特撮ヒーローがやってきた！｜リアクション

特撮ヒーローがやってきた！

●続・続・不穏な噂
エキストラの撮影は終了したが、これまでのところ福井陽菜周辺に何らかの事件が起きる気配はなかった。
しかし、撮影は明日も続く。油断は出来ない。
福井陽菜の撮影シーンに貼り付いていた高太郎だったが、多少の勘違いを除けば今のところゴムゴルの暗躍は認められなかった。
「ゴムゴルめ。まだ尻尾を掴ませないな。これは持久戦になりそうだな……」
再び見学者の中に紛れる高太郎だった。

「いいじゃんかよー。ドケチー！」
米太郎の前で子供達が駄々をこねる。
それは出演者達の控え室に通じる通路。
「あー、諸君ら執拗にお兄さんの脛を蹴るのはやめなさい、お兄さん実はヒーローだけど人の痛みも分かるヒーローだからマジで」
それに対して猛反発する子供達。
「嘘だーって言われてもなぁ..あぁ、むしろあっちの方が偽物だよ。中に人入ってるし。ホラ本当のヒーロー役の人今あそこでお茶飲んで休憩して……！」
どこから飛来したものか。米太郎の後頭部に超高速の飛び膝蹴りが炸裂する！
「新井君！何、子供の夢を壊すような事言ってるの！　大体ね……」
くどくどと説教を垂れているものの、その場に崩れ落ちた米太郎の耳には全く届いていなかった。

その様子を窺っていた者がいた。
それはサイレンジャーＴシャツを着た暑苦しい雰囲気の巨漢。
降って湧いた混乱に乗じ、すかさず通路に侵入する。
「待っててね陽菜ちゃん。もうすぐボクが会いに行くからね」
その体躯に似合わぬ小声でぶつぶつと独り言を呟きながら控え室へのドアを開けようと近付く……。

少し時間は巻き戻る。
ヴェスレーナは自らのろっこん『リハーム・ミミクリエス』を使い陽菜に変装して彼女を守ろうとしていた。
小道具を被っていたブルーシートに触れると、それは見る間に形を変え、人肌のような色と質感を持った着ぐるみとなった。
周囲に人気がない事を確認すると思い切りよくウゾーのスーツを脱ぎ捨て下着姿となる。
窮屈なスーツから開放された胸が息を吹き返したように弾む。
素早く着ぐるみに潜り込み背中のファスナーを閉じると、その姿は福井陽菜にそっくりになっていた。
急いで服を着ようとしていたその時。

「陽菜ちゃーーーーん」
野太い声がしてドアが開く。巨大な肉の塊が窮屈そうにドアから侵入しようとしている。
「きゃーーーーーーー！」
いくら着ぐるみとはいえ、他人の姿とはいえ、現在の見た目はほぼ裸といってよい。
突然の闖入者にヴェスレーナが悲鳴を上げ、我に返ると暑苦しい男を部屋の外に蹴り出す。
スタッフに見つかった暑苦しい男は一目散に元来た方へと逃げ出す。
だがそこにはヴェスレーナの悲鳴を聞きつけた颯翔が立ち塞がる。
「出たなストーカー！　神聖な撮影現場を穢す行為は赦さん！　未来のスーツアクター天城颯翔が成敗してくれる！」
だが、暑苦しい男はその重量に不似合いな俊敏さで颯翔の横をすり抜けようと突進する。
その先には駄々をこねていた小学生達。突進してくる巨漢1人が転び、もう1人はしゃがみ込んで頭を抱え込む。
男は最早周囲の何も見えていなかった。
だが、子供にぶつかると見えたその時。巨体がびたん！　と床に叩き付けられる。
騒ぎで意識が呼び戻されたのだろうか？　巨体を転がしたのは米太郎の足だった。
猪子が急いで子供達を保護する。
そして、セットの屋根の上から登場する1人の男。首からたなびく白いマフラー。フィンガーレスグローブ。
「日曜朝の子供達の夢を希望を奪う悪党め！　この俺がゆるさん！」
高太郎が転んだ男の上にダイブ。巨漢は抗うが、更にその上に颯翔が覆い被さり米太郎が無線で応援要請。
こうして、撮影を脅かす不穏な影は無事排除されたのだった。

●撮影済んで日が暮れて
コスチュームの材質を間近で見ようと邪法姫ニュクスに近寄る衣夢。
ニュクスも衣夢の接近に気付く。
衣夢は思い切って声を掛ける。
「あの、もっと良く見せて下さい！」
取り出したのは自作のニュクスのコスプレ用衣装。きょとんと佇むニュクス。
「私ニュクスのコスプレやってます。少しでも本物に近づけたくて！　それからサインもお願いします！」
ニュクスはくすりと笑うと笑顔で応じる。
「嬉しいなあ。ほら、子供番組で悪役だから、ファン少ないのよねー。うっわ。これ自分で作ったの？　すっごいなあ……」
衣夢の作った衣装に感心しながらキュッキュとマジックでサインする。
「はい。衣夢さんへ。ニュクスっと。これからも応援よろしくね！」
「ありがとう。ニュクスさんも、頑張ってね」
二人は固い握手を交わしたのだった。

「鰺浦監督、ありがとうございました！」
監督に丁寧に礼を述べるのは蓮。今度は高校に特別授業をしに来て欲しいと頼む。
「シダのアクション、いっぱいいっぱい使ってねー！」
元気よく監督に飛びつくシダ。彼女はまだまだ体を動かし足りない様子。

轟が寝子島映画村の門をくぐるとそこにはロングヘアーの少女の姿。
手を振って笑顔で話しかける轟。
夕陽が、二人の影を長く描いていた。

●そして数週間後
寝子島高校の学生達が出演した回が放送された。
そこには多くの学生達の活躍や、夢への第一歩が記されていた。
映像に残された活躍こそ、ごく僅かだったが、彼らの活躍があればこそ、緊急戦隊サイレンジャーは無事放映されたのだった。

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あとがき

担当マスター：天晴壱旗
ファンレターはマスターページから！

大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
結構な期間、プリントアウトしたＰＣデータとアクションを眺めていたお陰で随分と愛着が湧いてきました。
人間ですので、得意なタイプ、苦手なタイプはあるのですが、今はどのＰＣもかわゆうてかわゆうて仕方が無いです。
力不足でご期待に添えなかった部分もあるかも知れませんが、できるだけ全てのＰＣの魅力が引き出せるように心掛けたつもりではあります。
また、『有機的なＰＣ同士の繋がり』を目指して、アクションの内容に関わらず、なるべく色々なＰＣを関わらせてみました。これが新たな交流が広がる切欠になってくれればいいなあと思っております。
大事なＰＣに関わらせて頂き誠にありがとうございました。また機会がありましたら、よろしくお願いします。

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