寝子島あやかし譚　烏天狗｜リアクション

寝子島あやかし譚　烏天狗

●烏天狗姉妹とデート？

「鴉天狗と聞いちゃ、あの子が黙っちゃいないからなぁ」
　あの子が飛び出していく前に先手を打っておくかと重い腰を上げ、三毛谷道哉は歩き出す。
「道を誤った子を正すのも年配者の務めよ。さあ、私が相手になろうか」
　誰に会っても、烏天狗達を諭そうと決めた。
　旧市街を歩いていたら、褐色肌のギャルタイプ。
　眼鏡の委員長タイプの姉妹と思われる美少女に声をかけられた。

「山高帽のおじさん、アタシらと遊ばない～？」
「こういう男が好みなの？　まあ、いいけど」

　ギャルは興味深そうに、委員長タイプは道哉をじっと見る。
　この女の子達は、年経たあやかしが話していた烏天狗かもしれない。
　間違っているかもしれないので、様子見がてら彼女達の誘いに応じることにした。
「おや、なんぱしてくれるかい？　私も楽しいことを知りたいし、少しなら奢らせていただこうか」
　一瞬、二人は顔を見合わせニヤリと笑った……ように見えた。
「奢ってくれるの？　ラッキー♪　アタシ、柚子。こっちは蜜柑」
「よろしくね、おじさん。お兄さん、と呼んだほうがいい？」
　蜜柑にそう聞かれたので、どっちでもいいよと答えた。
（フツウの女の子に見えるけど、なんか怪しいねぇ）
　二人にあやかし特有の気配で察した道哉は、まずは調子を合わせて出方を伺う。
　ついでに見分を深めて楽しむ、という腹積もりで。
「二人は姉妹なのかい？」
　そうだよ、と笑いながらアタシが姉で、蜜柑が妹と柚子が答える。
　アンバランスそうな姉妹が一般人を色気で引っ張りこんでは、鴉天狗の術をかけて痛めつけるのを楽しんでいるのか。
　その理由を掴みたい気持ちもあるが、まずは様子見と鳴りを潜める。
（人には興味がないが、人の雄にしたら悩殺される魅力的な仕草なんだろうなぁ）
　姉妹に誑かされて痛めつけられた人には興味はないが、惹きつける魅力には興味が湧いた。

「アタシ、あそこに行きたい！」
　柚子が道哉の和服の袖を引っ張り、ゲームセンターに連れ込んだ。
　初めて訪れる場所なのか、柚子は目を輝かせて店内を見回す。
「ほう、こりゃ面白そうだ。プリクラ、一緒に撮るかい？」
　撮る！　とノリノリな柚子に対し、蜜柑は付き合ってあげるわとそっけない。
　プリクラで一通り撮影をした後は、エアホッケーやクレーンゲームといったゲームを一通り楽しんだ。

　その後は、近くのクレープ店でクレープを買って食べ歩き。
「おじさんの美味しそう。一口ちょうだい」
　返事を待たず、柚子は道哉のクレープを齧る。
「やったな。お返しだよ」
　ホストのような仕草で、柚子のクレープをあーんしてから一口齧った。
　何いちゃついてるのよ……とクレープを食べ終えた蜜柑は冷ややかに二人のやり取りを見ていた。
　食べ歩きをしながら楽しんでいた姉妹だったが、近くを通りがかった一人の女性が気になったようだ。
「ねえ、アイツで遊んでみない？」
「いいけど、ほどほどにね」
　ちょっとごめん、と柚子は蜜柑を連れて道哉から離れた。

「あの二人、あくどいことしないといいんだけどねぇ」

　気になるので、道哉はこっそりと姉妹の後をつけた。

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