理事長宅（？）でテスト勉強！｜リアクション

理事長宅（？）でテスト勉強！

〇真面目に勉強会

　居間では、智依子とクラスメイトたちががウォルター先生に英語を教えてもらっていました。
（エアコンがついてないけど、森の中だからか涼しいわね）
　先生の説明に相槌を打ちながら、ふとそんなことを思いました。
　智依子は中間テストでは数学と理科は高得点、国語や社会科も良かったのですが、英語が少し伸び悩み気味だったのです。
「ありがとうございます、よくわかりました」
　ウォルター先生に教えてもらったおかげで、期末は中間よりはいい点を取れそうな感じです。
「……梓さん、ここわかる？」
　数学が苦手な同級生に声をかけられ、智依子は問題を眺めます。
「ああ、これなら……」
　智依子が数学や理科が得意なのは皆知っていて、先生の手が空かないときは質問してきました。
　最初はクラスメイトたちだけでしたが、親切な教え方を見て他のクラスの子たちも質問してきました。
（人にものを教えるのは、自分がどれだけ理解しているかが問われるので手抜きができないわね）
　その様子を見て、ウォルター先生は満足そうに部屋を出ていきました。

（理事長ってお金持ちなんだよね？　何故廃墟に住んでいるのか理解に苦しむ……）
　そんなことを思いながら椅子に腰かけていた想花ですが。
「えっ？」　
　背後に何かの気配を感じて、振り返りました。
　しかしそこには何もいません。
（……気のせい？　いや、今確かに……まさか、まさかと思うけど幽霊ってわけじゃないよね？）
　廃墟のような館を見たとき、なんだか嫌な予感がしていたのです。
　夏なのに、ぞわっ、と背筋に寒気が走ります。
「きっと誰かがいたずらでこんなことをしてるんだよね？　うん、そうに決まってる！」
　

　ウォルター先生が客間に来ていました。
　英語を中心に勉強していた彰尋が手を上げました。
「すみません、書くのも聞くのも苦手で……お手柔らかにお願いします」
「それじゃ、今回のテストの範囲の基礎からやってみようかぁ」　
（ウォルター先生がいてくれるならとても心強いな）
　あおいさんと一緒に勉強したい、とは思うものの。
　教えてあげようかと声をかけるほどの余裕はなく。
（かといって教えてほしいというのも気が引けるし）
　結局自然な距離を保ってあおいの様子を見ている彰尋です。
（英語が終わったら、声をかけられるといいんだけど）　
「……それじゃ、こんな感じで大丈夫かなぁ？」
「ありがとうございます」
　先生が彰尋の隣を離れた時。

「勉強するぞ勉強するぞ勉強するぞ勉強するぞ勉強するぞ勉強するぞ！！！！」
　突然、女子の声が響いてきました。
「居間から？」
　ウォルター先生がウォーターガンを手に居間に向かいます。

「どうしたんだろうね？」
　そうつぶやいたあおいに、彰尋は答えました。
「……わからないけど、ただ事じゃない感じだったね」
「彰尋くん、英語苦手なの？」
「うん……」
「私が教えてあげられるといいんだけど、私もそんなに得意なわけじゃないんだよね。いつも料理を教わってるからお返しできたらよかったんだけど」　
「お返しなんてそんな……気持ちだけで嬉しいよ」
「でも彰尋くんなら、英会話はできそうだと思う。映画に出るとき英語の台詞があったら頑張るでしょ？」
「そうだね。頑張ってみようかな」
　