【期末テスト】赤点？満点？？熱風、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？熱風、四日間の死線＜物語編＞

●時間の過ごし方

　梓智依子は高校に入ってから初めての期末試験に臨んだ。そして試験終了から１週間後、返却日を迎えた。教室は朝から騒々しく、皆が結果を気にしていることが窺える。

「梓さん」

　五十音順ですぐに呼ばれ、結果を受け取った。結論から言えば、意外に悪くない成績だった。他の生徒も同様に受け取るとガッツポーズをしたり、絶叫したりと様々な反応を見せる。智依子は結果が返却されて、本当に試験が終わったのだと実感する。

（楓も待っているだろうし、今日はすぐに帰ろう）

　娘とゆっくり過ごしたい。そう思っていたのだが、放課後に彼女を慕う年下の同級生たちにカラオケに誘われた。好意を無下にするわけにもいかず、誘いを了承するとカラオケボックスで打ち上げをした。
　智依子は数学が得意だった。だから苦手な子たちに分かりやすく教えていた。そしてこの前の中間テストで、教わった子たちは好成績を修めた。この経験は同級生たちの自信につながっただろうし、教えた智依子としても嬉しい。その分かりやすさは教室中に広まっていき、今回の期末試験では教える相手の数が増えた。

（大変だったけど、おかげでみんな数学はいい成績を修められたようで何より）

　期末試験の期間中はバイトを休み、娘の相手もあまりできなかった。この感覚は中間試験でも抱いていた。娘の相手をしたいけれど、そうすると試験勉強ができない。

（楓には寂しい思いをさせてしまったわ……）

　娘のことを思うと表情が少し曇る。試験が終わって解放的になる場に合わない表情だった。その様子を見た同級生の１人が智依子に声を掛ける。

「どうかした？」
「娘が……」

　素直に事情を説明する。
　すると皆、早く帰って楓ちゃんを可愛がってあげてと言う。申し訳ないと思う気持ちもあったが、娘に会いたい気持ちのほうが大きかった。

「それじゃ、お先に帰るね」
「またねー！」

　明るく送り出された智依子は笑顔でその場を後にした。帰宅すると楓が飛び込んできた。

「ママー」

　弾丸のように勢いのある体を智依子は慌てて抱き止めた。

「ただいま」
「おふろはいろー」
「うん」

　智依子は祖父母にはテストの結果を見せてから、娘と一緒に風呂に入った。