夏の初めに｜リアクション

夏の初めに

　茄子の煮浸し、胡瓜とプチトマトの浅漬け、豆鰺の南蛮漬けに炊き立てごはんとワカメのお味噌汁。みんなで晩ご飯を食べてみんなで後片付けをした後は、夜風の通る縁側にみんなで並んでマクワウリと麦茶で食後のおやつ。
　珠を膝に乗せながら、千早は団扇でお互いを扇いでは笑いあうユニとこんに相談を持ち掛ける。
「うちの庭の苺が収穫時期で」
「いちご！」
　言った途端にふたりは声を揃えて千早の傍に正座した。きらきら光る瞳に見つめられ、思わず頬が緩む。
「一緒に食べるか、それとも何か作ろうか？」
　食べる、と両手を挙げてこんが笑う。
　作ってもみたいけど、とユニも笑う。
「おれ、きっとがまんできなくて食べちゃう」
　遊びに来てもらう日にちをふたりと相談しつつ、千早は新しく始めるバイトのことを考える。緊張もしている、不安もある。けれど、
(まず最初の目標は、自分の力でスイカを買う事にしようか)
　自力で稼いだお金を使って遊ぶことは、きっととても楽しいに違いない。

　麦わら帽子に二リットルのスポーツ飲料が詰められた大きな水筒、それから仕事内容が書き込まれたメモ帳。
　指定された日の朝に『ねこの庭』へと出勤した千早に手渡されたのはその三つだった。
(こまめに日陰で休憩すること、分からないことがあれば聞くこと、)
　お昼のまかないはサラダチキンとハーブのサンドイッチです、と言い置いて温室カフェへ戻った和子に受けたバイトの注意点を内心に繰り返しつつ、千早は麦わら帽子をしっかり被る。まずは草引き、と朝いちばんからもう強い日差しを見上げたとき、入口のあたりで女の子たちの楽し気な声がした。
　ハーブの匂いや黄色い煉瓦の道に笑みを交わしながら近づいてくる女子ふたり──野々ののこと七夜あおいの姿に、反射的に視線を逸らして俯く。

「……い、」
　それでもなんとか押し出した声は僅かに引っ繰り返ってしまっていたけれど、
「らっしゃいませ」
　ころげだした最初の一言につられて顔をあげる。『ねこの庭』の一員として、千早は丁寧に頭を下げる──

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あとがき

担当マスター：阿瀬春
ファンレターはマスターページから！

　大変お待たせいたしました！
　神代千早さん、プライベートシナリオをお届けにあがりました！
　神代さんの初めてのバイト探しをお任せくださいましてありがとうございます。バイト探しもなのですが、古家一家やユニとの関係もとても楽しく描かせていただきました。

　このたびはご依頼いただきましてありがとうございました。またのご縁、楽しみにお待ちしております。
　それから、少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。ありがとうございました！

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