ピョンっ！と跳ねて、新春☆初夢フェア２０２３！　～鷹編～｜リアクション

ピョンっ！と跳ねて、新春☆初夢フェア２０２３！　～鷹編～

　髪にも似た、少し落ち着いた天鵞絨のパレオが翻る。
　覗く素足は日焼けなど知らぬかのような雪肌で、思わず喉を鳴らす不届き者もいただろう。
「…………？」
　そうして視線を感じた三宅葉月が振り返ると、下心を持っていた者どもは呼吸を奪われる。人形のように整いすぎた顔立ちに、翡翠をはめ込んだような瞳。何もかもが美しすぎて、人だろうかと疑うほどだ。
　もし、美しさを利用して人肉を食らう人魚だと言われたとて頷いてしまうような、妖しい魅力。牙を向くとなど思えないアンニュイな雰囲気にふらふらと吸い込まれそうになっては、全てを見透かしそうな翠を前に何も出来ず。立ち尽くす男を一瞥して、葉月は浜辺を歩いて行く。
（日本と違うってこと、意識しないと）
　国が変われば勝手も変わる。治安も違うし、ハンドサインも言葉の言い回しも異なって、現地で学ぶというのはこういうことかと、知らない世界が広がっていった。
　学校で学ぶことばかりでは足りないなと思えることはいくつもあるから、これもそのひとつだと思うことにして。今は不躾な視線は気に留めないで置こう。
（それにしても……）
　写真やテレビ映像として見たことがあるから、知識としては知っていたし、日本国内でさえそうだった。けれど実際に鮮やかな海を目の前にして、その色味が創作意欲をかき立てる。
　この透明感のある海をモチーフにするならば、何が合うだろうか。
　普段好むゴシックな装いに合わせるなら、使う色は濃いめが主流となり淡い色は使わないことが多い。ホワイトロリータならまだしも……いや、黒だからこそ映える透かし模様、例えば蝶の羽根のようなものに浅瀬の淡い色から深海までの濃い色をグラデーションさせたならどうだろう。
　それとももっと簡単に、ラリマーで揺れる海面を表現するほうがいいだろうか。
　実際に見て、触れて。どれだけ印刷や映像の技術が上がったとしても、五感全てで感じる景色に勝る情報量はない。
　同じ色味でも、触れた水温で印象が変わるように。その時の風で潮の香りの強さが変わるように。聞こえるさざ波は優しいのかどうかも、天候や気分によって受け取り方は違うだろう。
（どこまでも同じ海が続くけど、ひとつとして同じ顔は見せない）

　そんな作品を作れているだろうか。
　絵でも、服飾でも、己と巡り会った材料が唯一無二の世界を作り上げているだろうか。
　ぱしゃりと波を蹴り、今日の海を心に刻む。この空気を作品に活かせるように、深く息を吸った。
（……寝子島と、違う香り）
　振り返ればどこにでも猫が居て、古めかしい街並みもお洒落な高級住宅街もぎゅっと詰まった、小さな島。
　寂しいと思うほど残してきた物があるわけでもなく、懐かしいと思うほど似ている物もここにはないけれど。
（勉強が終わるまで、二度と帰らないわけでもないし）
　祖父の墓参りには帰るつもりだし、なんだかんだと家の煩わしい事で呼ばれることもあるだろう。そうやって帰国したときに、あの島の景色は違って見えるのだろうか。成長しても、変わらずに見えるだろうか。
　この地で学び戻るのか、また別の国へ行くのかはわからないけれど。
　こうして感銘をうけた物のように、誰かの心へ残る物を作れますようにと願って、葉月はさざ波に耳を澄ませた。

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あとがき

担当マスター：浅野悠希
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みなさまご参加ありがとうございます、浅野です。

初夢シナリオとのことで、夢ではありますが夢ではないものも……あるのでしょうか？
イラストのイメージに合っていても、予想外でも、それは福袋のように開けてみてのお楽しみと言うことで。
どうか皆様に数多くの福が訪れますように！

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