ハッピーバースデー！　１０月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　１０月☆

☆ハーフバースディ

　１０月最初のお休み、稲積柚春はブラックウッド邸を訪れました。
　作りすぎたレモンケーキや、メアリさんに見せたいウォルター・B先生の写真を口実に、ウォルターさんに会うために。

　老メイドのメアリ・エヴァンズさんに勧められるままにリビングへ向かうと、ウォルター先生の声が聞こえてきました。
「ハーフバースディか」
　聞きつけた柚春の頭に「？」が広がります。
（ハーフバースディ？　生後半年になったお祝いだっけ）
　しかしそれがウォルターさんと何の関係があるのでしょう？
「むぅ……いつからウォルターさんは妻子持ちに？」
　ドアを開けると同時につぶやいた柚春に、ウォルターは狐につままれたような顔になりました。
「誰が妻子持ちだってぇ？」
「だって今、ハーフバースディって」
　詰め寄る柚春に、ウォルターはTVを指さしました。
「えっ？」
　テレビの画面には、可愛い赤ちゃんがお祝いされている様子が映っていました。
「なんだテレビか……紛らわしいなあ」
「僕にハーフバースディなんて関係ないよぉ。それとも、稲積にはあるのかな？」
「えっ、僕の？　確かに、僕の誕生日は４月１日だけど」
　きょとんとした柚春の言葉に、やってきたメアリさんが反応しました。
「あらまあ、それじゃ柚春さまのハーフバースディをお祝いしませんか？」　
「僕の？　いいんですか？　そうか、長期休暇中が誕生日だと半年後にみんなで……いいかも！
　じゃあウォルターさんの誕生日も連休中だったし、来月お祝いしようね。当日に祝えなくて悔しかったんだから」
　急にギアが上がった様子の柚春に、やれやれ、という表情のウォルターさんが言いました。
「でも急だし、プレゼントは用意してないよぉ？」
「そう……ですよね。いえ、いいんですそれは」
　本当の誕生日のエイプリルフールに、柚春はついた嘘が本当になる不思議な体験をしました。
　その時貰った青薔薇を、柚春はポプリにして残してあります。
（だから、いいんだ。ウォルターさんはなんとなく覚えてるようなことを時々言ってくれるし）
　しかしそんな柚春の顔が寂しそうに見えたのでしょうか。
　メアリさんが、たしなめるようにウォルターさんに声をかけます。
「ウォルターさま」
「ああ……散歩に行こうかと思ってたんだ。稲積も来る？」
「えっ……行きます！」
　荷物を手に立ち上がりながら柚春は思います。
（ありがとうメアリさん。帰ってきたらメアリさんの誕生日も忘れずに聞こう）

　ウォルターと共に歩いていると、アクセサリーを売っている露店がありました。
「これなんかどうかな？」
　ウォルターが示したアクセサリーを見て、柚春は目を輝かせました。
「ロンドンブルートパーズ！？　これがいいです！」
「そんないいもんじゃないよぉ？」　
　ウォルターは苦笑しましたが。
「色がそっくりだから、いいんです」　
　柚春は大満足でプレゼントを受け取ったのでした。

　帰った後、もう一つ驚きが待っていました。
「ハーフバースディおめでとうございます」
　メアリさんが、表紙にマーガレットが描かれたノートをプレゼントしてくれたのです。
　それはウォルターの好物をまとめたレシピノートでした。

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