よるのひみつたち｜リアクション

よるのひみつたち

●真夜中の散歩での偶然の出会い

　倉前七瀬は本を……というより、字を読むのに夢中になっていたら、真夜中になってしまっていた。
「思えばまだ、晩ごはんも食べとらんかったです」
　真夜中だと気づいた途端にお腹がすいたので、冷蔵庫にあるものを……と思って開けたが、生憎と何もない。
　仕方がないので、コンビニに食料を買いに行くことに。
「ついでに、夜のお散歩にでも行くと」

　寝子高で桜花寮生活をしていた頃は、度々こっそり寮を抜け出していた。
　今は一人暮らしで、19歳になったので気兼ねなく散歩ができる。
（思えば、僕って結構ワルですね……？）
　久しぶりの夜の散歩をしながら、こっそり抜け出していた頃が懐かしくなってきた。
　コンビニに入ると、おにぎりやお弁当が陳列されている棚を見るが残り少なくなっていた。
　残っているものから自分が好きな具のおにぎりとペットボトルのお茶。
　これだけでは足りないかも、と総菜パン。
　帰る途中に溶けてもいいようにとチアパックに入った柔らかいバニラアイス。
　買い食い用のアイスを買っていく。

　コンビニを出ると、買い食い用のアイスをさっそく一口。
「散歩の行き先はどこにしましょう」
　アイスを食べながら、涼しくて静かなところ、という条件が当てはまる場所は……と考える。
「海がよかやろ。この時間なら涼しいでしょうし」
　ということで海に決めた。
　よく行っていたし、夜の海は静かでいい。
　ひとりの散歩も好きだが、本当は誰かと話しながら過ごしたい。
　例えば、とウォルター・B先生がいたら「一緒に散歩はどうですか？」と誘いたいと思う。
（流石に、こんな時間に遇えるわけなかですよね）
　もし会えたら「こんな時間にあうなんて、先生もしかして悪い大人ですか？」なんて、冗談を言ってみたりしたい。

　あともう少しで海、というところで、偶然ウォルター先生に会った。
「先生、こんな時間に何を？」
「そういう君こそ、何をしているのかなぁ？」
　こう返されるとは思わなかった。
「コンビニで遅い晩御飯を買うついでに、夜の散歩を。海は涼しくていいかなと思いまして」
　そう言ってコンビニに袋を見せる。
「海かぁ。この時間帯は涼しそうだ。僕も一緒に行っていい？」
　ウォルター先生が一緒に散歩しよう、と言うとは思わなかった。
「いいですよ。一緒に行きましょう」

　夜の海に辿り着くと、２人は砂浜に腰を下ろして海を眺める。
「コンビニで買ったアイスを食べる、なんて悪いことしませんか？」
　コンビニの袋に入っているチアパック入りのバニラアイスを出し、ウォルター先生に差し出す。
「いいねぇ。夜中にこっそり抜け出しての買い食いは、たまにはいい」
　学生時代を思い出すと、七瀬が差し入れてくれたアイスをいただくことに。
「倉前は悪い子なのかな？」
　自分が言いたいことを言われるとは思わなかったので、七瀬は少しドキッとなった。
「たまには、悪いことをしてみたか。いつも真面目じゃ、つまらないですし」
　それもそうだね、と笑うウォルター先生。

　その後、２人は静かな夜の海で遅めの晩ごはんを食べながら話し込んだ。

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