けもの島の青空教室｜リアクション

けもの島の青空教室

●皆で紡ぐ物語

　涼しい部屋で読書をしていた綾辻綾花は、いつのまにか見知らぬ島の砂浜にいた。
　頭には黒ネコの耳、腰には黒ネコシッポという出で立ちで。
　神魂の影響で漂流してしまったのかと辺りを見渡すと、側に早川珪先生が倒れていた。
「珪先生、大丈夫ですか？」
　アロハシャツにハーフパンツ。綾花と同じネコ耳、ネコシッポという姿の早川先生の体を揺する。
　意識を取り戻した早川先生は、体を起こして背伸びを。
「よかったです」
　自分同様いつの間にか漂着していたことに驚いたが、意識が戻ったので一安心。
「綾辻さん、どうしてそんな格好に？　それにここは……」
　寝子高にいたはずなのに、いつの間にか見知らぬ場所に来てしまったことが不思議で仕方がない様子。
「どこだかわかりませんが、私達はこの島に漂流したようです」
　不思議なこともあるもんだと言う早川先生だったが、漂流したという事実は理解したようだ。

　これからどうしようと考える二人に、綾花と同じようにネコ耳ネコシッポといった子どもが駆け寄って来た。
「せんせい、みつけた～！」
　駆け寄るなり、猫の子どもは無邪気に抱き着く。
　それに続き、他のけものの子ども達も抱き着いたり、腕を引っ張ったり。
「この子達、綾辻さんのことを先生だと思っているようだね」
　早川先生にそう言われ、綾花は少し嬉しい気分に。
　何らかの理由でこの島に漂流してしまったのであれば、いつか、救助が来るはず。
　その日まで、子ども達に何かを教えることは何かしらの良い経験になるだろう。
　珪先生が手伝ってくれるなら、と綾花は先生として、その日まで子ども達に何かを教えることにした。

　綾花が行う授業は、子ども達に好きな絵を描いてもらい、その絵から物語を作っていくというもの。
　子ども達だけでなく、何故か一緒についてきてしまった子猫なテオも一緒に。
「テオちゃんも絵を描いてくださいね」
「俺もか？　子猫扱いするんじゃねえって言っただろう」
　不貞寝しようとしたが「おえかきしよう！」と子ども達に邪魔された。
「物語は先生に任せてください！」
　本好きが二人いるので想像力はお手の物。
　できた！　と犬の子どもが得意げに描いた絵を見せた。
　クレヨンらしきもので描かれた絵は、花畑で蝶を追いかける犬の子ども。
　その絵を見て、綾花は思いついたお話を語る。
「綺麗な花を見ながらちょっと休んでいきましょう。蝶たちも歓迎してくれてます」
　かけた～！　と雪ヒョウの子どもは満天の星空の絵を見せる。
「満天の星空の下で寝ころんでみよう。あっ！　流れ星がきらり。お願い事をしてみようかな。みんなはどんな願い事をするのかな？」
　それを聞いた子ども達は、各々のお願い事を言い始めた。
　どれも子どもらしい内容なので、授業を見ていた早川先生は微笑ましい気分になった。

「こういう物語はどうでしょう？」
　皆で描いた絵を元に、綾花は子ども達が寝子島に旅をしにいくお話を語る。
　子ども達だけでなく、綾花が描いた渾身の子猫テオも一緒だ。
　寝子島の旅はバトルからの友情あり、恋愛あり。時にはちょっとしたトラブルあり。
　エンディングは、やっぱりハッピーエンドがいい。絵の中からどれにしようかな？　と考える。
　その中には早川先生が描いた絵もあった。
（珪先生の描かれる絵って初めて見る気がします）
　手にした紙に書かれていたのは、けもの化した綾花と自分を描いた早川先生の絵。
「私はにゃんこのイラストを日常的に描いてるので得意です！　みんな、とっても上手に描けていますね」
　想像力豊かな子どもの絵は、いろいろな物語を掻き立てる良い素材となった。
　テオや子ども達にも考えてもらいつつ、寝子島の旅の物語を完成させた。
（本当に先生になった気分です。楽しいですね！）
　教えるだけでなく、教わることもあったのでとても良い経験となった。

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