悩んで、落ちて、襲われちゃう？　ドッキドキの密室15分！｜リアクション

悩んで、落ちて、襲われちゃう？　ドッキドキの密室15分！

　夏も終わりに近づいた金曜日の夜、特別な夜にしたい恋人達はきっと多く居たはずなのに――なんの巡り合わせか、豪華な観覧車に通常価格で乗れますよと二人に声がかかった。
　町長に付き添って豪華な車に乗ることもある三折部朝衣は、たいして期待せず撫でたシートの手触りが良いことに驚き、シーサイドタウンにある洋食レストランのシェフである住沢遥人は、壁沿いに備え付けられた小さなガラステーブルのサービスドリンクに目を見はる。
　青リンゴやピンクグレープフルーツのカラフルシロップに、凍らせた一口大のフルーツ。そこへ日本酒とソーダを注いでアイスクリームを添えた、ちょっぴり大人な味わいのクリームソーダ。
　VIPなとはいえ観覧車、されど豪華な特別ゴンドラと売り文句にするだけのことはある。
　静かなジャズを聴きながら見る夜景は指輪が飛び出してきてもおかしくないくらいだけれど、可愛らしいドリンクが予約をしていなかったことを物語っていて、かしこまりすぎない空気が程よかった。
「四月から業務が変わったって言ってたけど、慣れた？」
「町長より先に出勤して後に退勤するのが当たり前だけど……」
　忙しいか、充実しているか。その二択で迫られたら答えに詰まるけれど、ようやっと今の持ち場での業務にも慣れてきたところだ。きっと秋には、余裕が感じられるだろうと肌感覚で思っている。
　そんなお互いの近況報告をしながらドリンクに口をつけ、アルコールと恋人の優しい顔が気持ちをほぐしてくれるから、ちょっぴり嘆いてみたりもする。
「サーフィンができない間に、夏が終わっちゃうなんて……」
「盆を過ぎれば海水浴の人出も減るし、逆に楽しみやすくなってるんじゃないか？」
「だといいけど……」
　二人の共通の趣味であるサーフィンは、必ず楽しみたい。
　この休みは、今度こそそれが叶いそうで待ち遠しかった。
「海に出るつもりなら、飲み直しは控えないといけないけどね」
　ぐんと高度をあげた気がした観覧車は、頂点に近づくほどゆっくり進む気がする。
　グラスを置いて、肩にもたれるように寄り添って。お互いに今か今かと胸を高鳴らせて。
　星とお月さまが優しく囃し立てている気さえするから、待ちきれないと思って唇を合わせた。
　そっと唇を離したとき、すでにゴンドラは降下していたので苦笑する。
　お互いに夢中だったから気がつかなかったけれど、きっと唇を重ねたのは頂点だったのだろう。

　そのまま遥人の部屋で甘い夜を過ごそうと二人で場所を移して。
　すぐになだれ込むかとも思ったけれど、遥人は律儀に飲み物を用意すると言ってカクテルを作り始めた。
「本当は、シェイカーで作るから口当たりは変わるけど」
　ライトラムをベースにコアントローを少し、それからアルコールが強くなりすぎないように、けれど風味を殺しすぎないようにレモンジュースを気持ち多めに。ボールでしっかりかき混ぜて、たっぷり氷の入れたグラスに注げば……なんというカクテルだっただろう？
「ありものだけど、今の気持ち」
「なに？　そんなに意味深な物？」
「まあちゃんと……改めて言うけどさ」
　もう一つのグラスにも注いで乾杯をして、甘い熱い夜を過ごして。
　目覚めた朝衣は2度驚くことになる。
　遥人から教えられたのは、あのカクテルが『永遠にあなたのもの』という意味をもつこと。
　そして、同棲をしないかという話が飛び出たこと。
　つまりこれは、プロポーズということだ。
　驚いて飛び起きそうになるのを、遥人が強く抱きしめて阻止する。
「……いいわよ、秋には少し仕事も落ち着くから」
　幸せいっぱいの笑みを浮かべた朝衣は、優しいキスを彼に贈った。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：浅野悠希
ファンレターはマスターページから！

みなさまご参加ありがとうございます、浅野です。

最近の観覧車って凄いですよね、乗ったことのあるゴンドラはありましたか？
私は某所の牢屋型が乗りたくて乗りたくて……あれもちょっと怖そうです。

15分が長いのか短いのかは、関係性にもよると思うのですけれど、なかなか二人っきりになれない人とご一緒できたり、いつもの愛しい人と過ごしたり、楽しく素敵なひとときのお手伝いが出来ていたら嬉しいです！

ご意見ご感想、もしくは「読んだよ！」の代わりにダイヤリーのページチェック入れて頂けると、めちゃくちゃ喜びます。
お時間ありましたら、よろしくお願いします～！

↑ページトップに戻る