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しらないアナタのホントのところ
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【"HALO"】
珪先生が、見事! 落札した何冊かを携えて、OLD LYNXを後にしたふたり。その後も心のおもむくままに、何軒かの本屋さんをはしごして。
かわす会話は本のことばかり。偶然見つけたいいカンジの推理小説の表紙を見せながら、嬉しそうに報告した綾花へ珪先生は、にっこり。彼の発掘した難解そうな古典物を横から覗き込んだときなどは、ほっぺたがくっつきそうなくらいに顔が近くて。
ある古書店の狭い書棚の並びをすれ違った時なんて、
「あっ……」
「っと。大丈夫? はは、この店はちょっと狭すぎるね」
「は、はい。でも、それがいいっていうか……」
よろけた綾花の手をつかまえた拍子に、珪先生の手がきゅっと握り込んでしまったり。
そのままなんだか、じっと見つめ合ってしまったり。けれど長く長く感じられたその時間が、振り返ってみればほんの一瞬の出来事だったと気づいたり。
「ご、ごめん。離すね」
「はい……あの、ありがと、ございま……」
心臓がばくばく。破裂しそうなくらいに脈打って、綾花の瞳はくるくるとめぐり、お礼の言葉はとぎれてしまいました。
まだまだ夏を引きずる寝子島ですけれど、この日はいくらか過ごしやすい気温で、頭がゆだるようなこの熱が自身の内から沸き上がるものだと、ふたりはお互い、気づかないまま。
「あ。少し休憩していきませんか?」
綾花が指さしたのは、いくつかの古書店に囲まれるようにして営業している、こじゃれたブックカフェです。
「ここ、私のよくいくお店なんです。チーズケーキが美味しいんですよ」
「いいね。寄っていこうか」
かららんと鳴る鈴の音とともに入店。店内には耳ざわりのよいBGMが満たされて、静謐というほどに徹底されてはおらず、雑多というほどがちゃがちゃしていなくて、入りやすく過ごしやすい、綾花のお気に入りのお店です。
綾花オススメのチーズケーキとアイスティーをそろって注文したところで、さて、と珪先生はあらたまって言いました。
「今日は僕の趣味に付き合ってくれてありがとう。そのお礼というほどではないけど、はい、これ」
「えっ。これは……」
「プレゼント」
綺麗なリボンのラッピングこそないものの、珪先生は一冊の本を、綾花へ贈ってくれました。
「オークションで、綾辻さんが席を外してる間にね。これは綾辻さんが好きそうだと思って、落札しておいたんだよ」
絵本です。表紙は油彩で描かれた、リアルタッチのにゃんこ。誘われるようにぱらりとページをめくると、
「わああ……!」
だらーんと足をひろげて、毛づくろいに夢中にゃんこ。
眠くてうとうと、でれーんと寝ころびにゃんこ。
狭いところに頭を突っ込んだらハマっちゃって、出れなくてお尻ふりふりにゃんこ。
丸まって喉をごろごろ、おめめとろ~んにゃんこ。
などなど、猫の習性や行動をリアルに描きながらも愛嬌たっぷり! めちゃんこラブリー! な、イラスト集のような絵本でした。
「か、かわいいい……! えっ、もらってもいいんですか!?」
「うん。本はやっぱり、その本を一番楽しめる人の手元にあるべきだと思うから」
「ありがとうございます! いっぱい楽しんじゃいます!」
そんな珪先生の、心づくし。心づかい。綾花は絵本を大切に、きゅうっと胸に抱き寄せました。
と、そこで、いかにも美味しいコーヒーや紅茶を淹れてくれそうな、優しげなスタッフのおじさんがケーキを届けてくれたので、素敵な本とともにしばしのティータイムです。
「あ、本当だね。このチーズケーキは絶品だ」
「うんうん。この前雑誌でも紹介されてたくらいですから」
「それに蔵書のラインナップもいいよね、こだわりが感じられて」
「歴史小説が多いですよね。オーナーさんの趣味みたいです」
「なるほど。うん、いいお店を教えてくれてありがとう、綾辻さん」
ふわりと微笑んでそう言った珪先生のお顔へ、大きな窓の外、青々しく繁る樹葉から差しこむ真昼の木漏れ日。
なんだか神々しくも見えてしまって、綾花はまぶしくて、そっと目を細めます。
なんて、しあわせ。
おたがい読書に没頭して、言葉少なく。時おりふた言三言がかわされるくらい。沈黙にも気まずい空気はありません。ただひたすらにゆったりとして、まったりと心地よくて、今日は西日も穏やかでぽかぽか、あたたかくて。
ケーキはぺろりと食べてしまい、けれどお腹がすこうし物足りなかったので、アイスティーのおかわりと、ふわふわのパンケーキを一皿注文して、ふたりでシェアして食べました。
「先生、先生。これ」
「お。これはかわいいね」
「ね」
猫の絵本にひときわ愛らしいにゃんこを見つけては、先生にもおすそわけ。珪先生も、落札したいくつかの本をふむっと吟味しては、
「これは綾辻さんも好きそうかも」
「ほんとですか? じゃあ、読み終わったら貸してくださいね」
「ん。もちろん」
なんてやりとりがちょこちょこと挟まる以外には、静かな時の流れに身を委ねて、ただお気に入りの本を耽読する喜びと、彼がそばにいる、このどきどきを堪能します。
「珪先生の好きな食べ物や飲み物って、なんですか?」
「なんだい? 唐突だね……って、ああ、この本かい?」
「料理の本ですよね? 興味あるのかなって」
