夏の部活動！　運動部も文化部もね☆｜リアクション

夏の部活動！　運動部も文化部もね☆

●バーを越えた先の景色

　椎井莉鳥は陸上部の選手として、インターハイの会場に来ていた。
　彼女自身は、県大会が高校最後の大会になると思っていた。しかしそこで予想外の新記録をたたき出し、インターハイ南関東ブロック予選への進出が決定。さらにその予選でも新記録を出すという大活躍があり、インターハイ出場を決めた。

（ここまで来るとは思わなかったけど、来たからにはやりきろう）

　莉鳥は心のざわつきを落ち着かせるように深呼吸をする。着替えを終えて会場に入ると、独特の熱気を強く感じた。その空気に呑まれないように、彼女は予選に臨む。そして予選１組で３位通過を果たすと、ひとまず安堵の息をつく。
　いざ競技が始まると、少しだけ気持ちも落ち着いてくる。決勝に進んだ彼女は他の予選組の様子を眺めた。予選で敗退する選手たちは、けっして記録が悪いわけではない。しかし全体のレベルが高いから、相対的に低くなってしまう。

（さすがインターハイ、ハイレベルな選手が次々と好記録をたたき出していく）

　各地の予選を勝ち抜いた者たちが集まっていることを彼女は改めて感じた。息を整えると、決勝の舞台に向かう。
　莉鳥は自分の番が来るまでの間、ひたすらウォーミングアップに徹する。他の高校の選手が続々と好記録を出していく中、淡々と自分のメニューをこなす。
　やがて莉鳥の番がきた。もう他の選手は全員競技を終えていて、彼女が飛ぶのを見つめている。莉鳥は静かにスタートラインについた。目を閉じて集中力を高めた後、そっと瞼を開き、前方のバーを見る。
　余計なものや音は一切彼女の感覚から消え去った。唯一あったのは目の前の道と、その先にあるバーだけだった。
　走り出してバーに向かって飛び込み、越えた先のマットに体ごと落ちる。徐々に周囲の歓声が聞こえてくると、彼女はマットから降りて結果を見た。
　記録は１ｍ７６ｃｍ。
　今大会で最も高い記録だが、莉鳥と同じ記録を出した選手が他に２人いる。

　走高跳は陸上競技の中でも最も同記録が発生しやすい種目。そのため、こういった場合には同記録になった高さでの試技数が少ない方が上位になる。協議の末、１位になったのは莉鳥だった。

「うそ……本当に、私？」

　理解が追い付かない莉鳥の耳に大きな歓声が聞こえてくる。すると競技が終わり、その結果が出たということを段々と理解する。

「ああ、本当に優勝したんだ」

　彼女はそっと呟いた。

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