理事長宅（？）でテスト勉強！｜リアクション

理事長宅（？）でテスト勉強！

〇誘う人たち

「君は三年生かな？　よかったら勉強会に来てほしいんだが」
　鴻上彰尋は、野々ととお理事長から差し出されたチラシを受け取っていました。
「はい……夏休みには予定があるので補習に絶対になりたくないから、ぜひ勉強会に参加したいです」
　どの科目も赤点を取るほど成績が悪いわけではないのですが、英語だけは少し不安がありました。
「おお、そうか！　できたら、ののこも誘ってくれないかな？　もちろん他の友達でもいいんだが」
　事情はよくわかりませんが、理事長のお願いは切実に聞こえました。
「野々さんがなんと言うかはわかりませんが、誘ってみようと思います」
「ありがとう！　頼むよ」
　理事長は彰尋の手を取って頭を下げるのでした。
（無理にとは言えないけど、野々さんが自分の意志で来るなら問題はないと思うし。理事長が喜んでくれたらいいな）
　ののこが七夜あおいの友達だと知っている彰尋は考えます。
（野々さんがあおいさんと一緒にいる時に、二人を勉強会に誘ってみよう）

　３年４組の教室では、八神修が七夜あおいに参加を打診していました。
「今回は理事長主催だそうだが、都合はどうかな？」
「うん、いいよ」
　あおいが快諾してくれたことに安心しつつ、さらに修は提案しました。
「理事長のためにも野々も誘おう」
　一瞬意外そうに目を見開いたあおいですが。
「そうだね。理事長先生、ののこちゃんに会いたがっていたし」
　そう言って笑顔になるのでした。

「折角の勉強会だし野々さんを誘って参加しよう」
（試験結果の振れ幅が大きい野々さんは常に試験ではピンチだし、特に３年生の今は勉強しておくに越したことはない）
　と佐藤英二は思います。
　休み時間にののこのほうへ向かいましたが。
（……と思うけど理事長宅の勉強会に野々さん来てくれるかな？）
　ののこと理事長の一方通行な会話を思い出します。
（フォローしてあげたい気もするけど、野々さんが“忘れてる”以上僕からはなんとも……）
　そう思いつつののこのそばにやってきた英二ですが。
「ののちゃん」
「あっ、あおいちゃん！」
　廊下から声をかけられ、ののこは教室を出ていきます。
（どうしよう、待ってようかな？）
　廊下を覗けば、あおいと共に修の姿。
　そして向こうからやってきた彰尋も、ののこに視線を向けているようです。　
「野々さん、今度勉強会があるんだけど、参加してみないか？　あおいさんも一緒にどうかな？」
「ほえ？」
　チラシを渡しながらののこにそう声をかけた彰尋は、
（あおいさんも乗ってくれたらいいな）
　ののこがチラシに目を落とす間に、そんな思いであおいに目配せをしました。
　あおいはちょっと驚いた様子でしたが、わかったというようにうなずきます。
　その様子を見て、英二もののこに声を掛けます。　
「あっ、その勉強会、僕も一緒に行きたいと思っていたんだ。どうかな、野々さん？」
「英二君も？」
「実は私も誘いに来たところなの」
　あおいが笑顔で畳みかけます。
「あおいちゃんまで？　うん、わかった♪　みんなで行こう！」　
　最初は戸惑っていたののこも、すっかりその気になったようです。
「ああ、わからないところがあったら教えるからさ」　
　修も笑顔でそう言い、あおいと頷きあうのでした。

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