夏なので、人魚はじめました～寝子島マリンパラダイス～｜リアクション

夏なので、人魚はじめました～寝子島マリンパラダイス～

　夜の水族館を五十嵐尚輝と一緒に楽しめたら。そう気軽な気持ちで御巫時子は声をかけ、彼からは都合がつけばと曖昧な返事だったけれど断られなかったことを幸せに思い。
　――当日。
　尚輝は『水族館に行く予定があるのなら』と同僚から巡回を押しつけられたと、面目なさそうに告げた。
「生徒達がご迷惑をおかけしていないか見回る程度ですが……誘っていただいたのに」
「そんな……私は尚輝先生とご一緒できたら、それだけで」
　同僚相手に、生徒と二人で行くなど言えはしまい。そんな中でも一緒にまわってくれることに感謝こそすれ、文句など一つも無かった。
「尚輝先生、今日はよろしくお願いします」
　一時でも過ごせることに感謝をこめて、時子は微笑んだ。

　職員の説明を受けながらバックヤードに入ると、ちょうど宿舎にペンギンが帰ってくる所だった。種類も数も多いため、グループに分けて少しずつ帰路へ着くらしい。
「帰ってきた子たちから、順に体調確認と夜食を少しだけあげます。お手伝いして頂ける方は前へどうぞ！」
「夜食ですか……つまり必要分は日中に摂取していると？」
「はい！　餌やりコーナーは水族館でも人気がありますから、その時の食事量に合わせて夜食で微調整する形ですね」
　時間や食事の概念が薄い尚輝にとっては、ペンギンとは繊細な生き物なのかと物珍しげに聞いている。その様子がなんだか可愛らしくて、時子はつい苦笑してしまった。
「尚輝先生も、お夜食を食べますか？」
「……野菜が入ってなかったら、考えます」
　そんな他愛ない話をしながら、餌やりをして今夜入れるバックヤードの見学も終わって、水族館も一回り。
　寝袋を受け取れば、好きな水槽の前で眠ることができるけれど……尚輝の隣で眠ることなどできるだろうかと、時子はすでに緊張気味だ。
「御巫さんは、もう眠られますか？　そろそろ、他の先生方にも挨拶をと思って……」
　そうだ、今日は学校行事では無いとは言え、巡回の先生もいる。隣り合って眠るなど、難しいのかもしれない。時子はぎゅうっと寝袋を抱きしめた。
「慣れてない環境で寝付けるか心配ですよね」
　そうではない、けれど。頷いてしまえば。
「……はい。寝付くまで傍に居て頂いてもいいでしょうか？」
「大丈夫ですよ、気にせず休んでくださいね」
　おやすみなさいという声を聞いて瞼を閉じる。
　緊張するけれど、こんな日が当たり前の毎日になればいいなと。
　明日は早起きしても尚輝の寝顔を見られないけれど、そのずっと先の未来ならば。
　今度こそ尚輝と隣り合って眠ることの出来る、少し未来の夢なら。
「尚輝さん……すきです」
　その夢では呼び名も変わって、何も気にすることなく思いを告げられる。
　幸せそうに微笑む時子を、尚輝は眠ったかなと確認するように頭を撫でた。

　だから、一人で目を覚ますのだと思っていた時子は、目の前に尚輝の寝顔があって吃驚した。
　メモ帳を握りしめ、ペンが転がっている。何か調べ物をしたまま眠ってしまったのだろうか？
「む……？」
「尚輝先生、おはようございます……」
　肌が綺麗だなぁとぼんやり尚輝を見つめていたら、彼は現在地を確認するように周囲を見やる。メモを捲り、何事か呟いて時子を見据えた。
「御巫さん昨夜……すきって仰ってて」
「……！？」
「サカタザメのことですかね、確かに美味しそうな魚です」
　見た目や調理法を調べたらしい尚輝とお弁当の献立を相談して苦笑する。
「今度のお弁当は、白身魚にしましょうか」
　気持ちが伝わらないのは残念なような、ホッとしたような……もどかしさはあるけれど。
　また、お泊まり出来る機会があればと願って、二人は朝食へ向かった。

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あとがき

担当マスター：浅野悠希
ファンレターはマスターページから！

みなさまご参加ありがとうございます、浅野です。
夜の水族館、いかがでしたでしょうか。

らっかみ！タイム満載なお話しも、リアルタイムをほんのり入れたシナリオもやりたくて詰め込んだシナリオでした。
少しでも、良いとこ取りで美味しく楽しんで頂けたら嬉しいです。

また、参考シナリオのご協力ありがとうございます～！
コピペでシナリオに飛べるようになったので、とても！　便利です！！
けれども、プレイヤーさん的にはどうなんでしょうか。
意外と字数食ったわ！　とか　めんどくせぇ！　とか、何かありましたらご一報ください。

ご意見ご感想、もしくは「読んだよ！」の代わりにダイヤリーのページチェック入れて頂けると、めちゃくちゃ喜びます。
お時間ありましたら、よろしくお願いします～！

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