムも、続けられるほどに飽きがこず効果のあるものを見定めるのは、馬のコンディションを観察し馬券を当てるのと……少し違うかも知れないが、まあ似たような物だろう。
　コンディショニングロープを振り回し、サーフエクササイズやバンジーフィットネスでバランス感覚を発揮してきたのだ、自身を支える腕力と体幹には自信がある。そして何より、これは自身と向き合うトレーニングではなく、自身を魅せる競技。
（店に導入できるかは別だけど、折角磨き上げた身体を店だけで披露するのも勿体ないよね）
　下心満載で来た男どもを、華麗な技で圧倒するのはどんな気分だろう。客あしらいは得意な物だが、口で丸め込むのとは違った達成感があるのではないか。
　同じ女性からみて、優美なしなやかさと力強さが溢れるパフォーマンスは、羨望の的になるのではないか。

（……そのためにも、今日は盗めるだけぬすんでやる）
　体験では基本の動きと簡単な技しか学べない、と思っているのは受け身のままだからだ。
　コーチの立ち居振る舞い、手本として見せてくれる動き全てに学べることがある。それが、まだ知らぬ世界ならなおさらだ。
　全身を使うスポーツだから、引き締めることができる。柔らかな動きを求められるから、ムキムキに鍛え上げるのとは違って女性らしいラインを保つことができる。自分の魅せ方を指先まで考えることができるし、その他諸々。一石何鳥ぐらいあるのだろうか。
　ポールに触れ、アリサはにんまりと笑う。
　自分への投資が、店の売り上げとなって懐に帰ってくる日も近そうだ。

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