夏の部活動！　運動部も文化部もね☆｜リアクション

夏の部活動！　運動部も文化部もね☆

●偶然の再会

　水上桜は水泳部の練習のために寝子島高校のプールにやってきた。
　彼女は普段は家庭科同好会を掛け持ちし、その上で生徒会の会計を務めている。しかしここ最近は水泳部のほうによく顔を出している。というのも今度、木天蓼工業高校の水泳部との練習試合があるからだ。
　しかし桜はその高校、通称マタ工と呼ばれるところについて思うところがあった。

（あのマタ工にも真面目に部活するような生徒がいたのか？）

　これは桜だけでなく、部員の皆も面食らっていた。だが顧問の相原まゆ先生によるとそれなりにいるらしい。疑問を抱きつつも更衣室で水着に着替える。天気も良く、泳ぐにはちょうどいい。

（あ。そういえば、いたな……）

　準備運動をしている時にふとサマーバレンタインのことを思い出した。そのときサプライズデートをした相手がマタ工の水泳部員だった。

（確か、滝沢匠だっけ）

　彼も自分自身をマジメなマタ工生と言っていたし、桜が想像するような『いかにも不良』という感じの子でもなかった。そのときは部活や趣味の話をしてそれなりに話が合ったし、楽しく過ごせた。でもそれ以上の発展はなく、その場で別れた。

（まあ、練習試合当日になれば分かるでしょ）

　桜は気を取り直して、プールに入って黙々と練習をこなした。

　そして練習試合当日。
　マタ工水泳部の面々との顔合わせ。その中に彼――匠の姿があった。彼は桜のことに気が付くと『おっ？』という表情になり気さくにほほ笑んできた。彼女も思わず会釈を返す。練習試合のほうは、意外にもマタ工水泳部は結構手ごわい相手だと分かった。特に匠はかなり実力のあるほうだった。

（マジメって自称してたのは本当だったのかも）

　男子の試合を眺めていると、自分の番がやってきた。
　桜は400メートルに参加。マタ工の女子部員も速く、結構苦戦した。しかしなんとか僅差で桜が勝つことができた。

（ふぅ、あぶなかった）

　他の選手たちの練習試合も全て終わった後、互いの水泳部員で簡素な交流会が行われた。桜と匠はなんとなくという感じで話をした。

「俺、結構速いだろ？」
「そうね」

　本当に他愛のない話を交流会の間続けていた。そして彼女は気づいてないが、恋心が芽生え始めていた。

このページにイラストを設定する