あおぞら古本市と読書の秋｜リアクション

あおぞら古本市と読書の秋

　日曜日。
　昼なお暗い猫鳴館に住む月原想花は、いい加減気分がふさぐ環境に耐えかねていました。
「いくらぼくがインドア派でも、さすがに昼夜問わず薄暗い環境では、時間感覚がおかしくなってしまいそうだよ」
　意を決した想花は、秋冬兼用のパーカーにＴシャツ、ジーンズにスニーカーという出で立ちで、肩にはリュックをひっかけ外に出ました。
（少し軽装だけど、厚着するほど寒くもないよね）
　外へ出ると、秋晴れの青空が高く遠く広がっていました。
（特に用はないけど、シーサイドタウンにでも繰り出そうか）

　シーサイドタウンに出ると、通りの両脇にたくさんの露店が並んでいました。
「何か祭りでもあるのかな？」
　首をかしげた想花は、スマホでＳＮＳのタイムラインをチェックしました。
「『あおぞら古本市』開催中？　古本かあ。何か面白そうなものないかな」
　空想家で冒険ファンタジーが好きな想花は、露店に向かい棚に並ぶ古本をチェックし始めました。
「あ、ファンタジー小説だ。こっちは神話や昔話をまとめた本かあ。あ、この画集幻想的で素敵だな」
　特にほしかった画集の値段を確認しましたが。
「……古本でもこんなに高いんだ」
　今の手持ちのお金では足りず、想花はため息をつきました。
（こういうところってまけてもらえたりしないのかな）
　店主のおじさんをちらっと見ますが。
（……うわ、怖そう。やっぱり恥ずかしいし、言えないや。フリマじゃないし……）
　画集に目を戻した想花は、せめて絵を目に焼き付けようと開きます。
（雲より高くそびえる塔。この城には、どんな人が住んでいるんだろう？）
　何ページか見ているうちに、たちまちその絵の中の世界に浸りこむのでした。

「……喉が渇いたな」
　結局、海外のファンタジー小説の翻訳書を２冊を購入した後、会場内の屋台でコーヒーを注文しました。
（この話、さっきの画集と雰囲気が合ってるかも）
　コーヒーを飲みながら秋晴れの下、読書を堪能する想花。
　あたりで「熊が出た！」なんて声も聞こえてきましたが。
　猫鳴館の寮生を半年もやっていると、そんなことでは動じなくなるのでした。

「いい休日だった。画集が買えるようバイトでもしようかな？」
　日が落ちるころ、想花は満足しながら帰途につくのでした。　

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