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ピョンっ！と跳ねて、新春☆初夢フェア２０２３！ ～鷹編～
卒業式が卒業生を送り出すための式典ならば、これは卒業生が今までお世話になった教職員を労う会。
星ヶ丘のとあるパーティ会場では、寝子島高等学校の謝恩会が開かれていた。
参加も自由ならば服装も自由で、生徒は惜しむように制服姿でいる者もあれば、大人びた姿を見せるべくスーツやドレス、振り袖とフォーマルな格好もいる。先生はといえば、いつもは地味なスーツを着てばかりだった人が、存外オフでは派手な趣味をしていたことが明らかになったりと、ロビーから既に多くの人が盛り上がっていた。
（私もあとで挨拶にいかなくちゃ）
青いドレスに身を包み、綾辻 綾花は揃えで用意したアクセサリーやバッグと忘れ物が無いことを再度確認する。
今日は卒業式を迎えたわけだけれど、きちんと卒業となるのは３月の末が過ぎてから。だから今は書類上は生徒なのに学び舎に行くことがない、ちょっともどかしい立場ではあるのだけれど。
（卒業は卒業だし、それに……）
節目には変わりない今日、背伸びしたい理由があった。学生として最後の大イベント、このパーティを共に過ごすため、あの人へ事前にパートナーを申し込んでおいたからだ。
少し照れくさそうにはにかんで、この姿を１番に見せたい彼を思い浮かべる。ここには同じように、パートナーと待ち合わせている人や、大きな花束を用意してパートナーを申し込む人までいて、人捜しは困難に思えた。
（……見つけられるかな）
広いロビーだ、同じように探し回っていてはすれ違ってしまうかも知れない。だけど大人しくじっと待っているのも……そう周囲に視線を巡らせる綾花に、声をかける男がいた。
確か同学年ではあったけれど、同じクラスになった記憶はなく、名前の覚えも怪しいくらいの面識だ。
「あの、綾辻さん！ もし……良ければオレのパートナーになってください！」
適切な距離は取りつつ、頬を赤く染め。たどたどしくミニブーケを差し出す姿に、周囲は囃し立てる。天然ではあっても鈍感でもない綾花は、先ほどまで目にしていた光景がなぜ目の前で起こっているのかと瞬いて、何らかの好意を向けられていることは察した。
「私……」
周囲から注目も浴びて、気恥ずかしさと申し訳なさが募る。これからパーティだというのに、どう断ったら角が立たず彼も気兼ねなく過ごせるか困り果てて言葉を濁した。
「ダメだよ」
ぴしゃりと言い切って綾花の腰を抱き寄せたのは、早川 珪だった。
シックな色合いのスーツには、綾花のドレスと同じ色のポケットチーフが飾られていて、隣に並ぶだけでそれ以上の言葉がなくてもパートナーであることを告げている。
ホッとしたように顔を合わせる綾花の様子に、今夜のパートナーとしてもそれ以外の想いを伝えることも叶わないと悟った相手は、２人へ一礼して去って行く。けれど、既に些か注目の的になりすぎていて、珪は居心地が悪いのか少し声を大きめにして何でも無いことのように言った。
「今夜は、約束をしていたからね」
よからぬ噂が立たぬように、まだ生徒である綾花が最後まで寝子高生で良かったと思って過ごせるように。珪は下世話な視線を投げかける相手には、冷ややかな笑みを向けて牽制する。
「そ、そうですよね……私が珪先生にパートナーをお願いしたから」
浮かれてはダメだと言い聞かせるように呟いた言葉が、綾花の胸に酷く突き刺さった。珪が仕方なく、手のかかる生徒だと受け入れてくれたのだとしたら……どんな顔をすればいいのかわからなくて、俯きかけてしまう。
「……ごめんね。あんまり綾辻さんが綺麗になってるから、見つけるのが遅くなっちゃった」
密やかに、でもしっかりと。珪はほんの少しだけ照れくさそうに笑いながらも、綾花を真っ直ぐ見ていた。
これは、信じていいのだろうか。
今日は子供っぽくないと、彼の隣に立って恥ずかしくないと思っていいのだろうか。
「ありがとうございます。珪先生も素敵ですよ」
「それも、聞けるのは今日までかな？」
「珪先生はずっと素敵ですよ？ きっとおじいちゃんになったって格好良いです！」
力説する綾花にくすくすと笑う珪は、微笑ましく綾花を見つめていた。
今まで散々ずるい言葉でかわし続けた自分が言う言葉ではないし、生徒が巣立つ寂しさも少なからずあるけれど。
「ねぇ綾辻さん、４月からは何が始まる？」
「えっと……大学の新学期、でしょうか」
「そうだね、君が新しい未来を歩み始める。そのとき……いや」
今、この時はまだ『教師』と『生徒』で、ただのエスコート相手だ。珪は少し言葉を飲み込んで、思いとどまる。
新しい季節、新しいはじまり。あともう少しで、この関係も終わってしまう。
「楽しみだね」
そうしたら２人には訪れる。その先を期待していたんだと――言える日が、必ず。
星ヶ丘のとあるパーティ会場では、寝子島高等学校の謝恩会が開かれていた。
