故郷での夏休み　サードシーズン｜リアクション

故郷での夏休み　サードシーズン

〇沖縄
　
　真境名アリサは、今年も８月上旬の一週間、沖縄へ帰省することにした。
　水着ガールズバー「ジュエル」のキャスト兼副店長でもあるアリサは直前まで色々と忙しかった。
　やはり副店長が留守だと何かと不都合だということで、前回の経験を活かし店長にいろいろ頼まれてしまったのだ。
「やっと解放された……」
　だがその分、仕事の後の解放感は格別だ。

　全日空で那覇まで飛び、空港から30分、バスに揺られて。
　向かった先に彼女の実家がある。
「ただいまー」
「おかえり」
　母と祖父母が笑顔で出迎えてくれた。
　去年帰省したときは父親が仕事で沖縄に来ていたけれど、今年はさすがにそんなことはなかった。
　父はシアトルにある航空機メーカーで、アビオニクス（航空機に搭載され飛行のために使用される電子機器だそうだ）の開発の仕事をしているのだ。

　少し休んだ後、アリサは道着に着替え実家の裏手にある道場に向かった。
「お願いします」
　沖縄空手の師範である祖父に稽古をつけてもらう。
　まだまだ祖父は元気で、アリサは歯が立たなかった。
　合間を見て自分なりに稽古はしているが、やはり道場で稽古するのは身が引き締まる。
「久しぶりにしては上出来さあ、稽古してるのがわかったさ」
　祖父の島言葉が耳に心地よい。

　道場での稽古を終えたアリサは、シャワーで汗を流した後、地元の友達のところへ顔を出した。
「久しぶり～、元気だった？　卒業したんだよね？」
　前回の帰省から１年経って、大学に行っていた子は今年卒業して社会人一年生。
　一方、アリサのように高校を出て働きだした子はもう社会人４年目。
　中にはもう結婚して子供もいる子もいる。
「アリサはいい人いないわけ？」
　そんな好奇心あふれる目に苦笑しつつ。
「そういや、母があたしを産んだのは22歳だったよなあ」
　なんとはなしに自分の将来のこととか考えたりする。
　刹那的に生きているように見えるアリサだが、実は結構人生観はシビアだったりする。
（まあ、ブラック企業勤務経験でこうなったわけだけど。それにしても）
　お客の目を気にしない自由な飲み会を楽しみながら。

（故郷での時間の経ち方はゆっくりしてるなあ）
　何とも言えない幸せを感じ、人生に悩むのはまたにしようと思うのだった。

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