モフれ！第３６回寝子ヶ浜ビーチ☆スターズコンテスト！｜リアクション

モフれ！第３６回寝子ヶ浜ビーチ☆スターズコンテスト！

●夏を楽しむにゃー

「あおい、行けるか？」
「う、うん。恥ずかしい、けど」
「それは俺もだ。でも２人なら……」
　ステージの袖で、八神修と七夜あおいがひそひそ言葉を交わしている。
　彼らはコンテスト最後の出場者だった。
　二人ともふんわりとした猫の全身パーカーを着ていて、身体のラインは隠れている。
　修はキジトラ柄。あおいは白猫で、瞳の青と白猫の恰好がよく似合う。
「実行委員に声を掛けられた時はコンテストに出る気なんてなかったんだけど、修くんがいいアイデアを出してくれたから……」
「この格好なら露出が少ないしだぶだぶしてるから恥かしさも少なめだろう？　練習したことは覚えてる？」
「う、うん。たぶん。頑張る」
「多少間違ったって大丈夫。フォローするし。俺が間違えたら、あおいもフォローしてもらえると助かる」
「もちろん」
「こういうのは楽しんだ方が良いんだにゃ……って語尾が変？　パフォーマンスの一環にゃ」
「ふふっ。いいとおもうにゃ。お芝居と思った方が恥ずかしくないにゃ」
「あおい」
「ん」
　まあるい肉球の手をぷにっと重ねて勇気交換の儀式。
「いざ出陣！」
　とステージに飛び出す。

「じゃじゃーんにゃー！　ねっこねこ星から来たにゃ」
　ステージの真ん中で修はおどけたように両手を広げる。今日はそういう設定だ。
「この島のビーチは最高にゃ」
「ネコガハマ、っていうにゃ？　ここは美味しいものいっぱい、楽しいこといっぱいにゃ」
「お友だちの猫さんやモフモフなケモノさんたちもいっぱいで嬉しいにゃ」
　あおいと修は互いのまわりをくるくる回って楽ししさを表現する。
　ぴょんとジャンプしたあおいを抱え上げ、アイスダンスのショーみたいにステージを大きく使って走りながらポーズを取ったと思ったら、あおいを下ろして、自分を跳び馬がわりにぴょんと跳んでもらったり。
　仲よしの猫が二匹で楽しくじゃれているようなパフォーマンスで会場を沸かせる。
「そうそう、家族も連れて来たんにゃ」
　修が小型のまんまるな猫ぬいぐるみ達を手品でどんどん出すので、観客席の人々は拍手喝采。
（だぶだぶパーカーは体のラインだけじゃなくて、これを隠すためでもあったんだよな）
　修が出したぬいぐるみをあおいが受け取って見せるペアプレイ。そのうちあおいの両腕の中はぬいぐるみでいっぱいになる。すべての猫家族たちを出し切ると、今度は修がそれを抱えて座る。
「皆もふもふにゃー」
　あおいは後ろから修のパーカーの耳をもふもふする。
　もふもふ家族の完成だ。
　拍手が沸き起こる。
　その最中、修とあおいは目配せをしあった。
　まだまだこれで終わりじゃあない。
「人間に化けるにゃ」
　ぬいぐるみの子猫たちを床に置くと、すっと立ったふたりはおもむろに全身猫のパーカーを脱いだ。
　きゃあと、両手で目を覆ってしまいそうになるが、ふたりともちゃんと水着だ！
　あおいは白のフレアビキニ。修はグリーン系の長めのサーフパンツ姿。
　全身パーカーを脱いでサッパリしても猫耳のヘアバンドはついていて、人間に化け切れていない猫という設定である。
「夏を楽しむにゃー」
「モフーにゃー」
　手首を丸めて猫っぽい決めポーズ。
　最後とあって、より一層大きな拍手と、モフメーターの奏でる音を聞きながら、ふたりの出番は終了した。

◇

「おつかれ、あおい」
「修君もね。どうだった？」
「良かったと思う。俺も恥ずかしかったけど、楽しかったよ。あおいは？」
「わたしも、修君につられて久々にはっちゃけちゃった。途中から恥ずかしいなんて忘れてたよ」
「可愛かったにゃ」
　なんて。修はおどけて猫ポーズ。
「にゃ」
　真似てあおいも猫ポーズで返してくれる。
　夏の空は青。白い入道雲。
　ふいに全身パーカーで火照った身体が、水しぶきを欲していることに気付く。
「時間あるし、一寸泳いでく？」
「いいね。そうしよ！」