食欲の秋！　寝子島スイーツフェスタ☆｜リアクション

食欲の秋！　寝子島スイーツフェスタ☆

☆あなたのすきを知りたくて

　寝子高２年の稲積柚春は、いつものようにカプギアのворと一緒に散歩を楽しんでいました。
「あれ、なんだろう？　幟が立ってるね」
　イベントに気づいた柚春は、そちらへ足を伸ばしてみることにしました。

「スイーツフェスタ？　ウォルターさんってイギリス出身だよね……故郷の味はあるかな……同じ食べ物の話は盛り上がるよね」
　大好きなウォルター・B先生の顔が浮かび、柚春は考えます。
（実は日本風にアレンジされているとか知る機会でもあるし、ウォルターさんが好きな懐かしい味に興味あるな）

　柚春は昨年秋から一人暮らしを始めて、カフェメニューを作ったりする料理の腕前になりました。
　ウォルター先生に手作り料理やお菓子を食べてもらったこともあります。
「そうと決まれば、わかりやすいイギリスのお菓子を買ってみよう。国旗が書いてたりするかな？」
　
　入り口でもらったマップで『世界のお菓子』というコーナーを見つけました。
　さっそく向かい、イギリスのお菓子を探します。
「あった！」
　イギリス国旗の書かれたコーナーに、さまざまなお菓子がありました。
　切り口がピンクとイエローの四角が2×2に並んだチェック模様になったケーキに、柚春は頬を緩めます。
「バッテンバーグケーキ……可愛いケーキもあるんだね？」
　それからフルーツケーキの説明書を読みます。
(英国では長期保存のためアルコール多め……ワットが喜びそう)
「試食なさいますか？」
　勧められて、茶色いソースのようなものがかかったスティッキー・トフィー・プティングを食べてみました。
「……ねっとりして甘い」
　残念ながら柚春には少し甘すぎました。
「レモン・ドリズル・ケーキ？」
　何の変哲もないパウンドケーキにアイシングが施されているように見えますが、レモンはウォルター先生の好物のはずです。
「どんな味なんだろう？　参考にしてみようかな）
　試しに買ってみよう、とレジへ向かった時。

「稲積？　奇遇だね」
　降ってきた声は、間違えようもなく想い人のものでした。
「ウォルターさん！　こんなところで会うえるなんて！」
　心臓の鼓動が一気に高鳴るのを感じながら、柚春は言いました。
「あの……飲食スペースかどこか公園で一緒に食べませんか？　ゆっくりお喋りしながら」
　わずかな時間だったはずなのに、ドキドキしながら答えを待っている間の長かったこと。
　ウォルター先生は少し考えてから、微笑みました。
「そうさせてもらおうかな。イギリスのお菓子を見たら断れないよねぇ」

　やった！　と心の中でガッツポーズをしながら柚春は思います。
（懐かしい話が聞けたりするかな……悲しい思い出だけじゃなかったよね？）
　隣を歩くウォルター先生の綺麗な横顔を眺めながら。
『あなたのすきをおしえて？』
　心の中で、そうつぶやくのでした。

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