火曜日の屋上｜リアクション

火曜日の屋上

　寝子島高校の校舎は北と南の２つあり、どちらも屋上は開放されている。
　遠くに太平洋を望むことができる南校舎の屋上は人気があり、授業中も休み時間も、生徒たちの憩いの場としてよく利用されている。
　今は授業中のため誰もいないようだが、……いや、どこからともなく歌声が聞こえてきた。
　迷いのない、まっすぐで澄んだ声だ。
　きっと屋上に相応しい、爽やかで心地よいそよ風のような歌だろう。

♪おっぱいおっぱいおっぱいぱ～い
　おっぱいが～いっぱいいっぱいいっぱいぱ～い
　さあ、朝日を浴びて。おっぱいが～いっぱいぱ～い

　横嶋下心だ。
　桃色破廉恥小隊の隊長である下心は、塔屋の上で、高らかに歌い上げていた。
　いきなりまぎらわしいが、これは神魂の影響ではない。
　いつもと変わらない光景だ。
　だが、どこかおかしな火曜日の屋上を暗示するかのようだった……。

♪おっぱいおっぱいおっぱいぱ～い
　おっぱいが～いっぱいいっぱいいっぱいぱ～い
　さあ、風に揺られて。おっぱいが～いっぱいぱ～い

　陽気に歌い続けていると、塔屋の扉がゆっくりとあいた。
　下心は「先生か？」と心配したが、やってきたのはひとりの女子生徒、魂行凪だった。
　制服を着てるので誰にもわからないが、彼女は下着を着けていない。
　しかし、賢明な読者諸君は慌てないでほしい。これもまたいつもと変わらない日常なのだ。
「…………」
　彼女は何をするでもなく、屋上をふらふらと歩いた。
　風の向くまま、なんとなく屋上に来てしまったが、特にやることもなかった。
「…………はぁ……」
　フェンスに背を向けて寄りかかると、空をじっと見つめていた。
　あの雲が私を包んでくれたらどんなに素晴らしいだろうか、あんな風に、こんなところを……そんなことを思いながらむくむくと膨らむ入道雲を見つめていた。
　下心は、女子が近づく空気を察して歌うのをやめていた。既に、次の行動へと移っていたのだ……。

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