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しらないアナタのホントのところ
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【私だけの景色】
本は驚くほどたくさんのことを、読み手へと伝えてくれます。文字は情報を、行間は情緒を。物語は実に多くの感情やそれにまつわる機微を、
綾辻 綾花
の中へ育んでくれました。本は人生を豊かに彩る価値観や正しい行動原理を、すくすくと健やかに育て、複雑に織り重ねて、綾花の心の奥へ奥へ、深く深くへと、まるで渇いた大地を大海原に変えるかのように潤し、広げてくれました。
けれど……多くの本を読みあさり、物語の主人公の気持ちへいくら思いを馳せても、多くの素敵な結末や皮肉な顛末を見届けても、分からないことはたくさんあります。
例えば、そう。恋愛感情についてとか。
恋愛小説だって、たくさん読みました。共感ありまくりな十代の少年少女の青い恋物語も、人生の酸いも甘いもかみ分けたオトナな男女の熟達した愛の遍歴も、綾花の内に、形はどうあれ息づいています。こう見えてイロイロ、知ってるんです。
ただ……自分でもいささか、自覚するところではあるのですけれど。ちょっと子どもっぽいところがあるのかも? と、綾花は折にふれて感じることがありました。
本は、読書という、言ってみればその道楽を真に愛する者にこそ多くを伝え、文字の並びひとつひとつに託された書き手の想い、本当の姿をつまびらかにしてくれるもの。拙く盲目で心開かぬ読み手が真理へ到達することは、決してないのです。
どれだけ物語を読みこもうと、そこに想像を巡らせようと、本たちがくれた素敵な知識が結晶として結実するにはきっと、綾花自身の体験や思い出が必要なのでしょう。綾花は人生を十八年と少し体験し、積み重ねてきましたけれど、まだまだきっと、足りないのでしょう。
物事の深くを理解するには至らない、つまるところごくありふれた高校生である、等身大の自分を意識する時。綾花の胸へ、時おりながら、去来する問いがありました。
私は生徒で、あの人は教師で。
あの人に恋をして、いいのかな?
と。
「『ドグニャ・マグニャ』って、読むと精神に異常をきたす、って言われてますよね。なんだか怖くて、まだ読んだことないんです。珪先生は読みました?」
「学生時代に一度挑戦してみたけど、やっぱり難解でね。今でもきちんと理解できてるとは……。興味があるなら、読んでみる? 貸そうか?」
「う、う~ん。迷っちゃいますね」
新しい読み手へもらわれていく古書を見送り、綾花と
早川 珪
は顔を見あわせてくすりと笑います。場に満ちる熱気に水を差してしまわないよう、ちょっぴり小声で、控え目に。
「はは。読みたくなったらいつでも言って」
「はいっ」
古書オークション! 珪先生のプライベートをあれこれと想像してはおりましたけれど、これほどピッタシな趣味がほかにあったでしょうか。
会場となる古書店『OLD LYNX』の地下室に詰めかける面々はおおむね年配の男女で、珪先生や綾花のような若い客は多くありません。にもかかわらず、
「はい続いては、外島がも著の奇書『ナダラの猪』。がもお得意の独自のユーモアとアナキズムがいかんなく発揮された物語に呑まれることうけあい、もちろん美品です。こちらは1800円からまいりましょう。はい山下のダンナが1900円、あちらのご婦人が2000円」
「2200円!」
「はい2200円いただきました、ほかにはいかが?」
「2400円で」
「2400円いただきました、ほかにはないか? ないか、ではこれにて落札。境さん、今日は遠いとこからありがとね、たのしんでね。さて次は猫学館発行の『世界の絵本』オールカラー版・30冊セットの完品です。持ち主の思い出が詰まった児童書ながら、この秋から息子夫婦と同居を始めたそうでね。置き場所に困って、大切にしてくれる誰かに譲りたいってことで、あたしが引き取らせてもらいました。コレクションとしても逸品、子どもさんへの読み聞かせにもいいよね、さあこちらはセットで10000円からの入札をお願いします」
「12000円!」
「13000円!」
「はいあちらのいぶし銀な旦那さんが14000円、ほかにないか、おっと15000、16000円」
……とまあ、はじめて目にする綾花などはすっかり、圧倒されておりますけれど。
途切れることなく場が動き、次々に商品があらわれてはあっという間に値段がつり上げられ、落札されていきます。
カウンターで木槌をかつんとやっている、半ば禿げ上がった頭の落ち着いた男の人がOLD LYNXの元店主で、今はこのオークションの運営に専念しているのだそうですけれど、その仕切りがまたなんとも絶妙。ついつい聞き入ってしまうような心地良い声とテンポに乗せて、オークションはさくさく進んでゆくのでした。
「す……すごいですね。みんな、すごく本が好きなんですね。この熱気……」
「そうさ。本好きの本好きによる、本好きのためのオークションってわけ」
人から人へと流れていく古書たちは、なにげなくありふれた品もあれば、目を見張るような高額の稀少な品もあり。綾花も知っている名著から聞いたこともないマニアックな一品まで、実にさまざまです。眺めているだけで、ちっとも飽きません。
「珪先生は、なにか落札しないんですか?」
「ん? そうだね。そろそろなにか、手頃でいい品が……お」
どうやら彼が目をつけたのは、月 新二のショートショート集の一冊です。
と、珪先生は声を上げて入札するわけではなく、綾花へひとつ目くばせを残してから、ぴっ。腕を組んだまま、指を一本立てました。
「オークションといえば、自分の声で入札したい人、代理人を立てて代わりに入札させる人。事前に伝えたサインによって入札の意思を伝える人……と、いろいろでね。僕のサインはこれ」
「おお~……!」
クールにぴっ、と指を立てる珪先生の仕草に、綾花はきゅんっ。なんだか今日は、一際彼がオトナに見えてしまって、どきどきです。
「すごいです。かっこいいです、珪先生」
「あはは。そんな大したことじゃないよ。そうだ、綾辻さんもなにか入札してみるかい?」
オークションは誰にでも、もちろん綾花にだって開かれています。
「ん~。そうですね」
「難しくはないよ。気軽に参加していいんだから」
読んでみたかったあの本に、貴重な初版本。サイン本!
そんなものに、ぴっ! として、参加してみたくはありますけれど。
「今日は、見てるだけで。雰囲気を楽しみたいんです」
「そう。それもいいよね。分かるよ」
と言って珪先生は、ぴっ!
本当は少し、やってみたくはありました。けれどなんだか、今は、胸がいっぱいになってしまったので。
大好きな古書のかおりに包まれながら、だってかたわらを振りかえれば、ほら。大好きな人の、こんなにも素敵な横顔をじっくりとっぷり、堪能できましたから。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSS(500)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年08月02日
参加申し込みの期限
2022年08月09日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年08月09日 11時00分
参加キャラクター一覧
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