熱く、冷たく？　サマーバレンタイン♡カーニバル！｜リアクション

熱く、冷たく？　サマーバレンタイン♡カーニバル！

☆サプライズデート！

　寝子高２年の水上桜は、友人の有沢茉奈と一緒にサマーバレンタインで賑わう街に繰り出しました。
　もちろん、いつもの茉奈の逆ナンに付き合わされてのことです。
　彼氏ゲットに青春を賭ける茉奈は、今日の日のために気合い入れておしゃれしています。
　ミニスカートにヒールつきのサンダル、タンクトップの上に羽織った上着はシースルー。
　それに付き合わされる形で桜もおしゃれしています。
　スカートは茉奈ほど短くはないですが、並んで歩いてもちぐはぐにならないよう、Ｔシャツやスカートも可愛いものを選びました。

　しかしこれまでの茉奈の戦果は連戦連敗。
　この前ゆかたまつりで、気合の入りまくった花飾りを幾つも挿して逆ナンに励んだのも記憶に新しいところです。
　しかし、茉奈は積極的過ぎました。
　おとなしくしていれば声をかけてもらえるくらいには可愛いのに、鋭い目つきで迫られては逆にドンびかれてしまいます。
「今日は大丈夫よ！　サプライズデートなんだから、相手もその気で来てるんだし！」
　気合を入れる茉奈ですが、桜はいまいち積極的になれません。
　それは、中学２年の夏の失恋。
（初デートでドキドキしてたのに、寄生虫館はないわ……）
　両想いになったクラスメイトの男子との苦い思い出。
　一応茉奈に付き合う形でこうしたイベントに参加しているけれど、未だにそれが桜の心に影を落としているのでした。

「水上桜さん、どうぞ」
「えっ、私？」
　そうこうするうちに、桜は赤い腕輪を渡されていました。
　茉奈と別れ、少し心細い思いで指定された場所へ行くと。
「……え－と、サプライズデートの人？」
　赤い腕輪をつけた青年が声をかけてきました。
（スポーツマンなのかな？）
　シャツの上からでも筋肉の感じはわかります。
（顔は……普通、かな。まあ、イケメンはこういうイベントには参加しないだろうけど）
　話をする分にはイケメンよりこのくらいのほうが気楽かもしれない、と思います。
「私は水上桜。寝子高２年生、17歳。趣味はアクセ作りで部活は水泳部に所属中」
　自己紹介をすると、相手は目を見開きました。
「マジ？　俺も１７だよ。部活も水泳部だ」
「え？　寝子高じゃないよね？」
　今度は桜が目を見開き、相手は頭を掻きながら答えました。
「俺は木天蓼工業高校。不良じゃないからな？　マジメなマタ工生もいるんだぜ。あ、俺は滝沢匠ってんだ」
「そうなんだ。……得意な泳ぎでタイムどれくらい？」
　二人は冷たいジュースを飲みながら、部活や趣味の話をしました。
　それなりに話が合い、楽しく過ごせましたが。
「楽しかったぜ。……また、会えるといいな」
「……縁があったらね」
　このままカップル成立というのも何か違う、と思えてしまい、桜はそのまま匠と別れたのでした。
（茉奈、どうしたかな？）

　赤い腕輪を返しに行く途中、笑顔でイケメン男性と歩く茉奈の姿が見えました。
（え、なかなかいい感じじゃない？）
　ついに悲願成就か？　と桜はちらちら様子を伺います。
　うまくいったらいいな、と思いつつも。
（茉奈に彼氏ができたら、もう二人であちこち出かけることもないのかな？）
　ちょっと寂しいような、複雑な気持ちです。

　しばらくして、固い表情で帰ってきた茉奈に桜は尋ねました。
「どうだった？」
「……すごく話が弾んで、楽しかったんだけど」
「良かったじゃない」
「NYAIN交換しようとしたら、携帯持ってない、って……」
「今時？」
「ごめんね、楽しかった、って言ってすうっと消えちゃった……」
「え？？」
　茉奈の表情を見た桜は、背筋が冷えるのを感じました。
「ねえ、あの人この世の人じゃなかったのかしら、それとも天才マジシャン？」
「ええっ……？」
　絶句した桜は、自分の相手の話をしそびれてしまったのでした。

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