月色カフェは二人で｜リアクション

月色カフェは二人で

＊甘い時間を分け合う楽しさ

「前は何があったか、あおいは知ってる？」
「うーん、確か洋食店だった気がする」
　八神修は七夜あおいと共に店を訪れ、のんびりと店内を見ながらそんな話をしていた。移転したのならば次はそこに行きたいね、なんて話しつつメニューを見……、なんとなくあおいがそこにいる事自体が嬉しくて、楽しくて。修は自然と頬を緩めていた。
　彼女に「どうしたの？」と言われれば「雰囲気がよくて」と微笑んで返す。あおいに見惚れていたなんて、恥ずかしくて言えそうもない。
「あら！　修君とあおいちゃんも来ていたのね！」
　二人が顔を上げると、美和が小さく手を振っていた。傍らには俊介がおり、穏やかな笑みを浮かべていた。
「先生方もお茶の時間でしたか」
　修の言葉に美和は「ええ」と頷くが二人そろってほんのり頬が赤い気がするのは気のせいか。
「もしかして、修君とあおいちゃんはデートだったりして？」
　思わぬ美和の言葉にドキッとする修。それはあおいも同じのようで、微笑ましく思ったのだろう、美和は笑みが柔らかくなった気がする。
「エスコートはスマートに……できたらいいよね、お互いに」
　俊介はこっそり修にそう言い、それとなく美和と共に会計の場所へと向かった。その後「今日は僕が……」「いいえ、そんなわけには！？」という会話が聞こえたがまぁ、よくある事だろう。
「もしかして、先生たちもデートだったのかな？」
「それはまだ、これからかもしれない……？」
　なんてあおいと話し、首を傾げる。だが、修は俊介の言葉を深く胸に刻み込む。
（エスコートはスマートに、か）
　まだ『青い』修にはそれが『課題』のように思えた。

　しばらくして注文していたスイーツが運ばれる。
　修は抹茶を使った十六夜ムースと満月チーズケーキ、あおいは三日月スイートポテトと新月オペラを選んでおり、それぞれシェアしてみる事に。
　その前にケーキ皿横に飾りの陶器兎人形を置き、デジカメで撮影。なかなか可愛らしく撮影できてうれしくなる。
（それにしても、家具や調度品も雰囲気がいいな。新品だろうけど、いいダメージ加工がしてある……）
　と暫し店内の飾りに目が言っていた修だが、あおいに「こっち、食べてみない？」とスイートポテトを切って分けてくれたのを見、一口。
「おいしい……」
「でしょ？　そっちのムースもいい？」
　あおいに頼まれ、そっとスプーンで切り分ける。自分のフォークでぱくっ、とムースを口にしたあおいは、表情を輝かせた。
「！　こっちのムースも甘すぎなくて美味しいね」
「俺は、スイートポテトの濃厚さに目を見張るな。だけどくどく無くて食べやすくて……。テイクアウトでも売っているかな？」
「そう言えばこれとチーズケーキだけあるみたい」
　ならお土産に買っていこうか、等話しているうちに無くなって行くスイーツ。
「オペラは、形が『満月』と同じだね。蕩ける感じが高級感を感じさせるよ」
「わかるっ！　贅沢な感じがしたのよね。あ、でも、チーズケーキもこう、しっとり感がおしとやかな感じがする！」
「おしとやか？　なるほど、この食感や見た目かな？」
　コーヒーを飲みながら語らうその笑顔に頬を少し緩めながら、修は相槌を打った。

　――やっぱり、俺はあおいが好きなんだな。

　と、自分の耳が赤くなるような感覚を覚えながら。

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