ねこを吸う｜リアクション

ねこを吸う

●遊園地の猫と一緒に

「この雑誌、たまに読むのだけど暇つぶしにはいいよね」
　大学内のコンビニに売っていた『月刊・ねこを吸う』を手にした初瀬川理緒は、今月号は寝子島特集かと表紙を見る。
　明日は週末。大学も仕事もない完全オフの日。
　佐和崎紗月と一緒に猫スポット巡りをしようかと思い立ったので、紗月に一緒に行こうと話を持ちかけた。
　その話を聞いた紗月は、楽しそうとＯＫした。

　翌日。
　二人は寝子島イリュージョンランドへ。
「ここは一度行ってみたかったんだ」
　廃墟で撮影とかしてみたいが、縁がないのか、そういう仕事が理緒には巡ってこない。
　グラドルだから水着姿での撮影が多いが、たまには、こういう場所もいい。
　そう思いながら適当にイリュージョンランドを巡ってみると、コーヒーカップの中から何やら気配が。
「な、なに？」
「理緒ちゃん……」
　不安になった紗月は理緒から離れない。
「あたしが守ってあげるから大丈夫よ。確かめよう」
　そっとコーヒーカップの中を覗き込むと、猫が丸まってすやすやと寝ていた。
「かわいい……」
　撫でたい気持ちを堪えつつ、紗月は眠る猫を見る。
「起こさないよう、そっと見ましょう」
　猫の寝姿を「かわいい」と言いながら二人は鑑賞した。

　眠る猫鑑賞の後は、回転木馬のわきで日向ぼっこしている猫。
　ゴーカートのレーンの跡地でぐるぐると猫同士で追いかけまわしたりしているのを見た。
　猫はいないかもしれないと思っていたが、思ったより多くの猫がいた。
　いろんな猫がいると理緒と紗月は楽しくなってきた。
「おやつあげるからおいで」
　持ってきたカリカリを鞄から取り出した理緒は、手にいくつか載せて猫の前に差し出す。
　おやつを貰えると、猫達は警戒しつつ理緒に近づいて来る。
　匂いを嗅いでから、手の上のカリカリを食べる猫を見て紗月はかわいいとじっと見る。
「紗月もカリカリあげてみたら？」
「う、うん……」
　理緒からカリカリを受け取り、手に載せて猫に差し出す。
　おやつ、と喜んでいるように見える猫はかわいい。
　猫と紗月の微笑ましい様子を、理緒は何枚かスマホで撮影。
「私も理緒ちゃんを撮ってあげる」
「お願いね」
　交代しつつ、お互いに猫と触れ合っている様子を撮影したり、猫達を撮影したり。
　触れ合いだけでなく、猫吸いも。
「これが猫吸いなのね」
　もっと欲しいとおねだりしているかのように擦り寄って来たハチワレを抱っこし、理緒は顔を埋める。
「紗月もしてみる？」
「ちょっとだけ、してみようかな」
　理緒が抱っこしているハチワレにそっと近づき、紗月は恐る恐る猫吸いする。
「これが猫吸いなのね……」
　直に増え合えることに少し驚いた紗月だった。

　一通り猫達と触れ合ったので次の場所へ。
「寝子島に住んでいて、あちこちで猫を見かけるけど普段それほど猫と触れ合うことはないわね」
「そうかも」
　名前のとおり、寝子島には多くの猫がいる。その中にはフツウとは違う猫もいるが。
「今日は、猫ちゃんといい感じで触れ合えたかな」
　理緒がそう言うので、紗月は「いい感じで触れ合えたんじゃないかしら」と答えた。

　寝子島イリュージョンランドのように猫達と増え合えるといいねと話しつつ、二人は次の場所へ向かう。

このページにイラストを設定する