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思ひ出語り、恋語り
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ソーサを置くとともに文也は言った。やや芝居がかった口調で。
「
……しかし君、恋は罪悪ですよ。解(わか)っていますか
」
どうにも唐突な言葉に聞こえるが、七瀬はすぐに理解した。
「『こころ』ですか」
「ご名答。さすがだね」
「さっきまで読んでいたものですから」
「あのくだりが好きでね」
文也は楽しげだ。七瀬の横に積まれた書籍、夏目漱石の『こころ』にチラリとまなざしを向けて、
「七瀬くんって『こころ』に登場する『私』のようだね」
謎かけのように言うのである。
「先生に執着してるところとか、似てない?」
七瀬は是とも否ともこたえず、まず珈琲に手を伸ばした。二杯目は前より量は少なく、けれどもざらりと荒く、濃い仕上がりだ。理想的な二杯目だった。七瀬は何気なく本に視線を移した。薄型の文庫本ではなく、オレンジ色の表紙をした袖珍本(しゅうちんぼん)だ。いわゆるハードカバー、厚紙の箱に入れられており、帯もかけられている。タイトルが『こころ』ではなく『こゝろ』なのも趣がある。
七瀬が口をひらくまで何秒も必要なかった。すぐに文也の言わんとしているところがわかったような気がする。
「あ……そういえば、彼が『先生』に『信用するたった一人になれるか。なってくれるか』みたいな台詞を言われる場面がありましたね」
「私は過去の因果で、人を疑(うたぐ)りつけている。だから実はあなたも疑っている。しかしどうもあなただけは疑りたくない。あなたは疑るにはあまりに単純すぎるようだ。私は死ぬ前にたった一人で好(い)いから、他(ひと)を信用して死にたいと思っている。あなたはそのたった一人になれますか。なってくれますか。あなたははらの底から真面目ですか」
※夏目漱石『こころ』より引用。()内ふりがなは引用者
「そのやりとりも好きだね。うろおぼえの上に私見だけど、『こころ』という作品の最重要シーンだと思うよ」
「夏目漱石は『先生』の口を借りて、自身の考えを吐露したのでしょうか」
「かもしれないし、ちがうかもしれないね。……うん、ごめん。わからないというのが偽らざるところだよ。わたしは、それほどいい漱石の読み手ではないから」
でも、と一度言葉を切って、文也は珈琲を取った。わずかに視線を落としてつづける。
「そんな言葉を伝えられる相手をもった『先生』というひとは、幸せだったと思うんだ。トータルで見たらどうなのかはわからないけど、すくなくともその場面での彼はね。考えてもごらんよ、これだけの問いをぶつけられる相手のいる人間が、この世にどれだけいると思う? この当時でも、現代でも」
七瀬は黙って文也を見た。
文也も口を閉ざし、七瀬の言葉を待った。
「恋人になりたい、というような気持ちはやはりないのですが」
七瀬は話す。自身の心の戸を開けるように。
「……僕も『私』のようになりたいです。先生にとっての『たった一人』に」
それでいいと思う、と言うかわりに文也は茶菓子の小皿を盆に移した。
七瀬は珈琲の残りを一息で干す。
「ごちそうさまでした。そろそろおいとまします」
得たりとばかりに文也はカップを受け取り、これも盆に運んだのである。
「うん、話聞かせてくれてありがとう。楽しかったよ」
七瀬は席から立つ。積んだ数冊の本を手にしようとするが、
「いいってそのままで。置いといて。片付けはそれがしがやっておくから」
文也は両手をふって七瀬を制した。そうして柱時計に目を向ける。はじめて時刻に気がついたように言った。
「もう店じまいの時間だしね」
テーブルチャージなので勘定はもう済ませている。七瀬は帆布地のトートバッグをもちあげた。色はベージュで飾り気はないが、京都の名のあるメーカー製、大きなボタンがチャーミングだ。肩にかける。
「じゃあ今日は――」
語尾がフェードアウトした。七瀬は足元に視線を落としている。まるで床にぽっかりと大きな穴があいているかのように。
立ち去りがたいように感じていたのだ。もう一言二言、言葉を交わしたいという名残があった。
文也も同じ気持ちだった。けれど文也は同時に、ここで切り上げたほうがいいようにも感じていた。
いま、七瀬くんに必要なのは気持ちの整理をする時間のはずだ。これ以上俺がかき回すのはよくないよね。
だから文也はあえて、振り切るようにして別れを告げたのである。
「またね」
台拭きをとってテーブルを拭きはじめる。木目に沿って、丁寧に。
七瀬は継ぐ句を見いだせず、また来ますと短く告げて、古書喫茶『思ひ出』を後にした。
ドアに設置されたカウベルが、カランと音を立てた。
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担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSSS(600)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
定員
2人
参加キャラクター数
2人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年06月13日
参加申し込みの期限
2022年06月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年06月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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