よるのひみつたち｜リアクション

よるのひみつたち

●警察官の夜

　事件や事故は24時間365日いつでも発生する可能性があり、また誰にも予測できない。
　そのため、それらの対応に追われる警察官に暇といえる時期はなく、年がら年中忙しい。
　特に刑事課は、警察に数ある組織のなかでもきわめて多忙な部署として知られている。
　水槻清恋も、そういった激務をこなす警察官だ。

　今日は週に一度の当直の日。
　8時30分～17時15分の日勤終了後、そのまま翌日の12時までの勤務だ。
　途中で５時間ほどの休憩があるので交代で仮眠をとったり、夕食をとったり。
　交代で仮眠や食事、というが、いつ緊急出動が起きるかわからないので気が抜けない。
　なので、休憩時間も落ち着かない。
　清恋が夕食をとっている間は、事件や事故といった警察官が出動する出来事は何も起きなかった。
　このまま何事もなければ溜まっている書類仕事を片付けたり。
　過去の捜査資料をあたったり、今抱えている案件についての参考になりそうなことを探したり。
　そのようなデスクワークを淡々とこなすだけだ。
　出動することがないのはいいが、夜は本当に長い。特に秋の夜は。
「秋の夜長というけれど、特に何もない夜は本当に長いわね」
　逆に何かしらの事件が起こった時は本当に忙しい。
　夜中でも現場に駆り出されて現場検証をやったり、聞き込みを行ったりするし。
　寝不足や疲労で何度も倒れそうになることもあったが、職務を全うするまでは……と気合で乗り切った。
　それらのことが終わり、あとはゆっくり休めるという時は泥のように眠った。

　とはいえ、ここ最近は事件らしい事件が起こっていないのでさすがに暇だ。
（警察が商売繁盛してるのも、それはそれで問題だけど）
　過去の捜査資料に目を通しながら、そんなことを考える。
「寝子島に来た当初は、いきなり人身売買事件に出くわしてその捜査に追われたわね」
　転属早々、結構ハードな日々を過ごしたものだと思う。
　犯人をめった刺しにした17歳の少女の取り調べ。
　誘拐事件の被害者らへの事情聴取や周辺の裏付け捜査など、これでもかというほどに忙しかった。
　転属したてなのにそこまでやらせる？　と愚痴りたいほどに。

　関わったそれらの事件も一段落ついたので、今はむしろ暇だったりする。
　今夜も、取り立てて事件らしい事件はない。
　このまま、今夜も無事に当直勤務が明けて欲しいものである。
（というものの、仕事が何もないというのは暇だわ……）
　目を通していた書類をデスクの上に置き、眠気覚ましにコーヒーを飲もうと給湯室に行こうとした時。
　寝子島シーサイドタウン駅付近で事件が起きたので、至急、現場に向かうようにという指示が。
「秋の夜長の暇、はなかったものと思うしかないわね」
　ジャケットを羽織ると、清恋は事件現場であるシーサイドタウンに向かった。

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