寝子島あやかし譚　烏天狗｜リアクション

寝子島あやかし譚　烏天狗

●烏天狗姉妹と対決

「寝子島へ久しぶりに来たと思ったら、私を色仕掛けで誘ってくる奴がいるとは」
　ティオレ・ユリウェイスは気に入った相手であれば男女構わず一夜を共にするが、誘いをかけた女二人は気に入らないようだ。
「色気にかかったと思ったけど、そうでもないみたいだね～」
　ギャルタイプの柚子は拍子抜けといった様子だ。
　それに対し、委員長タイプの蜜柑はそうだと思っていた、という素振りを見せる。
「コイツ、痛めつけちゃおう。どのワザがいいかな～？」
「思いついたもの全部を試せばいいじゃない」
　顔を見合わせ、ティオレをどうしようか企む二人。
（気に入る、気に入らないは別に、こいつらの誘いにあえて乗ってみるか）
　退屈しのぎにはなりそうだと、ティオレは誘いに応じることに。

「私と遊びたいの？　いいけど、退屈にはさせないでね」

　やったぁ！　と喜ぶ柚子は「いっくよー！」と突進してきた。
（……案の定、色気で誘った後、殺りにきたか）
　思っていた以上にやたら風が強いので、柚子に接近するのは一苦労だ。
「先手必勝！」
　接近するのは苦労したが問答無用で柚子に鉄拳制裁をくらわす。
　鉄拳は柚子の顔面にヒットし、その直後、勢いよく倒れた。
「いった～い！　顔はやめてよ、顔は～！　女を殴るなんてサイテ～！」
　それ、言われたくないわとティオレは呆れる。
「同じ女として許せないわね」
　眼鏡をクイッと上げると、見下したような目でティオレを見た蜜柑がウチワを取り出し、突風を起こした。
　突風に吹き飛ばされそうになるが、踏ん張ってどうにか堪えた。
「風が止めばこっちのものよ」
　盗賊の技術を活かし、蜜柑からウチワを奪い取る。それを手にし、蜜柑に突き付ける。
「これ、私にも使える？　試してみていい？」
　いつの間にひったくったの？　と思う間もなく急接近したティオレに驚く蜜柑。
「好きにすれば？　扱えれば、だけど」
「じゃあ、遠慮なく」
　ティオレがおもいっきりウチワを仰ごうとしようとした時。

「おイタはそこまでだよ、お嬢さん達」

　三毛谷道哉がティオレの手を掴み、待ったをかけた。
「邪魔しないでよ、おじさん。アタシをぶん殴ったソイツに仕返ししないと気が済まないんですけど～？」
　ふくれっ面で抗議する柚子。
「邪魔する奴は追い払うまで。手加減なしで、ね。覚悟してね、おじさん」
　蜜柑の機嫌も損ねたようだ。
　ティオレからウチワをひったくると、蜜柑はおもいっきり仰いで突風を起こした。
　突風で山高帽が飛ばされたことで、猫耳が晒されてしまった。
「おじさん、猫又だったんだ～？　アタシらのお仲間じゃん」
　柚子は楽しそうに猫耳と和服からチラリと見える猫尻尾を見る。
「バレたか。突風を堪えたのも、私が猫又だからだよ」
「それじゃ、遠慮はいらないようね」
　全力で突進してきた蜜柑は、道哉に拳を叩きつけようとするがひょいと避けられた。
「嬢ちゃんとは趣向が違うんだよ、私は」
　やれやれ……と、その後も繰り出される柚子と蜜柑の怪力攻撃と突風を避ける。
　その魅力は誇っていい、と言いながら。

このページにイラストを設定する