ハッピーバースデー！　１０月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　１０月☆

☆京都市内にて

　理学部の北里雅樹は、大学のテニスサークルで試合をしていました。
　サークルの日……というより、今の恋人の坂本美優と逢う日と言った方が正しいでしょう。
　法学部の美優と会うにはちょうどいい口実でした。
「美優とやり合うときは大抵俺が負けるな」
「まだまだ鍛え方が足りないわね」
　美優は元カノと同じ陸上部出身で、雅樹は典型的な文化系。
（でも苦にはならない）
　彼女と一緒にいる時が一番満たされているのを感じるから。

　美優との出会いは、４月の新歓イベント。
　ついまじまじと見てしまったのは腐れ縁の元カノとどこか似ていたからでした。
　美優のことが気になってそのまま、雅樹はテニスサークルに入り。
　８月には二人きりで沖縄に行き、身も心も結ばれたのでした。

　今日は初めて、美優の住むワンルームマンションへ寄りました。
（俺のアパートに美優が何度か来たけど、彼女の部屋に来るのは初めてなんだよな）
「それじゃそろそろ──」
「帰るの？　まだいいじゃない」
　適当に話をして帰るつもりでした。
　けれど美優の言葉に、何となく去り難くなり──
「壁が気になる？　ここ、防音はけっこうしっかりしてて隣の音は聞こえないわよ」
　寝室の壁を眺めていた雅樹を見て、美優がおかしそうに言って。
（壁の薄さが気になるなんて、猫鳴館じゃあるまいしな）
　浮かび上がりそうな記憶から目をそらすように、雅樹は美優を抱きしめて。
　あの沖縄の一夜のように愛し合ったのでした。
　実際隣の音が気になるようなことはなく、快適な眠りを経て。
　翌朝もまた愛し合ったので結局朝チュンどころか昼チュンになりました。

「ん……」
　愛し合った余韻の中で雅樹は目を覚ましました。
　スマホで時間を見ると。
（昼の１時過ぎか……土曜日だったからよかった）
　気配を感じ視線を向けると、既に目覚めていたらしい美優がこちらへやってきました。
「雅樹、誕生日おめでとう」
　渡されたプレゼントを開けて、雅樹は頬を緩めました。
「財布か……今使ってるの、かなりボロボロだったからな。ありがとう、美優」
　そう言って、お返しに情熱的なキスをするのでした。