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寝子島高校
しらないアナタのホントのところ
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【きっと素敵な恋だから】
時間の流れも曖昧な中で何日か経ち、千々に乱れた綾花の心もようやくにして、落ち着きを見せ始めた頃。
「あれから、どう? 珪さんは」
「いつもと変わらないです。……変わらないように見えます、見た目は。でも時々ぼうっとして、考え事をしてるみたいで」
「ふんふん。なるほど」
OLD LYNX。つるぎはきゅうくつそうにカウンターの向こうへ収まりながらも、身を乗り出して事の経緯へ耳を寄せます。
「私、不安で……聞いてはいけないことを聞いてしまったんじゃないかって」
そもそも、です。
綾花は生徒で、彼は教師で。
「私がこれ以上、踏み込んでもいいのかな。って……」
目を伏せて、綾花はぽつり、独白めいてつぶやきます。
心のどこかで、ずっと引っかかっていたのかもしれません。
私は、あの人に恋をしていいのかな? 先生の深いところへ、踏み込んでいいのかな?
学生の身で……責任も取れないのに、引っかき回しているだけなのかも?
それをするべきは、例えば目の前のつるぎのような、もっと大人な、そう。学生じゃない、誰かの役割なんじゃないかしら?
そんな想いがせきを切ったように、ぶわ、と綾花の内へ広がって。押しつぶされてしまいそうで。
「ん~。そっか。なるほどねえ」
ぱたん、と開いていた本を閉じると、つるぎは不意に、しょぼくれた綾花をずいと覗き込みます。
そうしてはっきりと、言いました。
「誰かを好きになることにさ。良いも悪いもないんだよなあ」
「え……」
きょとん。目をぱちくりした綾花へ。
おもむろにつるぎは、カウンターに乗っている、なんだか古めかしい旧世代の遺物みたいなノートパソコンをぱかっと開きつつ、
「珪さんがあの本のタイトルまで、綾辻ちゃんに教えたとはねえ。なんでだと思う?」
それはそう。つるぎは本の名前を知っていたはず。珪先生から頼まれて、探していたわけですから。
けれど彼のことだから、そう多くの人にお願いをして回ったり、タイトルやそれを探していることを触れ回ったりはしなかったでしょう。
であればどうして、綾花へ教えてくれたのでしょうか?
明るく雄弁だけれど本当はシャイで生真面目で、いつも自分より誰かを気づかってばかりの彼がなぜ、綾花へ限っては、己をさらしてくれたのでしょうか?
「……あ……」
彼は、考えたのかもしれません。あるいは無意識のうち、そう感じたのかもしれません。
綾辻さんになら、教えてもいいかな。この子になら、知られちゃってもいいかな。
「おーおー。ニヤけちゃってまあ」
「つ、つるぎさん……!」
そっか。そうなんだ。
不安はたちどころにほどけて霧消して、綾花の胸はぽかりと、ほんのり、あたかかく灯りました。我ながらゲンキンなものだとちょっぴり、思わないでもないけれど。
「ずいぶん、珪さんに信頼されてるッスなあ。綾辻ちゃんは」
「信頼……でしょうか?」
「たぶんね。高校からの付き合いのわたしと、ウチの親父……オークションに出品する本の買い付けで全国あちこち渡り歩くからね、もののついでに頼まれた探し物もするわけだけど。それ以外の誰かに、珪さんがあの本のことを教えるなんて正直、すっげー意外」
かたかた、たたん。ぺこ、と相当にヘタっているキーボードを叩き、つるぎはノートパソコンをくるりと一回転させ、くすんで色あせた液晶を綾花へ見せました。
「これを探すのは、なんとなく、わたしの役割なのかなって思ってた。そうしてあげないと、珪さんはいつまでたっても抱え込んだままでさ。この先ずうっと、誰かと付き合ったりなんてしねーんだろなーってさ」
ああ、なぜ思い至らなかったのでしょう。
本もそこに綴られた物語も、無から生まれるはずもないのに。
本には、そこに想いを刻みつけた、書き手がいるはずなのに。
「でも違ったのかもね。珪さんが見つけてほしいのは、わたしじゃないのかも。それを託すのにふさわしいと思える、たったひとりの、もっと身近な誰かさんなのかもね?」
それはネットの片隅に埋もれていた、いつ撮られたものかもわからない、つるぎが見つけることのできた唯一の手がかりなのだそう。あらすじや書評が添えられているでもなく、件の一冊の表紙を撮影しただけの、ただの一枚の画像でした。
「そんでもって、好きな人が悩んでたり困ってたら、なにかしてあげたくなるでしょ? その気持ちに良いも悪いも、正しいも正しくないもない。そんなの当たり前のことじゃんね、ってハナシ」
水彩で描かれた、もくもく曇天。その切れ間から覗く、息を呑むほどに青い空。差しこむ陽光の一筋。
明朝体のやわらかな字体に控え目な大きさで、『HALO ~氷解無垢~』。
著者名は。
「……
新見 冬
。さん……」
──さああ。さああと、窓の外。半透明のカーテンがさえぎる向こうに、ぼやけた秋の空。
寝子島高校、放課後の図書室に満ちるこの凛とした空気こそ、静謐なる静寂と呼ぶべきでしょう。
「早川先生。この本はどの棚に収めたらいいですかね?」
「それはね……いいよ、教えてあげる。おいで」
