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- 00月00日生 00歳
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ピョンっ！と跳ねて、新春☆初夢フェア２０２３！ ～鷹編～
アウトレットモールのエスカレーターが、少し薄暗いフロアへと続いている。
落ち着いた照明に、音を吸収する床材。本棚に囲まれたそこは、ブックカフェだ。
「ねぇ、さっきの約束覚えてる？」
わくわくしている七夜 あおいの提案で来たこの店は、多くのジャンルの新書が揃っている。買う前にゆっくりと読めるタイプの店なのはいいのだが……のんびりした空間も売りなのか、勉強で使うには些か低すぎるテーブルと柔らかなソファ席が多いことが、受験生の２人には難点であった。
けれど鴻上 彰尋は、あおいの提案に異を唱えることなく、同じようにわくわくしている。
「どの座席が空いているかで、今日の予定が変わるんだよね」
まずはエスカレーターを登り切った先にあるスタボで飲み物を買って、そこを中心に広がる本棚の近くにある座席を時計回りに見て回る。そうして最初に見つけた席が、勉強にピッタリな高さのテーブル席か参考書の近くなら勉強モード。もしまったりできる座席や読み物の近くであれば読書の秋。判断に迷う時は、半々で楽しめるように奥のコワーキングスペースを予約してからのんびりする……なんともしっかりとした計画のようでいて、どんな席が見つかるかはお楽しみだ。
トレイを持って半周した頃、ちょうどテーブルを片付け終わった店員と出くわした。２人で横並びに座っても余裕があるソファ席が空いたようだ。
（のんびりした席なら、暗記系の物をゆっくり読むには向いているだろうし）
英語が苦手である彰尋は、書いて覚えることでケアレスミスを減らしたい思いもあったが、座席が書くことに向いていなければ別の勉強方法だってあるだろうと考えを巡らせる。けれど、その様子をあおいは見過ごさなかった。
「今日は読書の秋になったね！」
これはもう、決定事項です。そんな念押しの声が聞こえてきそうな笑みを見せるから、彰尋も降参とばかりに苦笑する。追い込みの時期ではあるけれど、彼女と過ごす穏やかな時間も……卒業後は難しくなるだろうことを思うと、大切にしたかった。
座席へ荷物を下ろすと、近くの本棚へ目を向ける。童話や料理に旅行誌と、一見バラバラに見えるコーナーではあったが、青い空と青い海の間に美しい島が浮かび、遺跡や特徴的な礼拝堂が表紙に描かれた旅行誌に、ケバブやドンドルマを作って旅行気分を勧める料理本、とくれば。
（もしかして）
物語のタイトルから即座に閃きはしないものの、あらすじを確認してみれば、どれも舞台が共通している。座席に置かれた猫のクッションは、きっと。
「誰かのリビングがテーマなのかな？」
けれどもあおいは共通点には気付かないようで、手近にあった小説に手を伸ばす。だから彰尋は、悪戯な笑みを浮かべて旅行誌を手に取った。
「あおいさんが今から読む物語……ここが舞台じゃない？」
東西の大陸を結ぶ重要な都市。交易が栄え、猫の国だなんて呼ばれる猫好きの多い国。
この場所は、トルコを中心とした周辺諸国の本が集められていた。
「わぁ、凄いっ！ もしかして、ここ全部？」
「みたいだね。調べ物も捗りそうだ」
「本に出てきた風景や料理が気になっちゃうことってあるもんね」
すぐ手の伸ばせるところに揃っていれば、さらにイメージを膨らませることができる。一度読んだ本が、二度も三度も楽しめそうで、あおいは手にした物語にどんな物が出てくるのかと楽しみにソファへと身体を沈めた。
ぱらり、ぺらり。静かに紙の捲る音が聞こえ始め、彰尋も邪魔をしないようにそっと隣へ腰掛ける。今、彼女が見ている景色はどこだろうか。同じ景色を、見られるだろうか。
……それとも、中継地である国を飛び越えて、彼女は遠くに行ってしまうのだろうか。
「彰尋くんは、公演とかであちこち……それこそ海外だって行くことあるのかな」
ちょっぴり寂しそうに呟くあおいが、一度本を置いて紅茶を口にする。ほうっと息を吐くと、それを微苦笑に変えてみせた。
「九州くらいで遠いなんて思ってちゃダメだよね」
どんな活動をしていくのか、手本となる人はいても後を追うわけでもない。これから取り巻く環境はいくらでも変わる中、確約したものなど何もないけれど。
「九州と関東なら行こうと思えば日帰りで行ける距離だし、そこで就職が決まったとしても……繋がってるよ」
隔てる物は何もなくて、道も電波も繋がっている。あとは心が通じ合えれば、不安にさせないのに。
それは改めて言うには早いかなと思いとどまり、彰尋は地図のページを開く。
西アジアからヨーロッパが遠くたって、結ぶ場所があったように。生まれ育った地が違っても、巡り会えた場所があったように。
互いに手を伸ばし合えば難なく手を繋げる距離でも、何もしなければ遠いけれど。
（……そうじゃないなら、今より遠くなんて、ない）
