反転、膨張。変わって染まって？｜リアクション

反転、膨張。変わって染まって？

牛瀬先生、修羅と化す？　……激戦のシーサイドタウン！！

（想像以上の暴れっぷりね）
　シーサイドの繁華街……の路地裏へと足を運んだ三条神無は、目の前の惨状に表情を引き締める。そして、自分の奥底から沸き立つ闘争心に息をのんだ。今コレに飲まれてしまってはいけない、とどうにか己を正しながら。
「特異点とか良く分かんないけど廃人になっちゃうとかダメだよっ！　凶暴化した巧せんせーを止めなくっちゃ！」
　神無と共にここへ来たのはミニスカチア服が眩しい姫神絵梨菜。彼女は身を守る為にバトンを持ち、襲い掛かってくる者をとりあえず押し返しながら周囲を見渡した。
（あたしの中で荒ぶる魂が蘇りそう……。あの頃のあたしは黒歴史だし、もう戻りたくないけど……暴れたくてたまらねぇ！）
　二人が横を見ると、化神小次郎が僅かに焦ったような表情で戦場を見ている。沸き起こる闘争心に抗っているのだろうか。
　しかし、耐え切れなかった小次郎は襲い掛かってきたサラリーマンやOLへ鋭い蹴りを放ち、闘争心のままに戦いへ身を投じる。絵梨菜は、彼女から飛んできた蹴りを躱し、「あたりを回ってくるっ！」と神無に言って喧騒の中に飛び込んだ。
（大丈夫だろうか……）
　心配しながら絵梨菜の背中を見送った神無であったが、不意に何かが飛んできた。よく見れば瓦礫が。それを投げたのは長身な寝子高の女子生徒に見えた。
「うふふっ♪　これが最高にハイって奴なのねっ！」
　元々アスリートである羽生碧南は完全に空気に飲まれていた。飛んできた看板を華麗にかわし、隙を狙ってきた男子生徒を軽くあしらうとまるで踊るかのようにどこからか引っこ抜いた道路標識をぶん回していた。
　普段は乙女ゲーでやや妄想暴走気味の彼女だが、再度言おう。彼女は実力のあるアスリートである。故に普段のふんわりとした可愛らしい雰囲気が一変し、引き締まった女戦士の顔となる。今は五感が冴えている上アドレナリンもドバドバでており、『ゾーン』に貼った状態ともいえよう。その上もれいび故ちょっと頑丈になっているようにも思える。
　そんな彼女が勢いよく道路標識をぶん回しており、一般人にはもちろん対処できない。しかし、その一撃を軽い足捌きで躱し道路標識を奪って捨てる男がいた。鋭い目の彼は、目の前の少女が生徒であることを今、認識しているだろうか？
「ふぅん、結構強いのね。……牛瀬先生」
「物騒なモンもってんな、お嬢ちゃん」
　そのしっぽ髪の男は、楽し気に笑うと襲い掛かる碧南を投げ飛ばした。彼女は受け身を取り、再び殴りかかる。
「なんや、お嬢ちゃんもそこのも強いなぁ」
　普段穏やかな牛瀬巧の口から、獰猛な声が響く。周囲には、彼らや小次郎の他にも暴れまわっている人々の姿が。よくみるとその中には
「あぁ、もぉ！　全部煩わしいのよ！！」
　とボロボロになったバイクをぶん投げる七夜あおいや、悲鳴を上げておろおろと逃げ回る五十嵐尚輝、そして何故か牛瀬と背中合わせになって戦っている吉田熊吉の姿があった。
「……たしか、あの先生のどこかに『吸魂ミルちゃん』がいる。牛瀬先生……真正面から立ち向かえるかといえば、微妙だわ。けれど、闇討ちには対処できるかしら？」
　今、巧は碧南の攻撃を躱す事に集中しているように見える。ろっこんを使えばいけるのでは？　と神無は（襲い掛かってきた相手をいなしながら）観察しつつ考える。
　だが、そのうちにガオーッ！　と獣の方向が聞こえた。いつのまにか、その場所に一頭のトラ……を思わせる生き物が降り立ったからだ。

（牛瀬先生を止めなきゃ！　でも何でだったっけ？）
　万条幸次は、ここへ向かう途中までちゃんと目的を覚えていた。しかし、ミルちゃんの影響を受けてしまい、困惑してしまったようだ。
　闘争心が溢れた幸次は目を閉ざし、己のろっこん『猫チェンジ』を使用しようとした。だが、何故かその身体はトラ……のように大きなネコへと変化したのだ。
「ウニャ？　ウニャーニャー！！　（まあいいか？　牛瀬先生勝負！）」
　フシャー！　と唸りながら飛びかかるトラ（サイズのネコ）。だが、それに動いたのは、熊吉である。
「はああっ！」
　強力な張り手が鼻面を押し返し、幸次はもんどりうって飛ばされてしまう。だが、諦めるもんか、と唸りながら熊吉へと爪を閃かせる。
「ウゥ……、フシャー！！（熊先生……どいてー！）」

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