携帯戦記カプセルギアアーケード・クロス　絆で戦え比翼連撃！｜リアクション

携帯戦記カプセルギアアーケード・クロス　絆で戦え比翼連撃！

　買い物に来ていたのか、ふらりとウインドウショッピングに来ていたのか。
　イベント会場の近くでウォルター・Bを見つけた稲積柚春は、これ幸いとばかりにペアをお願いした。
「いくら知らなくても楽しめるって言ったってねぇ……」
　そう言って困ったように機体を選ぶのに、操作に迷いがない。
　コックピットのような席に座るウォルターが格好良くて、ゲームが始まればその姿をまじまじと見られないのは残念だな、なんて思いつつもカプギアのことであれば多少はアドバイスできるかもと横顔を盗み見ている間に、ウォルターは着々とパーツを組み合わせて、出撃準備を整えてしまった。
　今度は慌てて機体をカスタムする柚春が見つめ返される番だ。
「カプセルギアを持ってる人は、台座に置くだけじゃなかった？」
「うん、そう……なんだけど」
　大きな画面でворが動き回る様子を見たいし、一緒に戦いたいとも思う。だけど、乗り回して操縦したいかと問われれば、それも違う気がして。
（やっぱりворは友達……ううん、きっとそれよりも特別な）
　だから柚春は、台座ではなく筐体の揺れない部分にворを乗せて応援をお願いすることにした。それでも、どこか面差しや戦い方はворと似ている機体を組み上げて出撃準備を終える。
「さあて、作戦はどうしようか？」
「僕もぬい活ばっかりでゲームには詳しくないから……強い敵はあまり出さずに猫を助けようかな」
「そうだねぇ、不必要に刺激する必要はないと思うよぉ」
　その言葉に、どこか引っかかるようなものがあって、思わず柚春はウォルターを見やる。
「まぁ折角のゲームだし？　大暴れしたくなったら言ってね～」
「は、はい……」
　気のせい、だろうか。
　そうじゃなかったとしても、自分が見るべきは目の前のモニターで、隣のウォルターではない。
（ステージは３つ。防御が強い敵は倒すのに時間かかっちゃうし、素早い敵からは逃げ切れない……となると、旧市街が楽しめそうかな）
　自分とウォルターのゲームの腕前と、選んだ機体を加味して最初のステージを選択する。何かあればウォルターを援護して守るのだと意気込んでのスタートだったはず、なのに。
「そこ、お留守だよ」
「えっ……あ、ありがとうございます！」
　気付けば、猫助けに夢中になる柚春をウォルターが助けるという、思っていたのと逆の構図になっていた。
　直進攻撃をしてくる敵をギリギリでかわし、背後から狙撃。方向転換する前に追撃で撃破――どう考えても、手慣れている。
「ウォルターさんって、ゲームもするの？」
「んー？　通りすがりに気が向いたらとか、付き合いで行ったら適当にってくらいかな」
　それでこんなにも操作できるなだんて、さすが天才肌のハイスペだ。
　どちらかというと、機体に乗って前線で活躍する兵士より、本艦に乗って司令塔として活躍してそうなイメージがあったが、実際はそうでもないのかなと無駄のない動きに惚れ惚れする。
　けれど、守られてばかりいるのも柚春だって落ち着かない。
「この辺りの猫は助け終わったし……次の地点までは敵の群れを抜けなきゃいけないですね」
「遠回りで行く？」
「大丈夫です、行けます！」
　ちらりとворを見て、活躍を見ててねと微笑んでみせるけれど。機体の振動が伝わってしまったのか、揺れない場所に置いたつもりが、ворは少し傾いてウォルターのほうを見ている。
「なら近道で行こうか。何かあっても、さっきみたいに守ってあげるよ」
　そう軽くウインクでも飛ばして気楽に行こうと声をかけるウォルターに、やっぱりворは睨みきかしているような気がして。柚春はウォルターがそれに気付いていませんようにとハラハラしながら祈った。

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