パートナーは異能の猫！｜リアクション

パートナーは異能の猫！

「ひゃっ」
　佐藤瀬莉は近くに落ちた小さな雷の衝撃で横に尻もちをついた。
「な、何？　どうなってるの？」
いつの間にか迷い込んでいた謎の森の中、電気や水、風を纏った凶暴そうな猫達に殺気を向けられ、
慌てて立ち上がる。
「しゃーっ」
「！？」
　草むらから、鉄砲水。勢いが凄まじい。直撃する前にしゃがんだので避けられたが、
「こ、こんな」
　地面が深く抉られていた。殺意が高い。
　ゾクリとした。後から後から異能の猫達が湧き出してくるよう。
　瀬莉は駆け出した。
　一度隠れた方が良さそうだ。
「あ、あれって」
　山小屋のような建物が見えた。全力疾走の後、転がるように中へと滑り込む。
「はぁはぁ……」
　小屋の中にあったのはメモ書きと五つの箱があった。脱出をするために、異能の猫がパートナーとして貸してもらえるというが。
　火猫を選びつつも、疑念が頭を過る。
「にゃん！」
　白と赤のトラ猫は少し嬉しそうに、瀬莉を見つめてくる。
　外にいる猫達と、何が違うというのだろう。
（本当に、信じて大丈夫？）
　と、火猫が小屋の窓の方へ視線を向ける。次の瞬間、窓ガラスを破って何かが飛び込んできた。
「！」
　瀬莉は腕で顔を覆い、治まってから飛び込んできたものを見る。
「！」
　それはライトグリーンの光を纏う風猫だった。蛇を思わせる風が猫の周りを舞っている。
　かまいたちのような風が床を切り裂く。
　と、火猫がドアに体当たりをした。
「にゃ！」
　ついてこいと言われているようで、瀬莉は外へと飛び出した。怪力でぶち破られたドア、火猫がやったのだろう。
「出口、わかるの？」
　駆けながら、問うと任せろとでも言いたげに頷いた。
「……ファイフェアリ」
　ふと頭に浮かんだ猫の名前。と、目の前に猫の大群が現れた。
　タイプは全五種類。複数VS一匹。不利すぎる。
「足止めをお願い。ファイフェアリ、火吹き！」
　技名を指示した瞬間、タイミングに合わせてファイフェアリが周囲に炎を吐き出す。
　瀬莉は右方向へ走り出した。
「行こう、ファイフェアリ」
　撤退指示。後ろからついてくる気配に少しほっとする。ファイフェアリに出会う前に感じた心細さは半分になっているような気がする。
「出口は……」
　かなり遠くに光が見える。徐々に夕闇に染まる森の中だからかすぐに分かった。
「にゃあっ」
　ファイフェアリも出口が分かっているのか、そちらを気にしている。
「あっちへ行こう」
　瀬莉は方向転換、光に向かって駆け出した。
　しかし、
「っ！」
　前方の木の陰から鉄砲水が。慌てて避けるが、出てきたのはライトブルーの水流をまとう猫だった。
　後ろからついてくる火猫の弱点だ。
　道を塞がれてしまった。
（火猫に相手をさせると負けちゃうかも）
　分かっていて戦わせるのはさすがにかわいそうだ。火の攻撃も水にかき消されてしまうだろう。
　と、その時。
「にゃあっ！！」
　火猫が高速で水猫に体当たり。水攻撃の前にふっ飛ばした後、自慢の爪で引っ掻く。火猫は振り返って、こちらを見る。
（先に行けってこと？）
　火猫を信じる。とっさにそう思った。
　瀬莉はどうにか走って、光の近くへ。
「はぁはぁはぁ……」
　やはり、そこは出口のよう。飛び込めば元の世界に戻れる。
　瀬莉は火猫を残してきた方へ視線を向ける。
「ファイフェアリ……」
　と、その時。
「！」
　上から何かが振ってきて、思わずキャッチすると、
「あ、よかった、無事で。……ありがとね」
　追いかけてきてくれたらしい。
　ファイフェアリが嬉しそうに鳴いて、地面へ着地。
「ありがとう」
　瀬莉は光のドアへと飛び込んだ。

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