霊界運動会！｜リアクション

霊界運動会！

△人魂入れと鬼火リレー

　競技は順調に進んでいく。
　次は組ごとに勝敗が決まる『人魂入れ』だ。
　姫之崎ありあは赤組として出場した。
　ポン！
　人魂砲？　の合図で競技スタートだ。
「籠の中に人魂を入れるらしいけど、こんなのどうやって入れるのだか……」
　紅白の人魂がふわふわ浮かんでいるのは不思議な光景だ。
　中には微妙に色が違うのもまじっており、どうも参加者や観客から抜け出た人魂が混じっているようだ。
「あれは入れちゃいけないのよね」
　しかも自分の魂までが、気を抜くとふらふら抜けだしそうな気配がする。
「出ちゃだめだからね……」
　いちおう、お腹に力を入れて自分の魂に言い聞かせる。
　魂が抜け出てしまえばありあはただの人形に戻ってしまう。
「そーれ！」
　赤い人魂に手を伸ばすと、不思議だが捕まえることができた。
　それを、片っ端から籠の中へと放り込んでいった。

「ひとーつ、ふたーつ……」　
　籠の中の玉を数えるのは普通の玉入れと一緒だが、投げられた人魂はふらふらと飛んで行ったりすうっと消えてしまったりする。
「もしかして、数える前に消えちゃったりすることもあるの？」
　ハラハラしながら見ていたが、ついに白組の人魂が先に尽きた。
「やったあ！」
　ありあは赤組の仲間と勝利を喜び合った。

「次は鬼火リレーです。出場者は入魂門に……」
　ゆっくり勝利の余韻に浸る暇もなく、ありあは次の競技へ向かう。

「リレー？　ウォルターさんのカッコイイポーズが見られるなら、そっちに参加してもらえば良かったかな……」
　稲積柚春はアナウンスを聞いて、ちょっと惜しかったかなと思った。
「でも何しても格好いいからな……」
「稲積？　僕はそんなに出る気はないからねぇ？　射撃大会があったら出てもいいけど」
「チョーク投げ大会もですよね？」
「稲積には近すぎてチョークが投げられないんだよねぇ……」　
　ウォルターが残念だ、という顔をして笑う。
「もう、ウォルターさんったら」
（どこまで本気なんだろう？　嫌がってはいないよね？）
　と考えつつ、やっぱり一緒に走るチャンスは逃せないと柚春は思う。

　鬼火リレーの組み分けと順番が発表される。
　バトンの代わりに鬼火がついたロウソクを持ち、消えないように走るというリレーだ。
　ありあは赤組のアンカーだった。
　しかし。
「こんなのどうやって持って走ればいいのよ？」
　馬鹿でかいロウソクに、ありあは戸惑っていた。
　いや、ロウソクは普通のバトン程度の大きさなのだが、フィギュアであるありあの身長は２５ｃｍしかない。
「背負っちゃえば～？」　
　他のメンバーが髪ゴムを貸してくれた。
「それしかないわね」　
　結局、ロウソクをゴムで体に括り付け背負って走ることにした。
　２位でロウソクを受け取ったが、モタモタしているうちに一人に抜かれている。
「ロウソクが重たいし、溶けたロウソクが……」
　重いわ、ポタポタとロウが体にかかってくるわでもう大変だった。
　肌に触れたロウが熱くないのは幸いだったが。
　ゾクゾクッ。
「火傷はしない？みたいだけど、その代わり妙な悪寒がして……」
　さすが霊界運動会だけのことはあるわ、と思う。
　とにかく歯を食いしばってゴールへ向かって走るありあだが。
「きなこーっ、頑張れ！」
　応援の声と共に、ふわふわ飛んできたきなこに抜かれてしまった。

　やっとゴールに走りこんだありあに、あやかしたちの惜しみない拍手が注がれた。
　

　

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