参加も自由ならば服装も自由で、生徒は惜しむように制服姿でいる者もあれば、大人びた姿を見せるべくスーツやドレス、振り袖とフォーマルな格好もいる。先生はといえば、いつもは地味なスーツを着てばかりだった人が、存外オフでは派手な趣味をしていたことが明らかになったりと、ロビーから既に多くの人が盛り上がっていた。
（私もあとで挨拶にいかなくちゃ）
青いドレスに身を包み、綾辻 綾花は揃えで用意したアクセサリーやバッグと忘れ物が無いことを再度確認する。
今日は卒業式を迎えたわけだけれど、きちんと卒業となるのは３月の末が過ぎてから。だから今は書類上は生徒なのに学び舎に行くことがない、ちょっともどかしい立場ではあるのだけれど。
（卒業は卒業だし、それに……）
節目には変わりない今日、背伸びしたい理由があった。学生として最後の大イベント、このパーティを共に過ごすため、あの人へ事前にパートナーを申し込んでおいたからだ。
少し照れくさそうにはにかんで、この姿を１番に見せたい彼を思い浮かべる。ここには同じように、パートナーと待ち合わせている人や、大きな花束を用意してパートナーを申し込む人までいて、人捜しは困難に思えた。
（……見つけられるかな）
広いロビーだ、同じように探し回っていてはすれ違ってしまうかも知れない。だけど大人しくじっと待っているのも……そう周囲に視線を巡らせる綾花に、声をかける男がいた。
確か同学年ではあったけれど、同じクラスになった記憶はなく、名前の覚えも怪しいくらいの面識だ。
「あの、綾辻さん！ もし……良ければオレのパートナーになってください！」
適切な距離は取りつつ、頬を赤く染め。たどたどしくミニブーケを差し出す姿に、周囲は囃し立てる。天然ではあっても鈍感でもない綾花は、先ほどまで目にしていた光景がなぜ目の前で起こっているのかと瞬いて、何らかの好意を向けられていることは察した。
「私……」
周囲から注目も浴びて、気恥ずかしさと申し訳なさが募る。これからパーティだというのに、どう断ったら角が立たず彼も気兼ねなく過ごせるか困り果てて言葉を濁した。
「ダメだよ」
ぴしゃりと言い切って綾花の腰を抱き寄せたのは、早川 珪だった。
シックな色合いのスーツには、綾花のドレスと同じ色のポケットチーフが飾られていて、隣に並ぶだけでそれ以上の言葉がなくてもパートナーであることを告げている。
ホッとしたように顔を合わせる綾花の様子に、今夜のパートナーとしてもそれ以外の想いを伝えることも叶わないと悟った相手は、２人へ一礼して去って行く。けれど、既に些か注目の的になりすぎていて、珪は居心地が悪いのか少し声を大きめにして何でも無いことのように言った。
「今夜は、約束をしていたからね」
よからぬ噂が立たぬように、まだ生徒である綾花が最後まで寝子高生で良かったと思って過ごせるように。珪は下世話な視線を投げかける相手には、冷ややかな笑みを向けて牽制する。
「そ、そうですよね……私が珪先生にパートナーをお願いしたから」
浮かれてはダメだと言い聞かせるように呟いた言葉が、綾花の胸に酷く突き刺さった。珪が仕方なく、手のかかる生徒だと受け入れてくれたのだとしたら……どんな顔をすればいいのかわからなくて、俯きかけてしまう。
「……ごめんね。あんまり綾辻さんが綺麗になってるから、見つけるのが遅くなっちゃった」
密やかに、でもしっかりと。珪はほんの少しだけ照れくさそうに笑いながらも、綾花を真っ直ぐ見ていた。
これは、信じていいのだろうか。
今日は子供っぽくないと、彼の隣に立って恥ずかしくないと思っていいのだろうか。
「ありがとうございます。珪先生も素敵ですよ」
「それも、聞けるのは今日までかな？」
「珪先生はずっと素敵ですよ？ きっとおじいちゃんになったって格好良いです！」
力説する綾花にくすくすと笑う珪は、微笑ましく綾花を見つめていた。
今まで散々ずるい言葉でかわし続けた自分が言う言葉ではないし、生徒が巣立つ寂しさも少なからずあるけれど。
「ねぇ綾辻さん、４月からは何が始まる？」
「えっと……大学の新学期、でしょうか」
「そうだね、君が新しい未来を歩み始める。そのとき……いや」
今、この時はまだ『教師』と『生徒』で、ただのエスコート相手だ。珪は少し言葉を飲み込んで、思いとどまる。
新しい季節、新しいはじまり。あともう少しで、この関係も終わってしまう。
「楽しみだね」
そうしたら２人には訪れる。その先を期待していたんだと――言える日が、必ず。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年01月02日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年01月09日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年01月09日 11時00分