「あ、わざわざすんません! お願いします」
だから時おりかわされるこんな会話も、小さく控え目。張りつめた、それでいて心地よく安寧な、私たちの聖域を侵さぬよう、小声です。
「なるほどなあ。まだ慣れてなくって、俺」
「大丈夫、ゆっくり覚えていけばいいよ。僕はもちろん、先輩のみんなにだって、いつでも頼ってくれていいからね」
「はいっ。ありがとうございます!」
まだ仕事に慣れない、綾花の後輩図書委員を導くさまも、実に絵になる珪先生です。
カウンターへ戻ってきた彼へ、綾花は新しい蔵書に手際よくブッカーを貼りながら、ひそめた声で言いました。
「雨ですねえ。珪先生」
「そうだね……雨だねえ。綾辻さん」
ほんの一瞬目くばせ、くすりと笑い合いました。
相変わらず雨の日の珪先生はどこか沈んでいて、口数少なくて、けれど見た目にはいつものように完璧で、誰にも優しくて、余裕があって、大人で素敵な司書教諭さんです。
きっと知っているのは、綾花だけ。雨音を重ねて届く声のトーン、曇り空のはらむ淡い光に照らされた横顔のかすかなかげり、ほんの少しの違いに気が付くのは、綾花だけ。
ふたりをつなげるちょっとした、秘密。
「珪先生?」
「うん」
カフェで誰はばからずのおしゃべりもいいけれど、図書室での声を落とした、ふたりだけの小さなやりとりもまた格別です。
何日か前にはまるでこの世の終わりみたいに感じられた静けさにも、今は、そんなふうに思えます。
「この前お借りした本、まだ途中なんですけど、とっても面白いです」
「ああ、あれ。綾辻さんは楽しめると思ったんだ」
「もう、読むのが止まらなくて。夜ふかししちゃって、今日は少し寝不足です」
「あはは。分かるよ、その感じ」
図書室。あるいは図書館。ブックカフェの日の当たるテラス席。本を愛する者たちの、侵されざる聖域。騒がしく踏み込む者は白い目で見られ、忌避され、場合によっては淘汰されることでしょう。
誰しも自分だけの聖域を持っているものです。自己と他者の隔壁。保たれるべきライン。見まわしてみればそんなものはどこにでも、幾本も引かれています。
綾花にはそれが見えました。今やはっきり、くっきりと。
「珪先生」
「うん」
「私、あの本……私も、探してみますから」
あえて自分の意思をもって、綾花はそれを踏み越えます。
「古書店に行ったら、見てみますね。どこかに埋もれているのかも」
「……うん」
この人のためになにかできることがあるのなら、そうしてあげたいから。
わき上がる気持ちに嘘いつわりなく、好きだからとか、教師と生徒だからとか、そんなことも関係なくて。
もし彼が苦い記憶に苛まれているなら、抱えきれない思い出を抱え込んでいるのなら……それを表に出せず、ひとり悩んでいるのなら、手を差し伸べてあげたい。
ただそれだけのこと。
「私、なんだか見つけられる気がするんです。なんとなくですけど、そんな気がして……」
「もし、あの本を見つけられたら」
「はい」
きっとそれが、人を好きになるということだから。
綾花は信じているのです。
「綾辻さんも、読んでみて。感想を聞かせてくれたら……うれしいよ」
この恋は、きっと素敵な恋だから。
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あとがき
担当マスター:
墨谷幽
ファンレターはマスターページから!
墨谷幽です。『しらないアナタのホントのところ』、リアクションをお届けいたします。
今回は珪先生のプライベートを紐解きながら、彼の謎にも迫ってみよう。
という比較的重要なお話であったことと、ガイドの公開までお待たせしてしまいまして、綾辻さんにはご心配をおかけしてしまったかもしれません。
遅くなりまして大変申し訳ありません!
今回のお話では、珪先生の過去の全てを描くには至りませんでした。すみませんっ。
綾辻さんの探求の過程で、珪先生は思いだしたくない過去とふたたび対面することになるのかもしれません。辛いことかもしれませんし、そこにこそ救いがあったりするのかもしれません。
ただ、きっとそれはおふたりにとって素敵な結末につながっているはず……と、墨谷は考えております。
よろしければ次のシナリオで、あるいは次のプラシナで、真相についても墨谷に描かせていただけましたら、嬉しいです。
個別あとがきでもう少し書かせていただいておりますが、ひとまず。
今回はプライベートシナリオの申請、まことにありがとうございました。
次の機会も楽しみにしております~!
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担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSS(500)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年08月02日
参加申し込みの期限
2022年08月09日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年08月09日 11時00分
参加キャラクター一覧
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