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スタジオでのモデルの仕事の休憩中、
姫神 絵梨菜
は気になった他の部屋のセットを覗き見ていた。
その中の一つ、大掛かりな廃工場のセットに置かれた錆びたコンテナに、山のように大柄な男性が腰掛けていた。マフィアのボスみたいな鋭い目つきの横顔には見覚えがある。どこでだったろうかと考えているうちに、廃工場のロケーションと男性の横顔が、記憶のパズルにピタリとハマる。
(そうだ、小さい頃大好きだったVシネマ!)
それは美人でセクシーなお姉さんが、色仕掛けや格闘技で悪人をバッタバッタとなぎ倒していくセクシーアクション映画だった。そのラスボスの人にそっくりなのだ。
途端に懐かしさがこみあげてくる。あの女優さんに憧れて何度も見返したし、あんなふうに強くてセクシーでカッコいい女優さんになりたいと思ったから、絵梨奈は拳法を習い始めたのだから。
(……あれ? そのセットが何でここに?)
足音がずしゃりと響く。コンテナから降りたラスボスの人が、絵梨奈の方を見つめていた。
そして近くに転がっていたドラム缶を担いだかと思うと、絵梨奈に向かって投げつけてくるではないか!
「なんでっ!?」
さすがに面食らい、とっさに柱の陰に飛び込む。壁にぶつかる派手な音が響く。振り返ると部屋の扉は消えていて、廃工場の景色だけが広がっていた。どうやら異変に巻き込まれたらしい。
(ろっこん――)
――は使えない。何故なら今着ているのは、撮影に使うセクシーなハイレグ水着だから。スカートはついてないのだ。
ドラム缶をかわされたラスボスは、懐から取り出した特殊警棒を展開する。ガシャン、と威嚇するような音を立てるところまで映画とそっくりだ。
(この流れって映画と同じ? ってことは――)
絵梨奈が柱の陰を飛び出した瞬間、ラスボスが柱に向かって突進した。筋肉の砲弾が柱をウェハースみたく粉砕する。
その光景に目を奪われながら、絵梨奈は一つの確信を得た。流れも動きも映画そっくりだ。
まっすぐ距離を詰め、警棒の間合いに入ったところでジグザク軌道の歩法へ切り替え。警棒が起こす風にツインテールを揺らし、側面へと回り込む。
ラスボスも流石の反応で、すかさず裏拳を繰り出した。
それを肘で受け、右の中段蹴りを足の付根に一撃。そのまま旋転、勢いを乗せた左の後ろ回し蹴りを放つ。すかさず腰を落とし、足を刈り取る下段の蹴りへ繋ぐ。美しくも鋭い連携に、ラスボスはたまらず後ずさる。
拳法だけで応戦できている実感に、絵梨奈は自分があの女優さんになったみたいだと思った。それは同時に、憧れの姿へどれだけ近づけたかを試されているようでもある。
高揚感に導かれて放った右のハイキックは、しかしラスボスに掴まれた。ニヤリと笑う男の視線が絵梨奈の脚のラインをたどり、そこからまろやかな曲線もあらわなお尻へ伝う。
足を掴まれたまま跳躍し、左のキックをラスボスの腹に突きこむ。防いだ警棒を足場代わり後ろへ跳び、ラスボスから距離を取る。
着地の瞬間、前かがみになったところへ感じるのは胸元へのあけすけな視線。鋭いくせにニヤニヤとした目つきは清々しいくらいに下卑ている。
「お色気の方も試すわけぇ!?」
さっきの時点でそんな気はしてたけど!
警棒の薙ぎ払いを蹴り受け、息をつく間もなく放たれる突きを膝と肘で挟み受ける。腕で圧迫された胸がむにゅりと歪み、それに掴みかかるようにラスボスの拳が伸びた。ガードした右腕がしびれるほどのダメージによろめき、ふらつく身体を前かがみに、腕を抑えてダメージを必死にこらえる。
それはセクシーポーズを自然に行うための動きだった。右腕を抑える仕草で胸を持ち上げてボリュームや柔らかな曲線を強調し、前傾姿勢で谷間を見せつける。そういうポーズである。
ラスボスの視線が胸に向いた。ニヤリと鼻の下を伸ばし、谷間をよーく見ようと頭の位置がわずかに下る。
その瞬間、絵梨奈は身を翻した。お尻に重心を乗せたヒップアタックが炸裂し、体勢を崩したラスボスが片膝をついた。
「トドメだよっ!」
絵梨奈の脚が宙に舞う。ラスボスの頭を太ももで挟み込み、そのままバック宙でフランケンシュタイナー――いわゆるところの幸せ投げが炸裂。
ラスボスの巨体が回転し、頭から廃工場の床へ沈んだ。
横たわる巨体の前でふふんとキメた絵梨奈は、誰かが自分の名前を呼ぶのを聞いた。
いつの間にか廃工場は跡形もなくなり、部屋の中は空っぽのまっさらな状態になっている。
「撮影に戻らなきゃっ」
慌てて戻る足取りはさっきよりも軽い。久々に初心を思い出したからだろうか。
ついでに撮影の後、絵梨奈はスタッフさんからVHSをDVDにダビングしてもらえるお店があることを教えてもらった。
今度あの映画を持っていって、DVDにしてもらってまた見ようと思う絵梨奈だった。
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担当ゲームマスター
風雅宿
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
SF・ファンタジー
バトル
定員
10人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年01月30日
参加申し込みの期限
2022年02月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年02月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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