ハッピーバースデー！　１０月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　１０月☆

☆あやかしの誕生日

　霊界の銀朱駅近くにある古民家のとある一軒家。
　その日幽霊少女の餅々きなこが訪れたのは三毛谷道哉の家でした。
　猫又のあやかし道哉の家にはいつも友人のあやかしたちが集まっていて、本人が留守でもくつろいで話に花を咲かせています。
　この日も、飲んべえの鴉天狗と、無口な包丁のあやかし剛鉄が酒を飲んでいました。
「やあきなこちゃん。三毛谷ならいないよ。猫になってそのへんをほっつき歩いてると思うよ」
　ほろ酔いで上機嫌の鴉天狗に言われ、きなこはちょっと残念そうに返事しました。
「そうなんだ。ここのひとたちいつものんでるね。なにかのおいわいじゃないよね、たんじょうびとか」
「誕生日？　あやかしの誕生会か……そういや三毛谷がもうすぐ誕生日だったな、こないだ飲んだ時に言ってたぜ」
「そうなの？　それなら、さぷらいずおたんじょうかいしようよ！」
「そりゃいいや！　剛鉄、腕の見せ所だぜ。俺はいい酒を持ってくるよ」

　そして誕生日当日。　
　道哉はそんなことは知らずいつも通りに過ごしていました。
　いつも通りというのは、寝子島で三毛猫としてお魚をもらったり、知人のあやかしと飲んだり、新鮮な食材が入ったら剛鉄に捌いてもらって刺身など調理して家に呼んだ皆と食事したりということです。
　だからあやかしの皆が家に集まっていることは不思議に思わなかったのですが。
　その日はみんなの様子が少し違っていました。
　道哉が現れると話をやめてしまったり、台所を覗くと剛鉄が食材を後ろに隠したり。
「こそこそとどうしたんだ？」
　不思議に思った道哉、忍び足で耳をそばだてようかとも一瞬思ったのですが。
（聞き耳を立てるのは、でりかしーにかけるか。楽しそうならよしだ）
　思い直して、気にしないことにしたのでした。
「みちちかくん、こっちきておはなししようよ」
　きなこに呼ばれ、座敷に戻ります。

　やがて武人風なお爺ちゃん料理人剛鉄が本体（包丁）をふるって料理を終えて、きなこが皆に目くばせすると。
　皆が一斉に声をそろえていいました。
「誕生日おめでとう！」
　絶句した道哉が周囲を見回します。
「……あ、ああ、もしや、私か？」
　みんなは頷き、にこにこと道哉を見ています。
「まさか人のように誕生日を祝われる日がくるとは思わなかったよ」
　そうか………。こんな気持ちになるんだな、と小声で道哉はつぶやくのでした。
「これは俺からの祝いだ」
　鳥天狗は上等な酒を差し出し、剛鉄は刺身で花を象りキュウリをリボンの形に切ったお寿司のケーキを運んできました。
　そしてきなこは、後ろに隠していた手をこちらに向けました。
「はい、みちちかくん、プレゼント♪　れいかいたんぽぽのおしばな、しおりにしてね」
　うっすらと透けたタンポポを押し花にした栞を受け取り、道哉はどこか呆けたようにつぶやきました。
「これを、私に……？」

　道哉が猫として生まれたのは明治時代のことでした。
　そのころは正月に皆一斉に年をとっていたはずですが、いつのころからか誕生日という祝い事ができ、人が祝われるのは見たことがあり、ちょっと憧れていました。
「ありがとう、大事に使うとしよう」
　素直に嬉しそうな表情を見せる道哉を、鴉天狗はひやかします。
「おや旦那、照れてるのかい？」
「もしかしてみちちかくん、祝われるの初めて？」
　興味深そうに顔を見つめるきなこに、自分でも意外なほど顔が熱いのを感じながら、道哉は言いました。
「仕方ないじゃないか。猫には誕生日を祝う風習はないからね」

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：茄子りんこ
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございました。
一人で楽しむ誕生日あり、バースディライブありとバラエティに富んだお誕生日を楽しく書かせていただきました。
今回からハーフバースディも対象になりましたので、さらに新しいバースディを楽しんでいただければ幸いです。

それでは、ご縁がありましたら次回もご参加お待ちしております。

（運営部より）
１０月生まれのＰＣさんの年齢は、１１月に移行するときに（リアルタイムの１月中に）加算されます。
もうしばらくお待ちください。

↑ページトップに戻る