落ち着いた照明に、音を吸収する床材。本棚に囲まれたそこは、ブックカフェだ。
「ねぇ、さっきの約束覚えてる？」
わくわくしている七夜 あおいの提案で来たこの店は、多くのジャンルの新書が揃っている。買う前にゆっくりと読めるタイプの店なのはいいのだが……のんびりした空間も売りなのか、勉強で使うには些か低すぎるテーブルと柔らかなソファ席が多いことが、受験生の２人には難点であった。
けれど鴻上 彰尋は、あおいの提案に異を唱えることなく、同じようにわくわくしている。
「どの座席が空いているかで、今日の予定が変わるんだよね」
まずはエスカレーターを登り切った先にあるスタボで飲み物を買って、そこを中心に広がる本棚の近くにある座席を時計回りに見て回る。そうして最初に見つけた席が、勉強にピッタリな高さのテーブル席か参考書の近くなら勉強モード。もしまったりできる座席や読み物の近くであれば読書の秋。判断に迷う時は、半々で楽しめるように奥のコワーキングスペースを予約してからのんびりする……なんともしっかりとした計画のようでいて、どんな席が見つかるかはお楽しみだ。
トレイを持って半周した頃、ちょうどテーブルを片付け終わった店員と出くわした。２人で横並びに座っても余裕があるソファ席が空いたようだ。
（のんびりした席なら、暗記系の物をゆっくり読むには向いているだろうし）
英語が苦手である彰尋は、書いて覚えることでケアレスミスを減らしたい思いもあったが、座席が書くことに向いていなければ別の勉強方法だってあるだろうと考えを巡らせる。けれど、その様子をあおいは見過ごさなかった。
「今日は読書の秋になったね！」
これはもう、決定事項です。そんな念押しの声が聞こえてきそうな笑みを見せるから、彰尋も降参とばかりに苦笑する。追い込みの時期ではあるけれど、彼女と過ごす穏やかな時間も……卒業後は難しくなるだろうことを思うと、大切にしたかった。
座席へ荷物を下ろすと、近くの本棚へ目を向ける。童話や料理に旅行誌と、一見バラバラに見えるコーナーではあったが、青い空と青い海の間に美しい島が浮かび、遺跡や特徴的な礼拝堂が表紙に描かれた旅行誌に、ケバブやドンドルマを作って旅行気分を勧める料理本、とくれば。
（もしかして）
物語のタイトルから即座に閃きはしないものの、あらすじを確認してみれば、どれも舞台が共通している。座席に置かれた猫のクッションは、きっと。
「誰かのリビングがテーマなのかな？」
けれどもあおいは共通点には気付かないようで、手近にあった小説に手を伸ばす。だから彰尋は、悪戯な笑みを浮かべて旅行誌を手に取った。
「あおいさんが今から読む物語……ここが舞台じゃない？」
東西の大陸を結ぶ重要な都市。交易が栄え、猫の国だなんて呼ばれる猫好きの多い国。
この場所は、トルコを中心とした周辺諸国の本が集められていた。
「わぁ、凄いっ！ もしかして、ここ全部？」
「みたいだね。調べ物も捗りそうだ」
「本に出てきた風景や料理が気になっちゃうことってあるもんね」
すぐ手の伸ばせるところに揃っていれば、さらにイメージを膨らませることができる。一度読んだ本が、二度も三度も楽しめそうで、あおいは手にした物語にどんな物が出てくるのかと楽しみにソファへと身体を沈めた。
ぱらり、ぺらり。静かに紙の捲る音が聞こえ始め、彰尋も邪魔をしないようにそっと隣へ腰掛ける。今、彼女が見ている景色はどこだろうか。同じ景色を、見られるだろうか。
……それとも、中継地である国を飛び越えて、彼女は遠くに行ってしまうのだろうか。
「彰尋くんは、公演とかであちこち……それこそ海外だって行くことあるのかな」
ちょっぴり寂しそうに呟くあおいが、一度本を置いて紅茶を口にする。ほうっと息を吐くと、それを微苦笑に変えてみせた。
「九州くらいで遠いなんて思ってちゃダメだよね」
どんな活動をしていくのか、手本となる人はいても後を追うわけでもない。これから取り巻く環境はいくらでも変わる中、確約したものなど何もないけれど。
「九州と関東なら行こうと思えば日帰りで行ける距離だし、そこで就職が決まったとしても……繋がってるよ」
隔てる物は何もなくて、道も電波も繋がっている。あとは心が通じ合えれば、不安にさせないのに。
それは改めて言うには早いかなと思いとどまり、彰尋は地図のページを開く。
西アジアからヨーロッパが遠くたって、結ぶ場所があったように。生まれ育った地が違っても、巡り会えた場所があったように。
互いに手を伸ばし合えば難なく手を繋げる距離でも、何もしなければ遠いけれど。
（……そうじゃないなら、今より遠くなんて、ない）
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年01月02日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年01月09日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年01月09日 11時00分
