携帯戦記カプセルギアアーケード・クロス　絆で戦え比翼連撃！｜リアクション

携帯戦記カプセルギアアーケード・クロス　絆で戦え比翼連撃！

　とくにこれといって目的があったわけでもないのだけれど。
　別にパジャマパーティが楽しかったから、可愛いパジャマを見てみようだとか。一学期の成績を反省して、参考書を探しに来たとか。そんなことはまったくないのだから堂々としていればいいのに、芋煮紅美はキラキラと輝いた瞳で見つめてくる白真白に捕まって、何か言い訳をしなくてはと口ごもった。
「えっと、これは……」
「えーっ！　紅ちゃんもロケテが気になるくらいカプギア好きだっけ!?」
「ろ、ロケ……？　いや、通りすがり」
　そうなんだ、と納得したような相づちを返すのに、真白は紅美の背中を待機列にぐいぐいと押しやっていく。前作は面白かったとか、操作もコントローラーでも音声でも大丈夫だとか。弾んだ声で話すから、つい紅美も聞き入ってしまったのだけれど。
「でねっ、今回のは二人組でするって言うからさ」
「ふーん……って、え？　それって」
　まさかこのまま、プレイさせられるのではないか。列からそっと抜け出そうとした紅美の手を、真白は満面の笑顔で握りしめた。
「背中は任せたからねっ！」
「……１回だけだからね」
　仕方ないなと呆れた顔を見せた紅美だけれど、真白があまりに喜んでみせるから。それに喧嘩で負けるだなんて無様な姿は見せられないなと、他のプレイヤーの戦い方を参考にし始めた。

　台座にネージュリェーツをセットして、チュートリアルを操作しながら真白は感触を確かめる。
（うーん、私には難しくないけど……紅ちゃんにはどうかな）
　ちらりと隣を窺えば、機体はカスタムせずスピードタイプのお勧めベースモデルのまま。チュートリアルも画面に文句を言いつつ悪戦苦闘しているようだ。
「敵は必要最低限だけ狩って、猫助け優先しよっか」
「は？　敵を前に逃げるっての？」
「ちがうちがう。この手のゲームは、敵が無尽蔵に沸いてくるんだよ。しかも狩るごとに強い敵が沸くオマケ付き」
　真白は「だけど」と区切るとニヤリと笑う。猫だけ助けてキャーキャー逃げ惑うことが、自分たちに似合うわけもない。
「邪魔する敵は全力でふっとばーす！」
「オッケー、それでいこうか」
　チュートリアルの時間も終わり、機体は星ヶ丘駅周辺へ投げ出される。見知った街並みがそこにあるのに、騎士が闊歩しているだけで何かに支配されたような世界だ。
　それでも、一部住宅街のスペイン風だったり日本離れした高級邸宅が建ち並ぶ場所になら、この騎士たちも違和感がないのかもしれない。
「さー、猫ちゃんは、どっこかな～？」
　猫の存在を知らせるマーカーはミニマップに記されるものの、細かな位置までは特定できない。ゲームの仕様か、索敵タイプの機体であれば勝手が変わるのかもしれないが、見通しのいい所にいるとは限らないようだ。
（敵の動きも遅いっぽいし、ここは足止めするだけでも十分かな）
　一定範囲内に蔦を生やす種を接地することが出来る『やどりぎあーむ』で罠を仕掛け、その範囲に誘導するように移動して足止めの間に探索する。
　それを繰り返してわかったことは、種を接地する個数が調整されているらしいということ。
（うーん、足止めの時間は十分だけど、敵の数に対して個数条件が厳し……）
「だあああっ、まどろっこしい！　あたしは殴る！」
　ちょうど足止めだけでは難しいと思っていた真白の気持ちを代弁するかのような大きな叫びが、隣から聞こえてきた。
　猫助けでゲージもゆっくり溜まってきているし、ピンチを切り抜ける方法はピンチになったときに思い浮かぶだろう。
「あはは、全力でふっとばーす！」
　今はただ、彼女と楽しくゲームが出来ればと、そんなことを思った。

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