さよならサマー、またきてオータム｜リアクション

さよならサマー、またきてオータム

「さー、みんなー！　一夏お世話になったプールを、掃除しちゃうわよー！」
　寝子島高校のプールで、握り拳を振り上げるのは、相原まゆ先生だ。麦わら帽子にＴシャツ、ハーフパンツ姿である。
「せんせー！　なんで水着じゃないんですかー！？」
「大人のミリョクー、見たかったなー！」
「水着は着てるわよー？　でもあたし、大人だからぁ、日焼けしちゃうとお肌にダメージ大なのよー。だから、対策してるの」
　ぶーぶーとむくれる男子達をうまく宥めるまゆ先生の号令で、水泳部の部員たちによるプール掃除が始まった。
　水上桜は競泳水着の上にＴシャツを着て、水を抜かれたプールで目立つゴミを拾う。
「誰よ、ピアスとか落としてるの」
「うわ、よく残ってたね」
　初夏にするプール使用前の掃除とは違い、あまり激しく汚れてはいない。それでも仲間達と結構なゴミを回収した。
「皆、水分補給はしたかな？　次はブラシを持ってね。あたし達がホースで水まくから、汚れを擦ってほしいの。頭から水かぶりたい人には、かけてあげるからねー」
　小休止の後、まゆ先生ともう一人の部員がホース担当。桜たちはデッキブラシを持って、汚れに目を光らせる。
「せんせー、ここ、お願いしまーす」
「はいよー」
　桜はブラシで磨いたところを、先生に頼んで水をかけてもらう。元の水色が蘇るのを見て、ほっと一息。
「プールとはいえ、お日様が照りつける中で動き続けるのってしんどいねぇ」
「そうだねぇ。でも桜ちゃん、何だか楽しそうだよ」
「えへへ、分かる？　だんだん綺麗になっていくのが嬉しくて」
「ま、確かに。もうちょっと頑張ろうかなって気にはなるよね」
　ふふっ、と友達と笑い合う。
　周りを見回せば、プール内壁水色の中で、男子たちはふざけあってブラシを使ったホッケーごっこをしている。
「食らえっ！　俺のスーパーショットを！」
「フハハ、返り討ちにしてくれるわ！」
「こら！　そこ、遊ばないで掃除するの！」
　桜が注意すると、まゆ先生がホースで援護射撃してくれたので、手を振ってお礼を言う。

　――やがて磨き掃除も終わり、最後は全てをホースで洗い流す段となった。
　まゆ先生からホースを受け取り、洗い終えたプールにじゃんじゃん流してゆく。
　皮をはぐように汚れが落ちていくのはとても爽快だ。
「マジで最高っ！」
　桜が振り回すホースの下で、水着になってはしゃいでいる部員もいる。
　最後はブラシやホースを片付け、まゆ先生の前に整列する。
「みんな、暑い中お疲れ様でした。これにてプール掃除終了。撤収です！」
「お疲れ様でしたーっ！」
　桜たち部員一同は、深々と礼をした。

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