【期末テスト】赤点？満点？？熱風、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？熱風、四日間の死線＜物語編＞

●興味関心の深さ

　仙藤蒼にとって明日は寝子島高校に入って初めての期末試験。
　ゲーマーである蒼は普段はゲーム三昧だ。しかし長時間ゲームに集中するための体力づくりのために水泳部に入って、ゆるく活動中でもある。そんな彼女だが、いつもならギリギリまでゲームした後、試験直前の３日間で集中して勉強して試験に臨み、それなりにいい成績をとっていた。
　しかし高校に入ってからは、さすがに勉強の方もそれなりに難しくなっているのを痛感している。とにかく目の前の試験を攻略して、補習や追試といった事態だけは何としても避けたい。
　そこで姉の仙藤紫に力を貸してほしいと願い出た。紫は大学の前期試験を終えたばかりで少し余裕があったので、妹に頼まれるまま最後の追い込みに付き合うことにした。

　初日は英語と美術と社会。
　蒼は時折ゲームの実況をMewtubeに投稿しているので、英語はそれなりにできる。それでも文法などは少し苦手らしい。

（でも文法が致命的に出来ないってわけではないのね）

　蒼が問題を解く様子を見ていて、紫はそう感じた。これならば記憶する単語量を増やせばいいかな、というくらいだ。
　英語に区切りをつけると、次は社会の勉強に移る。社会科の方は日本史の記述問題が少し骨かもしれない。

「なんか文系科目ってドキドキワクワク感が乏しいと思うんだよね」

　蒼はそう主張する。特定の分野に興味を持てるかは個人差がある。
　彼女にとって理数系科目は惹かれる部分があって、だからこそ得意なのかもしれない。紫はその話を聞いたうえで、ひとつ例を出す。

「蒼、飛鳥時代の氏姓制度って覚えてる？」
「あー……なんだっけ……」

　言葉は覚えているけれど、その内容をうまく説明できない。
　蒼は関連している単語を羅列する。間違ってはいないが、説明としては不十分に聞こえる。それを聞き終えたあと、紫は話を続ける。

「今度はゲームを１つ説明してみて。相手はそれを全く知らない前提で」
「それなら！」

　こちらは流暢に何が面白いか、重要なところは何かを語った。蒼の話が終わると紫は白紙に大きな円を２つ書いた。１つには『氏姓制度』、もう１つには『ゲーム』とタイトルをつける。

「人に何かを説明するには、その内容を知っていないと無理よね」
「そりゃあね」
「そうなるとそれに関する用語が必要になるの」

　そう話しながら、紫は蒼との会話で出た単語をそれぞれの円のなかに書き込んでいく。『氏姓制度』の円は『ゲーム』の円に比べて、言葉の密度が低いのが分かる。

「全体像を掴むには、その仕組みを理解する必要があるわ。でも用語が色々出てくるからそれをしっかり確認しないと、内容が分からない」

　紫は『氏姓制度』の円に、それに関する用語を書き込んでいく。しかし円に収まらなくなり、だんだんはみだしてくる。

「お姉ちゃん、書ききれてないよ」
「多分全部書こうとしたら、この紙だけじゃ足りないわ」
「えー……無理ゲーじゃん」
「だから、記述するときに重要なポイントだけうまく抜き出せればいいの」

　紫は赤ペンに持ち替えると、説明に必要な単語だけ丸を打つ。

「こんな感じで。要点さえ当たっていれば説明はできるわ」
「なるほど」

　それから２人で教科書と問題集を往復しながら、どこが重要で、どれが必要ないかを見極める練習をする。

「要は基本的な知識をいかに掴むかがカギなの」

　紫の教え方が上手なのか、蒼は難しいことでも頭にスーッと入ってくるような感じがして、しっかりと頭に残るので助かっている。気づけば結構な時間が経っていたので、区切りのいいところで切り上げた。
　蒼は紫に礼を言うと、明日に備えて早めに寝ることにした。