「表紙が美味しそうで、つい手にとってしまって。そうだなあ……甘いものはけっこう好きかな。ここのケーキも気にいったよ。飲み物は、ワインをよく飲むかな」
「ふむふむ。嫌いな物とかはないんですか?」
「これといってないね。けっこう、なんでも美味しくいただけるタイプ」
「へええ……!」
ゆったりとして。まったりとして。しあわせで。
ずっとこの時が続けばいいのに。そう思って、ほんわかほわわん、すっかり和んで。
「あ、そういえば。珪先生」
「うん?」
だから、すこうし。気がゆるんでいたことは、否めません。
「なにか、探してる本があるんですよね? さっきつるぎさんと話してたのが聞こえて」
ぴくり。珪先生のページを繰る指先が動きを止めたことに、綾花は気付くことができませんでした。
「今日のオーディションでは、出品はされなかったんですね。貴重な本なのかな? なんていう本ですか? 良かったら、私も探すのを手伝って……」
気が付くと。
そこには、ひどく感情の薄い面持ちを浮かべた珪先生が物言わず、たたずんでいました。先ほどまで、本の一冊一冊に一喜一憂していた愛書家の顔などまったくなりをひそめて、静かで。平らかで。
開いた本はそのままに、カップのふちをじっと見つめて、小さく眉を寄せて。唇をきゅ、と結んで。
「珪……先生?」
唐突に思い起こされたのは、先につるぎへ尋ねた時の、彼について言い表した言葉。
はじめて見る表情、してたな。
それ以来、その手の話はしたことない。
どくん、と綾花の心が大きく跳ねました。急激に胸中へ満ちてゆく暗雲。冷たい恐れ。彼の目を、まともに覗くことができなくなりました。そこにどんな色が映っているか、見るのが怖かったので。
私はもしかして、踏み込んではいけないところへ踏み込んでしまったのだろうか。彼のもっとも繊細な部分を無遠慮にも、突いてしまったのだろうか。
それがために、これまで大切にあたためてきたこの想いも、きっと彼の中にだって少しずつ育まれてきただろうあたたかな感情も、縮まりつつあった距離感も、絆も、なにもかも私は、台無しにしてしまったのだろうか。もろく壊れてしまったのだろうか。
足元から全て崩れ落ち、朽ちていくかのように。
「あ、の。せん、せい……」
「……ん」
そんな錯覚が、綾花を苛んで。
「あ、ごめん、ちょっと……ぼうっとしてしまって」
「大丈夫、ですか?」
「うん。なんてことはないよ。大丈夫、大丈夫」
直後に彼の浮かべた、少しばかりはかなげな……そしてまぎれもなくいつもの彼のものでもある、困ったような苦笑いからは少なくとも、負の感情は伝わりません。
けれど。
いいえ、だからこそ。
綾花は、気づいてしまいました。
(……そっか。そうなんだ)
かちりと、すとんと、パズルがはまりこむような感覚。離れ離れだった点と点がようやくにして、かぼそい線で繋がれたような感覚。
直感と確信が、その瞬間、綾花の内を駆けめぐりました。
雨の日。うつむいていた彼。
あの顔。今までに見たことのないような、明るく真っすぐで優しい彼のおよそ浮かべるとは思えない、なにかを抱えているかのような。
彼の思い出の中、雨の日にきっと、なにかがあったのでしょう。
誰にも好意を抱かれながら、誰かと付き合うことを……そう。恋愛をためらうようになるきっかけが、きっと、なにかが。
そうして彼が内に秘めた真実は、もしかしたら、彼自身の口から語られることはないのかもしれないけれど。
彼の探しているという、一冊の本。オークションや、OLDLYNXのつるぎやその父親も通じて探し続けているのだという、その本の中にこそ。
ページの一枚、一枚にこそ、きっと答えが綴られているのでしょう。
「…………『HALO』」
締め付けられるような感覚を覚えながら、優しい声色に顔を上げると、そこにあるのはやっぱりいつもと変わらない、珪先生の微笑み。
「え……」
「ずっと、探していてね。どうやら自費出版のような形で、ほんの少部数しか発刊されていないみたいで。なかなか見つからないんだよ、これが」
先ほど彼の表情に降りていた陰は、ほとんど、見えません。きっと誰かが見ても、気が付かないでしょう。
綾花にだけはちょっぴり、伝わりましたけれど。
「『HALO ~氷解無垢~』。そういうタイトル」
「ヘイロー……」
「天使の輪って意味らしいね」
いまだ戸惑いの中にある綾花をよそに、彼は静かに落ち着いて、
「綾辻さんも探してくれるのなら、助かるよ。ありがとう。よろしくね」
その日はもう、ぐるぐる。頭の中でいろんな感情がめぐりにめぐって、綾花はどきどき、脈打つ胸を止めることができませんでした。
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グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
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定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年08月02日
参加申し込みの期限
2022年08月09日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年08月09日 11時00分
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