君だけのchilling time｜リアクション

君だけのchilling time

　◆アクセ作りは最高のChillingTime

　そうして迎えた休日の最終日、日曜日。
　安らぎのひとときも後少しといったところで、水上桜はルーズリーフを用意し始めた。

「本当は勉強したほうがいいんだろうけど……」

　ぽつりと小さく呟いても、ルーズリーフを取り出す手は止まらない。
　もうすぐ中間試験も近いので少しでも頭の中に復習要項を詰め込んだほうがいいのかもしれないが、今日はお休みだ。頭だって休みを欲しているに違いない。
　なので桜は久しぶりに趣味のアクセ作りでひと休みを挟むことにした。……勉強したほうがいいと頭の片隅で良心が叫んだような気もしたが、するりとそれも何処かへ放った。

「えーと、前回はシルヴァーリングを作ったし……ビーズ細工……も作ったし……」

　少し期間があいてしまっているが、記憶を掘り起こしたり、前回のラフスケッチを確認してどんな形だったかを思い出していく。
　今日は前回までとはまた別の、少し違った形を作ってみようとさらさらとラフスケッチを書き出していくのだが……これがなかなか、しっかりした形が思い浮かぶまでに時間がかかる。

「今回の路線はー……んー……」

　かりかりと無心にデザインを描き出し、１枚のルーズリーフをものの数分で埋め尽くす桜。
　手慣れたもので、埋め尽くされたルーズリーフはすぐに自分の手の届く場所へと追いやって新しいルーズリーフを取り出して、また新たなデザインを描き出す。

　いくつかの案を出してみて、これはよさそうだと選んだのを数枚ほど選んだ。
　ファンシー路線、カッコイイ路線など様々なアクセサリーの形を思い浮かべたが、今回しっくりときたのはファンタジー路線。
　青色をメインに、ペンデュラム型で作ってみるのはどうだろうかと閃いたようで。

「確かここにー……あった」

　素材ストックの中から見つかったのは、ペンデュラム型のペンダントトップにふさわしい青色のレジンキャスト。
　創作の中で出てくる魔法使いが付けるような薄青色が光を吸収して辺りに散らばる。
　それをどう調理して、完成へ持っていくのか。ここからが桜の手腕の見せ所でもあって、１番の癒やしの時間。

「…………」

　無言になるほどの作業時間。自分の頭の中のイメージが少しずつ完成に近づくその瞬間はやはりどんな時でも楽しいもので、時間を忘れてしまうとはまさに今の桜のことを言うのだろう。
　青空を封じ込めたかのようなペンダントが出来上がった瞬間の桜の嬉しそうな顔は、誰もが知らない癒やしを得た瞬間でもあるのかもしれない。

「アクセ作りって、やっぱり最高の癒やしよね」

　出来上がったペンダントを写真に収めた桜は新しい作品を仕上げた嬉しさから、またも新しいラフを考える。
　日曜日が終わるその時まで、彼女の手は止まらなかった。

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