出動！Cinnamon Cat's！｜リアクション

出動！Cinnamon Cat's！

　撮影終了後。
　まっさきに監督へと詰め寄っていたのは、エキストラとして参加していた夢乃だった。
「このドラマ、犯罪抑止キャンペーンと聞きましたけど、お色気シーンが多すぎるのでは？」
　最初はアイドル好きとしてアイドルが出演するドラマを間近で見られるチャンス！
　と意気込んで撮影参加を極めた夢乃だったが、妙なシチュエーションの数々に、疑問を抱かずにはいられなかった。
「なぜかやたらお色気シーンだけ尺が長いし、卑猥なセリフだけ繰り返し言わせたりしてますし……」
　もちろん、被害に遭ったのは夢乃自身もだった。
「そもそもこの最初のライブシーンで観客が逃げるところ、転んでパンチラって何ですか？　これ、ドラマに必要ですか？」
「そのへんは尺によっては削るので……」
「じゃあ最初から撮らなくてよいのでは？」
「そこはリアリティの追求というか、実際にああいうことになったらパンチラを厭わず逃げるのがリアルかなって……」
　結局その後もパンツ……じゃなかった、その可愛さが目に留まり、急遽後半の人質シーンでも夢乃は登場することとなる。そしてそこでも、酷い目に遭わされそうになるのである。
「こんなの約束が違います……」
　撮影後、監督への抗議もむなしく、「リアリティのためだから」で押し切られた夢乃はがっくりとうなだれながら家路につくのだった。
「アイドル界の闇を垣間見た思いですわ……」
　それでも、アイドルへの愛ゆえに、いい経験になったと後日彼女は語っていたそうだ。

「理緒ちゃん、だいぶノリノリで演じてたね……」
「あそこまでやっていいのかなーって感じだったけどね」
　撮影が終わって帰り道、紗月と理緒は話に花を咲かせながら歩いていた。
「紗月の演技、すごかったよ」
「恥ずかしかったけど、NG出して迷惑かけるわけにもいかないかなって思って」
　果たしてこのふたりが撮影中、どこまで演技でどこまで素だったのか。それは彼女たちのみが知ることである。

　なお本作品だが、上映初日に多数のクレームが入って公開早々上映中止となり、運良く見ることができた一部の人間の間でちょっとした伝説となったとかならなかったとか。

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