出動！Cinnamon Cat's！｜リアクション

出動！Cinnamon Cat's！

「そう……彼女たちも動き出したのね」
　望遠鏡でその様子を眺めながら、アヤ（青山絢）がぽつりと呟いた。
「今はまだ泳がせておきたいんだけど、彼女たちが動くならそうも言っていられないか」
　アヤがゆっくりと立ち上がった。すらっとした細身の体に、黒のボディスーツがぴったり張り付いている。
「今回もまた、面白いことになりそうね」
　ふふ、と小さく笑ってアヤはシャワールームへと向かった。
（ここで15分ほどシャワーを浴びるシーン）
　彼女が何者で、目的が何なのか。それが分かるのは、もう少し先のことになりそうである。

◇

　エリナたちCinnamon Cat'sの面々は、それぞれが自身の魅力をアピールできる衣装を着て、件の会社へと来訪していた。
「すみませんっ、新しくCMガールとしてのお話をいただいたので、打ち合わせに来ましたっ！」
　受付で、エリナが元気よく用件を告げる。なおエリナは、その見事なスタイルを存分に活かして水着を着ている。周囲の男性の視線がこちらに向いているのも織り込み済みだ。
「少々お待ちください」
　受付の女性が丁寧に応対する。普通水着の女性が会社に来たら慌てて止めそうなものだが、この会社ではこういうのが日常なのだろうか。だとしたら別な意味でもやばい会社だ。
「確認がとれました。ご案内致しますので、こちらへどうぞ」
　女性に促され、エリナたちは堂々と会社の奥へと進んでいく。今のところ、計画通りだ。
　これであとは手頃な社員を色仕掛けで罠にかけて、会社の裏側について聞き出す算段である。
「こちらの部屋です」
　受付の女性に通された部屋は、机と椅子が置かれただけの無機質で味気ない簡素な部屋だった。
「ここでお待ちください」
　受付の女性が部屋の扉を背に、礼をする。顔を上げた女性は、なぜか不敵な笑みを浮かべていた。途端、エリナたちに悪寒が走る。しかし既に危機は、訪れていたのだ。
「——永遠に、ね」
　言葉を足したと同時に、女性が部屋の外に出て扉を閉めた。直後、がちゃんと鍵の音。
「と、閉じ込められたっ！？」
　エリナが戸惑いの声をあげると、扉の向こうから声が聞こえた。先ほどの受付女性の声とは違う声だ。
「ごめんなさいね、今回の獲物を狩るのは私よ」
　そう言って、ウィッグを外す女性。彼女は、変装して社員になりすましていたアヤだった。
「その声は、アヤちゃん！？」
　どうやら彼女は、仕込んでいたボイスチェンジャーで声を変えていたらしい。本当の声を聞き、エリナたちは因縁の相手に一杯食わされたことに気付かされた。
「私も、この組織絡みの依頼を受けていたのよ」
　そう、アヤはいわゆる何でも屋で、これまで数々の裏家業を依頼されこなしてきた凄腕の女だった。過去にもCinnamon Cat'sとは何度か遭遇しており、その時々で共闘したり、あるいは敵対していた。
「アヤちゃんとターゲットが被るのは、あのおパンツ脱ぎ脱ぎ事件依頼だね」
「いいえ、揉みしだき快感マッサージ事件の時もよ」
　互いに、ろくな事件に絡んでいなかった。
「ともかく、今回は私が依頼をこなすから。皆さんはここで大人しくしていてね」
　言って、その場を去っていくアヤ。
「Cinnamon Cat'sは、こんなところで終わらないんだからっ！」
　果たしてエリナの吐いたその言葉はただの虚勢か、それとも策があってのものか。今はただ、部屋に虚しく響くのみだった。

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